6月2日に「経済財政運営と改革の基本方針 2016 ~600 兆円経済への道筋~」が閣議決定されました。これは、「第1章 現下の日本経済の課題と考え方」「第2章 成長と分配の好循環の実現」「第3章 経済・財政一体改革の推進」「第4章 当面の経済財政運営と平成 29 年度予算編成に向けた考え方」の4つの章で構成されていますが、その中から、特に人材サービスに影響を与えると考えられる「第2章 成長と分配の好循環の実現」から内容を抜粋してお知らせします。

…省略…

第2章 成長と分配の好循環の実現

…省略…

l  少子高齢化などの構造問題に正面から取り組み、様々な「壁」を一つ一つ取り除き、 誰もが活躍できる一億総活躍社会を構築する

…省略…

前段として、少子高齢化などの構造問題への対応策として一億総活躍社会を構築することが述べられたうえで、以下のように認識が示されています。

1.結婚・出産・子育ての希望、働く希望、学ぶ希望の実現:経済成長の隘路(あいろ)の根本にある構造的な問題への対応

個人消費や設備投資に力強さを欠くといった経済成長の隘路(あいろ)の根本には、人口減少、少子高齢化という構造的な問題がある。すなわち、人口減少や少子高齢化の進行が、労働供給の減少のみならず、将来の経済規模の縮小や生活水準の低下を招き、経済の持続可能性を危うくするという認識が、将来に対する不安となっている。これらの構造的な問題に、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保 障」の「新・三本の矢」により、真正面から取り組もうとしている。少子高齢化への対応は待ったなしの最重要課題であり、将来に先送りすることなく、アベノミクスによる成長の果実が得られつつある今こそ、希望どおりに働き、結婚、出産、子育てができる環境を早急に整えるべきである。また、第4次産業革命に対応するためにも、労働市場の柔軟性と労働者の安心を両立させる新しい働き方を確立していくことが必要である。このため、以下の事項について、「ニッポン一億総活躍プラン」を踏まえ、取組を進める。

この中で、労働供給の減少、経済規模の縮小、生活水準の低下が問題視され、少子高齢化への対応を「待ったなしの最重要課題」としたうえで、「希望どおりに働き、結婚、出産、子育てができる環境整備」「第4次産業革命への対応」のためにも、労働市場の柔軟性と労働者の安心を両立させる新しい働き方を確立していくことが必要と述べられています。具体的には以下に取り組むとのことです。

…省略…

(3)就業を希望する女性・高齢者の就業促進、非正規雇用労働者の待遇改善等働き方改革を、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジと位置付け、同一労働同一賃金の実現など非正規雇用労働者の待遇改善、総労働時間抑制等の長時間労働是正に取り組み、多様な働き方の選択肢を広げる

また、非正規雇用労働者の正社員転換年次有給休暇の取得促進等を推進する。高齢者の就業率を高めることが重要であり、65 歳以降の継続雇用延長・65 歳までの定年引上げを行う企業等に対する支援、高齢者雇用を支える改正雇用保険法の施行、企業における再就職受入支援や高齢者の就労マッチング支援の強化により、高齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保を図る。

また、地域の特性に応じた働き方改革を進め、地域働き方改革会議の取組支援、働き方改革に関する先進的な取組の普及、都市部から地方への人材還流を図る。女性が働きやすい税制・社会保障制度・配偶者手当等への見直しについては、働きたい人が働きやすい環境整備の実現に向けた具体的検討を進める。

税制については、政府税制調査会が取りまとめたこれまでの論点整理を踏まえ、幅広く丁寧な国民的議論を進める。社会保障制度については、年金機能強化法による本年10 月からの大企業における被用者保険の適用拡大に加え、中小企業にも適用拡大の途を開くための制度的措置を講ずるとともに、施行状況、就労実態や企業への影響等を勘案して、更なる適用拡大に向けた検討を着実に進める。その際、就業調整を防ぎ、被用者保険の適用拡大を円滑に進める観点から、短時間労働者の賃金引上げや本人の希望を踏まえて働く時間を延ばすことを通じて、人材確保を図る事業主を支援するキャリアアップ助成金が十分に活用されるよう周知徹底するとともに、人手不足の状況などを注視し、必要に応じて充実・強化する。

国家公務員の配偶者に係る扶養手当については、人事院に対し検討を要請しており、その検討結果を踏まえ、速やかに対処する。民間企業における配偶者手当についても、厚生労働省において取りまとめた「配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項」について広く周知を図り、労使に対しその在り方の検討を促していく。

(4)女性の活躍推進 我が国最大の潜在力である「女性の力」を十分に発揮させなければならない。様々な状況に置かれた女性が、自らの希望を実現して輝くことができるよう、女性の活躍を加速する必要がある。このため、「女性活躍加速のための重点方針2016」に基づき、長時間労働の削減などの働き方改革男性の家事・育児等への参画促進テレワーク等による柔軟な働き方の推進女性活躍のための行動計画の策定・情報公表等による女性の積極的な採用・登用の促進、将来指導的地位に登用される女性の候補者の育成などの取組を推進する。

子育て等で一度退職した正社員等の復職やキャリアアップへの道が一層開かれるようにするため、企業への働きかけ、大学・専修学校等における実践的な学び直し機会の提供を推進する。あわせて、多様な正社員などの女性が働きやすい働き方の環境整備を推進する とともに、いわゆるセクハラ・マタハラの防止に向けた取組を推進する。

…省略…

冒頭に「就業を希望する女性・高齢者の就業促進」「非正規雇用労働者の待遇改善」についての働き方改革が掲げられており、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジに位置付けられていることから、今後の労働法制についての動きは十分に注視すべきものとなります。特に「同一労働同一賃金」「長時間労働是正」がクローズアップされることになります。

この中で、少子高齢化などの構造問題に取り組むものとして、同時に「一億総活躍プラン」が閣議決定されています。「一億総活躍プラン」には、より詳細な内容が記載されているので、人材サービス事業者の経営戦略策定のためにも目を通すことが必要です。