プライシングの概念皆さんは「プライシング」という言葉をご存知でしょうか。

日本ではあまり浸透している言葉とは言えませんが、マーケティングの4Pの中の一つ「プライス」の改善は業績向上に非常に重要な役割を果たします。

つい先日、料金改定についてのお話を受けたので今日はこの「プライシング」についてお話します。

私は以前、「プライシング」に関するプロジェクトマネジメントをしたことがあるのですが、これは全社の粗利改善をするプロジェクトで、規模もメンバー50名という破格のものでした。

結果から言うと、このプロジェクトでは3年間で165%の営業利益改善を果たし、これは当時、自社史上最高益、恐らく同業事業者の中でも最高益を創出したと思われます。

もちろん、このプロジェクトを推進するに当たってはプロジェクトを牽引した私以上に現場の従業員の皆さんの努力がモノを言ったのだと思いますが、考え方として正しい道筋をたどったことも大きく奏功したのではないかと思っています。

粗利益率1%は営業利益率12%

粗利益率、つまり、労働者派遣法の平成24年改正法で公開しなければいけないと言われているマージン率ですが、この粗利益率を向上させるとどのようなことが起るのでしょう?

実は粗利益率を1%改善させると一般的に営業利益率は12%向上するという理論があるのです。したがって簡単に値引きなどしてはいけません。1%値引きすると12%の営業利益率を失うのです。

マージン率を公開しなければならないという法律は、健全な企業活動を阻害するものでもあるため、悪質事業者の排除を理由とするのであれば、これに代わる法律を制定することが必要だと思いますが、それについてはまた別の機会にでも…。

売上最大、経費最小

全社で粗利益率を1%向上させることは途方もない努力が必要です。私が牽引したプロジェクトでは、営業現場もさることながら、むしろバックオフィスのほとんどの部署を巻き込んでしくみを創っていきました。

では、この粗利益率を向上させるためにはどうしたらよいでしょう。ある意味、理屈の上では簡単なことで「売上を最大にすることと経費を最小にすること」、その差が粗利益です。

人材サービスでは、現在のように法改正により事業者の財務内容が左右される中、健全な経営を続けていくためにはこのプライシングをやっていくしかありません。

現在のように売り手市場になっている中では、なおさら粗利改善をしていかなければなりません。もちろん、ここでは賃金を下げるという話ではないので間違えないようにお願いします。下げると人材が集まらなくなりますから…。

先達の言葉は重い

経営の神様と言われるような人たちは、プライシングについてこのように言っています。いずれも、さすがに含蓄のある言葉ですね。

松下幸之助 (パナソニック)

いかなる商品でも私の方で決めるもので、他の店より高い場合もある。しかしその高いという場合には、自分の魂料が入っている、信用保証料が入っている。だから何かのときは私の方は責任をもちますよ、ということを堂々と主張できるような商売をしなくてはならない。

本田宗一郎 (本田技研工業)

値段を安くするために性能を犠牲にしてはならない。

稲盛和夫 (京セラ/KDDI/JAL)

「値決め」は経営であり、トップ自らが決めるべきものである。値決めで会社の業績が悪くなるとすれば、それは経営者の器の問題であり、心の問題であり、経営者の持つ貧困な哲学のなせる業と思う。

サービスの質の向上こそ粗利改善の近道

当然ながら、簡単に値段を上げられるものではありません。一朝一夕には上げられません。上げられるだけのサービスの質の向上が必要です。

松下幸之助さんが言う「魂料」が入っているかどうかが重要になるのではないでしょうか。

それぞれの企業の強みなり、特長なりを生かし、顧客との関係性まで考えた上でプライシングを行うことになるので、一概に方法論について語れるものではありません。

具体的なことは個別にご相談いただくしかありませんが、いずれにしても、本来の財務体質の改善とはこのようなところから取り組む必要があるのではないでしょうか。

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雇用が変わる

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