孫子の兵法先日9月20日の拙ブログで外部環境分析についてお話しましたが、今日は内部環境分析について書いてみます。外部があればもちろん内部もあります。

彼を知り己を知れば、百戦あやうからず」といいます。外部環境を把握したら当然ながら内部環境の把握もしなければなりません。

外部も内部も自社を取り巻く環境を知らなければ戦えません。「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ずあやうし」ですからね。やはり基本中の基本として環境分析は絶対的に必要なのです。

知ってるつもりの内部環境

内部環境、つまり自分のことなのだからよくわかっているはずですが、実際には自分で思うほど自分のことはよく分からない、または分かっているつもりというのが実情ではないでしょうか。

内部環境分析では、自社のポジショニング、戦略、組織、人材、ライフサイクル、マーケティングの4Pなど、ありとあらゆる角度から自社を見つめ直すことが求められます。

人材サービスの場合、産業そのものの歴史が浅いため多くは成長期にある事業者が多いように思いますが、成長に合わせた戦略策定ができていないがために次のステージに進めないという残念な状況に置かれているケースもあるように見受けられます。

あるいは市場環境という外部要因で成長を続けてきたものの、ふと我に返るとそれは自社の成長によるものばかりではないということもあるように思いますがいかがでしょう。

baloon「成長ではなく膨張」だった

ある人材サービス企業の社長があるセミナーのプレゼンで、過去を振り返りながら「人材派遣の業績拡大は成長ではなく膨張だった」と仰ったことをよく覚えています。

実は、私が人材サービスに転身したばかりの15年近く前に「成長ではなく膨張」という言葉をよく使っていたことを思い出したのですが、それ以上にこの社長の真摯な姿勢に衝撃をうけました。

成長ではなく膨張」…なかなか経営者が自分の口から言えるものではありません。労働者派遣法の規制緩和と市場からの要請に応じて急激な成長をされたのだと思いますが、リーマンショックで苦しい思いをしたのだろうと推察します。

自ら「成長ではなく膨張」と素直に振り返ることのできる企業は、本当の意味での成長ができる企業ではないでしょうか。非常に感服をした一幕でした。

「売上目標追求」だけでは膨張

成長ではなく膨張」という言葉の裏にはなにがあるのでしょう。おそらく市場の求めるままに売上規模を追求し、売上目標のために営業部隊を拡大し、売上に伴った利益を得て大きくなった、つまり膨らんだということではないでしょうか。

しかし、企業活動というのは営業だけではありません。営業を支える支援部門や本社部門のすべてが適切に機能して初めて膨張ではなく成長といえるのです。規模が大きくなるほど、組織として戦えるしくみを創っていく必要があるのです。

私はよくいわれる「営業会社」という表現に一抹の不安を覚えるのですが、なぜならそこには営業的な機能ばかりが膨らんだ会社のイメージがつきまとうからです。

利益は膨らんだ売上の中から得られるものだけではなく、安定的で効率的なコスト削減をした中から生み出せるよう、しくみを創らなければなりません。稲盛和夫さんの経営12か条に「売上最大、経費最小」というものがあります。当然ながらその差が利益です。シンプルな言葉ですがこれを突き詰めようとすると大変です。

営業が強いことは重要ですが営業だけで会社が成り立っているわけではありません。さらに財務体質を強くする、リスクを適切にマネジメントするといったことがすべて機能して初めて「Good」ではなく「Great」な企業といえるのではないでしょうか。

客観的判断によるPDCA

内部環境分析で最も重要なことは客観性です。客観的な分析によってはじめて精度の高い戦略を策定することができます。そしてその戦略に基づいて計画を実行し、その結果を検証するというPDCAサイクルをまわすことが筋肉質の企業体質を創ります。

よくPDCAが重要といわれますが、何を基準にチェックするのかが曖昧なことが多く、結果論としてチェックをしたつもりになっていることも多く見受けます。

本当の意味でPDCAをまわし、業務改善のスパイラルを積み上げるためにも客観的な内部環境分析は重要なものとなっていきます。

高収益企業のつくり方 さらに上をいく「アメーバ経営」

一般的に財務体質というと財務会計による財務諸表で分析をすることになると思いますが、私は、客観的な内部環境分析を担保するうえでもっとも効果的な手法は「アメーバ経営」だと信じています。

「アメーバ経営」…ご存知のように稲盛和夫さんの経営手法です。私自身、稲盛さんから直接薫陶を受けたこともあるのでなおさらですが、実際に自分が担当した組織にこの考え方を導入すると必ず大きな成果がを得ることができました。

具体的にはまずは部門別採算制度による時間当たり採算性の可視化です。ここまでは通常の管理会計の考え方と大きくは変わりません。

「アメーバ経営」のすごいところはこの管理会計に経営哲学(フィロソフィ)をつなげて考えるところにあります。

この感覚は「アメーバ経営」を意識して経験した人でなければ分からないと思うので、また別の機会にでも採り上げたいと思いますが、これは必ず成果が上がります。導入を検討してみてはいかがでしょう。

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