塩崎厚生労働大臣1月6日に行われた塩崎厚生労働大臣の会見について内容が公開されました。年頭にあたり抱負が述べられています。

主なコメントについて採り上げます。

「『働き方改革』の大前提は働き方コンプライアンス」

「働き方改革」への認識として「大前提は働き方コンプライアンス」であるとの考え方が示されています。

一般的にコンプライアンスは「法令遵守」ということになります。

行政府の長としての発言であれば、管理監督を強化するという意向ということでしょうか。

労働者保護のための管理監督を強化することは重要だと思います。ぜひ、きちんと取り締まってほしいものです。

人材サービスで言えば、人材サービスを提供している事業者もさることながら、人材サービスを利用している企業も対象とするべきだと思います。

また、曖昧な解釈、労働局や担当官によって解釈の違う裁量行政についても整理をしてほしいものです。

一方、立法府の国会議員の立場としての発言であれば、法規制の成立のことを指すのだと思います。

「働き方改革」を最大のチャレンジと位置づけていることから、安倍首相の「断行の年」という意向をそのまま踏襲するということでしょう。

同一労働同一賃金も含めて、3月に計画をまとめるそうです。

「社長一人の引責辞任で済む話ではない」

電通の労働基準法違反に触れ「意に反する長時間労働は無くしていく」とコメントをしています。

意に反さなければよいのかという部分も残りますが、「働き方改革」の3番目に位置付けているだけに、長時間労働への取り組みは昨年に続き強化されることになるということでしょう。

私は、以前、電通さんには発注者側の立場としてお世話になったことがあります。

若干、体育会系の感覚がなきにしもあらずでしたが、どう考えてもブラック企業という企業ではないと思います。

むしろ、さすが一流企業というイメージもあったのですが、企業文化というものはあったのでしょうね。

ただ、行動規範の「鬼十則」は有名ですが、私は個人的にはあまり好きではありません。

電通「鬼十則」

  1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
  2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
  3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
  4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
  5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
  6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
  7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
  8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
  9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
  10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

塩崎大臣は「社長一人の引責辞任で済む話ではない」という認識のようですが、ぜひ、今回のようなことが起ってしまう企業風土を生むメカニズムを解明してほしいところです。

経営理念については、私もかなり研究しているので機会があればまた採り上げます。

(もしよろしければこちら「経営理念の重要性とその実践」もご参照ください)

「行政側のパワーアップも必要ではないか」

法律に基づいて規制が行われている中で、その法律が守られていないという状況があることを指摘したうえで、「行政側のパワーアップも必要ではないか」とコメントしています。

それは当然です。むしろ、解釈が複雑で守りづらいような法律があるから守れないという側面もあると思います。

労働者派遣法で言えば、キャリア形成支援。何をもってキャリア形成とするのか、いまだに明確ではないのに義務づけられていますよね。

そもそもこれが派遣法改正の附帯決議で法律としてまかりとおってしまうこと自体が間違っていると思いますが…。

ある意味、厚生労働省も困っているのではないでしょうか。

「どのように法案化をするのかタイミングも含めて今後考える」

労働基準法改正案と、同一労働同一賃金の実現に向けたパート法など関連3法案の改正案ついてのスケジュールに関する質問に対して回答しています。

ホワイトカラーエグゼンプションに関する労働基準法については、しっかり成立を図るとコメントしています。

一方、同一労働同一賃金に関連する労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の改正案については、「どのように法案化をするのかタイミングも含めて今後考える」と明言を避けています。

いずれにしても、方向性を出すのは3月になるようです。

塩崎大臣会見概要

(H29.1.6(金)10:56 ~ 11:17 省内会見室)

《閣議等について》

(大臣)

明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。

(記者)

2点おうかがいします。1点目は、新年1回目の閣議後会見ということで、2017年はどのようなことに力を入れて、どのような年にされるか、今年の抱負をお聞かせください。

2点目は、昨年末のことになりますが、電通とその幹部1名が書類送検されました。事件の注目度なども考慮して、異例のスピード捜査となったわけですが、大臣の御所感をお聞かせください。

(大臣)

今年は丁酉(ひのととり)の年ということで、いろいろな解説がなされていますが、新しい活動が生まれて、芽を出して、それを育て、形をなすということで、取り組んできたものを次の段階に進める年だと言われています。

革命の年という説もありますが、いずれにしても、これまで安倍内閣の4年間、第二次から始まって、様々な改革に取り組んでまいりましたが、これをどのように次の段階に進めていくかという大変大事な年ではないかと思っております。

一昨年から、一億総活躍社会づくりということで、まずは50年先にも1億人の人口をキープするという、言ってみれば子育て支援をしっかりとやるということになるわけでありますが、そういう中でどのようにして社会保障の充実をしていくのかということで、そのためには成長と分配の好循環が必要だということで、一億総活躍社会づくりのプランを去年の6月に決めて、推進してきております。

その中には「働き方改革」があるわけでございまして、これは最大のチャレンジとして内閣が取り組むべきものという位置付けでございます。

一億総活躍社会づくりは、人口問題に正面から取り組むという、大変奥深い問題でありますが、その一本目の矢の中心として、「働き方改革」を据えて、今日までやってまいりました。

これは3月に計画をまとめるということでありますので、これまでやってきた同一労働同一賃金や、病気になっても働ける環境など、多様な働き方を自ら選択でき、非正規が不合理な格差で御苦労されないという、職務と評価を明確にして、公正な評価を受けることによって、適正な報酬をもらえるように、非正規であろうと正規であろうとそういうことをやることだと思います。

長時間労働についても意に反する長時間労働は無くしていくということで臨んでいきたいと思います。

電通の話を申し上げれば、11月に強制捜査を行って、捜査を進めてまいりまして、12月28日に、東京労働局に設置いたしました「かとく」、過重労働撲滅特別対策班が、労働時間に関する労働基準法違反の疑いで電通ほか1名を書類送検いたしました。

今回は労働基準法違反の容疑が固まった者について送検したものでありますので、引き続き、捜査は継続されるということでございます。

全容解明に向けて、厳正に対処してまいりたいと思っております。

これに関連して、法律に基づいて規制が行われているわけでありますし、その法律が守られていないという状況があることを考えてみると、私ども行政側のパワーアップも必要ではないかと思っております。

これは労働基準局だけではなくて、他の規制行政は医薬・生活衛生局でもありますし、いろいろなところで法律に基づいて行っているわけで、そういう意味では法曹資格を持った職員をもう少し増やさなければならないのではないかと思っております。

例えば金融庁では20人、30人規模で法曹資格を持った人が検査や、様々な金融行政を行っていると聞いておりますが、厚生労働省は3人しかいない。しかも、検事はゼロということで、弁護士2名と裁判官1名というのが、厚生労働省の本省の法曹資格を有している人の配置であります。

したがって、全て法律に基づいて行政を行っている限りは、もっと増やすべきだと思いますし、他の役所で検事がいるというところもあります。

したがって、法曹資格を持っている人を職員として増やすことに関して、法務省ともしっかりと相談し、体制を固めることによって、「働き方改革」の大前提は働き方コンプライアンスでありますから、ここのところをしっかりとやっていくということではないかと思います。

…医薬行政については省略…

長時間労働等、「働き方改革」についても、3月に計画がまとまり次第、法案化に向けて努力を始めなければならないと思っております。

(記者)

2点お尋ねします。1点目は、先ほどの質問で出ましたが、電通に関してです。

書類送検を受けて、社長が引責辞任する事態になって、社会に与えるインパクトも非常に大きいと思います。大臣としての受け止めをもう少しおうかがいします。

…高齢者の定義については省略…

(大臣)

まず、電通の問題でありますけれども、先ほど申し上げたとおり、労働基準法違反の疑いで書類送検したわけでありますが、捜査はまだ継続していくということでありまして、社長一人の引責辞任で済む話ではないと考えています。

既に強制捜査は東京本社だけではなくて、3支社に対しても行われているわけであります。

社会的な注目度と重大性ということを踏まえて、我々は粛々と捜査を続けますが、企業としても文化を変えるという決意を持って、「働き方改革」を自ら担って、自己完結的な努力をしてもらいたいと思います。

…高齢者の定義については省略…

(記者)

「働き方改革」についてお尋ねします。

昨日の連合の新年交歓会で、大臣は、三六(さぶろく)協定のあり方を近々実現会議で議論することになっていて、その結果を受けて、当然、法改正に至るとおっしゃって、労働基準法改正の一通りの認識を示されました。

労基法の改正案と、同一労働同一賃金の実現に向けたパート法など関連3法案の改正案ついては、今年の通常国会に提出するというお考えでよろしいでしょうか。

(大臣)

既に労働基準法の改正案は、高度プロフェッショナル制度であったり、裁量労働制や、あるいは少なくとも会社が5日間休むことを指定するといったことを含めて出ているわけでありますから、これはこれでしっかり成立を図ってまいりたいと思っております。

その他、今、いろいろな議論を働き方改革実現会議で行っておりますので、しっかりと議論した上で、方向性を出していただくということが3月の計画であります。

それを受けて、どう法律に落とし込んでいくのかということを考えなればいけないので、これは計画を踏まえて、そして実現会議での議論を踏まえて、どのように法案化をしていくのかということはタイミングも含めて、今後考えていかなければいけないことだと思います。

…以下、福島県の地域医療についての質疑は省略…

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