先日9月1日の拙ブログ「「PR」と「アピール」─ 似て非なるもの…違いがわかりますか?」で、「本来の広報は、ブランディング、商品・サービスの認知向上、企業イメージの向上、リスクマネジメント、社内のコミュニケーション、従業員の意思統一や教育・育成、コーポレートガバナンスなど経営機能そのもの」という話を書いたら、そんなに一度にはできないとご指摘を頂きました。

たしかにそもそも広報担当者がいない。いても一人だけという場合はどうしてよいかわからなくなってしまいますね。ではどうしたらよいでしょう。

広報業務の優先順位

広報活動の優先順位私は、実際の業務に割く時間のウェイトは別として、「危機管理広報」「社内広報」「社外広報」が考え方の優先順位だと思っています。

メディアに向けてプレスリリースを書く広報担当者の姿からは遠いものになってしまいますが、あくまでも考え方としてはこの順だと考えておく必要があるのではないでしょうか。

「危機管理広報」、これは「守りの広報」とも言われ、広報活動では最も難しいものとされています。

もちろん、滅多に危機に遭遇することはない、というよりも、遭遇してはいけないことですが、万が一、遭遇してしまったとしたらどうでしょう。対応次第では会社を潰してしまうことになりかねません。

「社内広報」をしなくても、「社外広報」でメディアに採り上げられなくても、これらが一日遅れても、即座に会社が潰れるようなことはありません。しかし「危機管理」を怠ると会社は一瞬にして潰れるのです。潰さないまでも経営上の大打撃が待っています。

人材サービスに必要な「危機管理広報」

不祥事災いはどこからやってくるかわかりません。特に不祥事は、故意はもちろん、意図しないところにも起こる可能性があります。

企業の不祥事、実際に毎日のようにどこかで起こっています。発覚と言った方がよいのかもしれません。昔と違ってインターネットがさらにこの発覚に拍車をかけているのです。

バレなければよいという話ではありませんが、昔よりもはるかに発覚しやすいことは確かでしょう。

「人」が介在する人材サービスでは、事業者の意思とは関係のないところで不祥事が発生することもあります。法律を守っているつもりでもその複雑さによって足元をすくわれるかもしれません。被害者の立場であっても矢面に立つこともあるでしょう。

リスクマネジメント上、「起こってから考えればよい」と割り切るのであればそれまでですが、そうでないならば、まさかの場面を想定したしくみ創りで備えておくことは、経営責任として当然のことだと思います。企業は従業員の雇用を守るためにも成長以上に事業継続をすることが重要ではないでしょうか。

いつどこで危機が訪れるかわからない中で、メディアの社会部から真っ先に電話を受けて矢面に立つのは広報担当者です。危機管理のマニュアルぐらいは作っておくことをお勧めします。

それでも不幸にも起こってしまった場合はどうしたらよいでしょう。筆者も何度か危機に遭遇したことがありますが、それについてはまた別の機会にでも…。

■ 人材育成のための「社内広報」

さて、考え方の優先順位として二番目に「社内広報」を挙げたのはなぜでしょう。

社内のコミュニケーション、従業員の意思統一や教育・育成、コーポレートガバナンスの観点から、社内に統一したメッセージを発信し続けることは非常に重要です。サービスを創り、販売するのは従業員です。従業員がその気にならないものは絶対に売れません。

また、従業員の行動は経営理念に基づくものでなければ、信頼を得ることもできません。どのような姿勢で業務に取り組むのかコンセンサスを得ることも必要です。危機が訪れないよう教育・育成することも重要です。人材育成は人事だけの仕事ではないのです。

どんなに「社外広報」で耳障りのよいことを言っていても、それが「事実(ファクト)」でなければ一瞬にして信頼を失ってしまいます。ある意味で「社内広報」は「危機管理広報」の延長戦上にあるものと言えるのかもしれません。

■  結局求められることは受け手の行動変容

最後に「社外広報」ということになるのですが、もちろんこれを軽視しているわけではありません。敢えて優先順位を「危機管理広報」「社内広報」「社外広報」としましたが、「社外広報」が非常に重要であることに変わりはありません。

媒体としてマスメディアによるのか、コーポレートサイトを初めとするネット上での展開を行うのかの選択も必要です。あるいは、時と場合、内容によっては紙媒体やメールの方がふさわしいこともあるでしょう。

「社外広報」に限ったことではありませんが、結局は受け手がどのようにそれを感じ、理解し、行動を起こすかというコミュニケーション能力が非常に重要ということになります。

関連記事:

「PR」と「アピール」─ 似て非なるもの…違いがわかりますか?