こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

今日は、働き方改革、実効計画から「女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」についてみてみましょう。

同一労働同一賃金や長時間労働の是正に比べるとかなり小粒な感じがします。

骨子は、(1) 女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援などの充実、(2) 多様な女性活躍の推進、(3) 就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備の3つです。

「女性・若者の…」と言っているわりには、ほとんどが女性を対象としたものになっており、若者についてはそれほど大きくクローズアップされていません。

有効求人倍率も上がり、失業率も下がっているなかで、むしろ売り手市場の若者には、多くの対策を必要としないということなのかもしれません。

尤も、女性と若者が並列に並んでいるのは論理的でなく、いつも気持ち悪いんですけどね(笑)。

リカレント教育とは

リカレント教育の支援が挙げられています。そもそもリカレント教育とはなんでしょう。

「回帰教育」とも「還流教育」とも言われる「生涯教育」のことらしいですが、「職業技術」の習得のために、就労→学校→就労という教育の体系を構築するもののようです。

日本では終身雇用を前提としてきたベースがあるので、企業内で教育をするという考え方が強かったのだと思いますが、終身雇用が崩壊した現在では企業内教育が難しくなっているということのようです。

また、一度、職を離れて学校に行くということは、余程大企業で企業留学などの制度がない限りは、元に戻りづらいという環境もあるのだと思います。

したがって、このリカレント教育を推進することは全体の底力を上げるためによいことではないでしょうか。

対象は女性だけ?

しかし、働き方改革の実行計画で対象としているのは、出産、育児のライフイベントだけを想定しているようで、本来のリカレント教育とは言い難いものがあるようです。

またもやガラパゴス化した日本独自の解釈でリカレント教育を捉えているようですね。

本来のリカレント教育の観点では、老若男女の別なく、就労→学校→就労というサイクルが、実地→理論→実地という好循環をつくるのだと思います。

女性に限らず、繰り返し学習できる環境をつくることは、生産性向上のためにも非常に有効なのではないでしょうか。

私自身は比較的、きちんとした教育研修を受けることに恵まれてきたと思いますが、それでも改めて学校に行きたいと思ったことが何度もあります。

就社から脱却した職務型雇用システムが必要

実行計画では、正社員の女性が育児で離職すると、復職や再就職の際、過去の経験、職業能力を活かせないということが指摘されています。

これは、就職ではなく就社になってしまっていることに原因があるように思います。

職務によって文字通り就職をしていれば、仮に休職をして一定期間、ブランクが空いたとしてもそれほど困ることもないのだろうと思いますが、現状では就社になっているので、復職しても必ずしも同様の職務に就かない可能性が高いということに起因しているのではないでしょうか。

もちろん、企業側はそれぞれの職務について適正人員数を計っているので、余剰人員を抱えることはできないことが多いのだとは思いますが、ライフイベントによる求職中は人材派遣を活用することで、必ずしもリカレント教育という大上段に構えることもないケースも多いような気がします。

復職や再就職をしやすくするためにも職務型の雇用システムをつくっていく必要があるのではないでしょうか。

第4次産業革命に求められるスキル

「第4次産業革命が働く人に求められるスキルを急速に変化させているため、技術革新と産業界のニーズに合った能力開発」について指摘されていますが、これは本当にそう思います。

ただし、これは女性と若者の雇用という文脈の話ではないように思います。

IT系の人材はもちろんですが、これを使いこなす人材、例えばデータサイエンティストのような職は、むしろ多くの経験を積んだ人の力も必要なのではないでしょうか。

第4次産業革命に求められるスキルを高めることは非常によいと思いますが、むしろ、働き方改革実現会議で挙げられた9項目に、新たにもう1項目加えるぐらいのつもりで推進する必要があるように思います。

103万円、130万円の壁

配偶者控除などの103万円、130万円の壁は均等・均衡待遇の観点からもむしろ逆差別になっていると思います。

昨今、配偶者手当のような手当をなくしている企業が多くなっているなか、配偶者控除のために働ける人が働くことを控えるというのは妙な話です。

女性の就業率の上昇、いわばM字カーブの是正は、国政の観点からはワークシェアリングの一種でもあり、世帯年収を増やすということになるのだろうと思います。

個人生活の観点からは、家事のあらゆることが便利になっているので、女性が働きやすくなっているとも言えます。

逆差別的な扱いは取り払うことが必要でしょう。

人材サービスの出番は?

さて、この「女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」によって人材サービスにどのようなビジネスチャンスがあるでしょう。

かなり女性のライフイベントに焦点が当たっていることから考えると、まずは休職中の人材派遣ですね。今に始まった話ではありませんが、政府にもその認識をもってほしいものです。

私もそのようなケースで人材派遣を利用した(派遣会社だったので厳密には有期の直接雇用)ことがありますが、休職する人、残された人、休職中に採用した人のすべてが助かりました。これも職務型の雇用システムがあったからと思います。

もう一つのビジネスチャンスは、リカレント教育を含めた人材派遣、人材紹介でしょうか。

すでに派遣では有給無償の教育研修が義務づけられていますが、この枠組みの中にリカレント教育も含めればビジネスチャンスが広がるのではないでしょうか。

日雇派遣の原則禁止の解禁も必要

女性の就労を考えると、やはり日雇派遣の原則禁止は解禁すべきでしょう。

いわゆる主婦が短期間、都合のよいときだけ働ける環境を整えることは、「女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備」としても非常に有効なはずです。

週に数日だけ、月末、月初のような限られた日だけという就労を望んでいる人も多いと思います。

日雇派遣の原則禁止は、リーマンショック後にややヒステリックな感情論で規制されたものだと思いますが、もう一度冷静に考えてみる必要があるのではないでしょうか。

昨日は、オープンしたばかりの銀座のGINZA SIXに行ってみました。圧倒的に女性客が多いですね。まだまだ女性は活躍できる余裕があるような気がします。

土日は入場制限もあるようですが、お暇な方はいかがでしょう? 一番、売上が上がったのは正面にあるユニクロかもしれませんが…。よい週末をお過ごしください。

6.女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備

(1)女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援などの充実

我が国では正社員だった女性が育児で一旦離職すると、復職や再就職を目指す際に、過去の経験、職業能力を活かせない職業に就かざるを得ないことが、労働生産性の向上の点でも問題を生じさせている。

大学等における職務遂行能力向上に資するリカレント教育を受け、その後再就職支援を受けることで、一人ひとりのライフステージに合った仕事を選択しやすくする。

このため、雇用保険法(昭和49年12月28日法律第116号)を改正し、職場で求められるスキルに直結する専門教育講座の受講費用に対する教育訓練給付を拡充する。

給付率は、最大で6割だったものを7割にする。

上限額は、年間48万円だったものを56万円に引き上げる。

給付を受けられる期間は、子育てによる離職後4年までだったものを10年までに延長する。

これまで離職後1か月以内に必要とされていた受給期間の延長手続きをしなければならない制度を、直ちに廃止する。

多様なスキルを習得・評価する機会を増やし、きめ細かく再就職を支援するため、子供を保育園に預けながら受けられる教育訓練を拡大するとともに、土日・夜間、e-ラーニング、短時間でも受講できる大学等の女性リカレント教育講座を開拓し、全国に展開する。

この際、企業と連携したインターンシップや、育児と両立しやすい求人情報がマザーズハローワークから大学に届く仕組みにより、大学の再就職支援機能を強化する。

また、民間企業における1人当たりの教育訓練費が減少傾向にある一方で、人工知能(AI)などによる第4次産業革命が働く人に求められるスキルを急速に変化させているため、技術革新と産業界のニーズに合った能力開発を進める。

高度なIT分野を中心に、今後需要増加が見込まれるスキルに関する専門教育講座を開拓・見える化し、その受講を支援する。

また、ITや保育・介護など人材需要の高い分野の長期の離職者訓練コースを新設、拡充する。

さらに、学校教育段階から実践的な職業能力を有する人材を育成するため、幼児期から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育を推進するとともに、実践的な職業教育を行う専門職大学を創設する。

こうした企業、個人、政府による人材投資を抜本強化、集中支援を行う。

(2)多様な女性活躍の推進

我が国には、ポテンシャルを秘めている女性が数多くおり、一人ひとりの女性が自らの希望に応じて活躍できる社会づくりを加速することが重要である。

安倍内閣では、「女性が輝く社会」をつくることを最重要課題の1つとして位置づけ、昨年4月から施行された女性活躍推進法女性(職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年9月4日法律第64号))の制定などの取組を進めてきた。

女性の就業者数はこの4年間で約150万人増加するとともに、出産を経ても継続して就業する方の割合についても近年上昇するなど、女性の活躍の機運が急速に上昇している。

しかしながら、就業を希望しつつも家庭との両立が困難で働けない方や、就業調整を意識して働いている方などのため、今後、更に女性の活躍を推進することが必要不可欠である。

このため、女性の活躍に関する企業の情報の見える化を進め、一層の女性活躍に向けた企業の取組を促進する。

具体的には、労働時間や男性の育児休業の取得状況、女性の管理職比率など、女性が活躍するために必要な個別の企業の情報が確実に公表されるよう、2018年度までに女性活躍推進法の情報公表制度の強化策などについての必要な制度改正を検討する。

また、働きたい人が就業調整を意識せずに働くことができる環境をつくる。

配偶者控除等については、配偶者の収入制限を103万円から150万円に引き上げる。

なお、若い世代や子育て世帯に光を当てていく中で、個人所得課税の改革について、その税制全体における位置づけや負担構造のあるべき姿について検討し、丁寧に進めていく。

就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築は、税制だけで達成できるものではない。

短時間労働者の被用者保険の適用拡大の円滑な実施を図るとともに、更なる適用拡大について必要な検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。

企業の配偶者手当に配偶者の収入制限があることも、就業調整の大きな要因の一つである。

労使の真摯な話し合いの下、前向きな取組が行われるよう、働きかけていく。

国家公務員の配偶者に係る扶養手当の見直しについて、着実に実施する。

さらに、正社員だった女性が育児で一旦離職した後の復職を可能とするため、復職制度をもつ企業の情報公開を推進する。

具体的には、復職制度の有無について、ハローワークの求人票に項目を新設し、女性活躍推進法の情報公表の項目に盛り込むことを検討する。

また、復職に積極的な企業を支援する助成金を創設する。

加えて、女性活躍推進法に基づく女性が働きやすい企業(えるぼし)、次世代育成支援対策推進法(平成15年7月16日法律第120号)に基づく子育てしやすい企業(くるみん)、若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和45年5月25日法律第98号))に基づく若者が働きやすい企業(ユースエール)といった認定制度や、従業員のキャリア形成に関する企業の表彰制度などを活用し、働き方改革の好事例の横展開を図る。

(3)就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備

就職氷河期に学校を卒業して、正社員になれず非正規のまま就業又は無業を続けている方が40万人以上いる。こうした就職氷河期世代の視点に立って、格差の固定化が進まぬように、また働き手の確保の観点からも、対応が必要である。

35歳を超えて離転職を繰り返すフリーター等の正社員化に向けて、同一労働同一賃金制度の施行を通じて均等・均衡な教育機会の提供を図るとともに、個々の対象者の職務経歴、職業能力等に応じた集中的な支援を行う。

また、高校中退者等の高卒資格取得に向けた学習相談・支援を行う。

さらに、若者雇用促進法に基づく指針を改定し、希望する地域等で働ける勤務制度の導入など多様な選考・採用機会を促進するとともに、職業安定法(昭和22年11月30日法律第141号)を改正し、一定の労働関係法令違反を繰り返す企業の求人票をハローワークや職業紹介事業者が受理しないことを可能とする。

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