こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

先週末、4月1日(土)の日経新聞朝刊の記事に「雇用逼迫、成長の壁に 失業率22年ぶり低水準」というものがあります。

この記事、雇用に関わる専門家の間でも少し話題になったので、改めて読みかえしてみました。

たしかに、何度読んでもすんなり頭に入りません。

昨今の雇用を巡る議論にある言葉をなんとなくつなぎ合わさっていますが、記事として何を伝えたいのかがよくわからないのです。

ここで考えたいのがこの記事の表現の良し悪しやロジックなど中身のことではなくマネジメントについてです。中身については、どんなものか読んでみてください。

適切な記者に指示をしたか

この記事がどのような経緯で書かれることになったのか、その経緯は知る由もありません。

想像の域を脱しませんが、2月の失業率が2.8%と発表され、これを元に記事を書くように記者が指示を受けたのでしょう。

恐らく、この記者は四苦八苦しながらいろいろなデータや研究結果を調べ、文章をつなぎ合わせたということでしょうか。

きちんと裏付けをとることは重要ですが、その内容を本当に理解したうえで書いたとは思えないのです。

記者なのだから、文章を書くことについてはプロのはずですが、そうは言っても得意不得意もあるのではないでしょうか。

まず、適切な担当者をアサインしたかどうかが問われます。

担当者に任せっぱなし

そして、この記事を書いた記者がどうこうというよりも、この記事を書くように指示をしたマネジメントはどうなっているのだろうということが気になります。

指示をすることはマネージャーとして当然ですが、そのフォロー、サポートをすること、その成果に責任をもつまでを含めてマネジメントの仕事だと思います。

マネジメントというと、リーダーシップや課題解決力、戦略的思考などが浮かびますが、最大の仕事は人材育成力ではないでしょうか。

少なくとも、この記事をチェックし、誤りがあれば正す、よりよいものにするということをせずに記者に任せっぱなしにしてしまったように感じます。それでは人は育ちません。

マネジメント力が成果を決める

バブル崩壊以降、プレーイングマネージャーという言葉がもてはやされるようになりました。

マネジメント職であってもプレイヤーも兼務するというスタイルです。

元来、マネージャーとプレイヤーは求められるものが違うにもかかわらず、これらを同時に求めることに弊害もあるような気がします。

ある意味、マネージャーは重要事項に、プレイヤーは緊急事項に携わることが求められているとも言えます。

異なる2つを両立させることを求めていることになりますが、どうしても目先の実績につながる緊急事項に評価が偏るということはないでしょうか。

本来、企業はマネジメント力で成果が決まるはずですが、これでは成長はありません。

マネージャーへの適切な評価と育成

そうなると、さらに遡って人事制度はどうなっているのかという話になります。

マネージャーに対する評価とプレイヤーに対する評価をはっきり分けなければなりません。

まさに人材マネジメントはどうなっているのかが問われることになります。

企業の生産性を高める改革の第一歩はマネジメント層への適切な評価と育成にあるのではないでしょうか。

日本経済新聞は、まともな記事が多いので残念に思い、つい記事をカモにマネジメントについて書いてしまいました。

この記事を読んでいると、経営的にこのような問題があるのではないだろうかと透けて見えたような気がします。まさか、出来の悪いAIが書いたわけではないですよね。。

ちなみにこの記事、人材不足と経済成長が一緒に語られるのでわかりづらいのかもしれませんね。働き方改革が、労働者の保護よりも経済成長を目論んでいるからかもしれません。

部分々々を読むと、そうなのだろうと思うこともあるのですが、つながった瞬間わけがわからなくなっているのが残念です。

私も、ブログを書いているとよく話が飛ぶので、他人事ではないですね。スミマセン。

雇用逼迫、成長の壁に 失業率22年ぶり低水準

日本経済新聞 2017/3/31 20:33

労働需給が一段と逼迫してきた。

2月の完全失業率は2.8%まで下がり、有効求人倍率も四半世紀ぶりの高水準だ。

深刻な人手不足で中小企業を軸に賃上げ圧力が強いものの、非正規増加や将来不安で消費には点火しない。

雇用改善は所得増や物価上昇を通じて成長を加速させるはずだが、人口減に突入した日本経済では労働供給の制約が「成長の壁」になっている。

失業率が2.8%になったのは1994年6月以来、22年8カ月ぶりだ。

働く意欲と能力を持つ人がすべて雇われ、これ以上は失業率が下がりにくい「完全雇用」といわれる状況だ。

日本経済新聞社の調査では2018年春の大卒採用は17年春よりも10%近く増える見通し。

大都市圏のパート時給は1000円を超えた。多くの人に雇用の門戸が開かれた良好な状態にある。

労働市場が急速に引き締まっている理由は大きく2つだ。

1つ目は人口減。15~64歳の生産年齢人口は1997年の8699万人をピークに減り続け、2月は7620万人だった。

20年間で約1000万人、年平均でおよそ50万人という先進国では例をみないペースで減っており、働き手の補充が追いつかない。

景況感の改善がもう1つだ。2月の鉱工業生産指数(2010年=100)速報値は102.2と前月比2.0%の上昇だった。

世界経済の緩やかな回復という温風が波及し、日本企業も先回りして人手を確保しようとする動きが活発だ。

■ 厳しい外食・運輸

モノやサービスの需要さえあれば企業はもっと成長できる環境なのに、肝心の働き手が足りず手厚いサービスを供給できない。

典型例は外食だ。ファミレスのロイヤルホストは2月に24時間営業をとりやめ、すかいらーくも4月までに順次、24時間営業店舗の7割を原則午前2時閉店に変更する。

リンガーハットも4月1日から首都圏などの店53店舗を対象に営業時間を平均2時間短縮する。

物流業界ではネット通販による宅配便急増に対応できず、ヤマト運輸などがサービスや価格の見直しに動いている。

急ピッチで進む生産年齢人口の減少を埋めてきたのは、女性や高齢者だ。

2月の就業者数は前年同月に比べ51万人増えた。

女性が33万人、65歳以上の男性が26万人増える一方、15~64歳の男性は8万人減った。

ところがいくら就業者が増えても非正規のパートなどで短時間勤務の人が多いので、経済成長にとって重要な総労働時間(いわゆる労働投入量)は横ばいのままだ。

非正規を正社員に切り替えるなどして企業も労働力確保に躍起だが、激しい人材争奪で限界の壁に直面している。

就業者数もここへきて頭打ち傾向にある。季節調整値でみると、2月の就業者数は前月比21万人減(0.3%減)だった。

大和総研の試算によると、仮に就業者の伸びがゼロで人手不足が続けば、潜在成長率を0.14%押し下げる。

日本経済の実力を示す潜在成長率は0.8%ほどなので、無視できない大きさだ。

潜在成長率の2%への引き上げを労働力だけで実現しようとすればおよそ190万人もの就業者の増加が必要な計算だ。

生産性向上や工場・設備などの資本投入も大きな伸びは見込めない。

■ 弱い個人消費

これだけ人手が足りなくなると賃上げが加速してもおかしくないが、中小にとどまっている。

中小企業が加盟するものづくり産業労働組合(JAM)がまとめた2017年春季労使交渉の中間集計では、従業員数300人未満の中小企業のベースアップ(ベア)の平均回答額は1397円と、トヨタ自動車など大企業の1300円を上回った。

JAMの宮本礼一会長は「人材を引き留めておくためにも賃上げする動きが続いている」と指摘する。

雇用者の4割は中小企業が占める。ただ、中小の賃金水準は大企業の7~8割にすぎない。

賃上げをしたとしても将来不安から貯蓄する傾向が強く、消費に勢いがない。

個人消費が上向かないため人件費の上昇分を販売価格に転嫁できない企業も多い。

2月の消費者物価は生鮮食品を除く総合で前年同月比0.2%の上昇にすぎない。

人手不足が賃金や物価上昇に波及する経済の好循環は実現していない。

BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「完全雇用下では政府は需要を拡大するよりも、成長産業に労働者が移動しやすくするなど生産性を高める改革に注力すべきだ」と指摘する。

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