6月30日にも「人材サービス総合研究所」のフェースブックページでも、労働政策審議会のあり方の見直しについて労働新聞社から報道されていることをお伝えしましたが、本日、一般紙の日本経済新聞「労政審見直しへ有識者会議 厚労省、非正規労働者の声反映」でも採り上げられました。

筆者は、これまで、厚生労働省の多くの研究会や労働政策審議会などを傍聴してきましたが、常にその会を構成する委員の顔ぶれに偏りを感じていました。

ILOの「民間職業仲介事業所条約」に基づいて公労使の三者構成の原則の体裁は保たれているものの、実際に委員の顔ぶれをみると必ずしも当事者の言い分が正確に伝わっているとは思えないことが多々あり、疑問を持たずにはいられない状況でした。

労働者派遣法で言えば、派遣労働者として働く立場の人、派遣労働者を雇用する立場の人がいない状態で議論が進みます。

かろうじて前回の労政審ではオブザーバーとして派遣事業者団体から二名が使用者側として参加が許されていましたが、派遣労働者を守るために極めて正当な主張に対して労働者側委員から、オブザーバーの「発言が多い」などと、どちらがどちらの立場で参加をしているのか疑いたくなる場面も目にしました。

使用者側からも「そのような法律にしたら派遣労働者が困るのではないですか?」とむしろ派遣労働者側の発言があるにもかかわらず、「常用代替の防止」を振りかざし、正社員の組合の立場さえ守れればよいという議論が後を絶ちませんでした。

使用者側についても、本来では派遣労働者のためにはならないということには口をつぐむということもあり、全体的に「派遣労働者の保護」と言っているわりには、必ずしもそうとはならないものが素通りしてしまうということもありました。

厚生労働大臣の「色々な働き方をしている人たちの声がきちんと政策に反映されることが大事」という発言は、まさにその通りではないでしょうか。

新たに労政審のあり方を考えるのであれば、可能な限り当事者の立場に立って発言のできる人も委員として加えるべきでしょうし、性別、地域、年齢、職種なども幅広く発言できる人も必要になるのではないかと思います。

「労働政策審議会」のあり方などについて考える有識者会議に期待したいところです。

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厚生労働省は21日、労働政策に関する厚労相の諮問機関「労働政策審議会(労政審)」のあり方などについて考える有識者会議を設けると発表した。増加を続ける非正規労働者などの声を政策決定に反映しやすくする。来年4月の委員改選の時期までに改革案をまとめる。

労政審は公益、労働者、使用者を代表する有識者各10人で作る。新たに設ける有識者会議は「働き方に関する政策決定プロセス有識者会議」。元厚労事務次官の村木厚子氏や、日立製作所会長の中西宏明氏ら13人が参加する。

労政審の見直しのために有識者会議を設けるやり方には「屋上屋を架すようなもので、民間企業ではあり得ない」と疑問視する声もある。

26日に第1回の会合を開く。塩崎恭久厚労相は6月の閣議後の記者会見で「色々な働き方をしている人たちの声がきちんと政策に反映されることが大事」と述べ、労政審の委員構成などを見直す考えを示していた。(日本経済新聞:2016/7/21 20:15)