こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

憲法記念日ですね。若い頃は単純に祝祭日は休日としてとらえ遊ぶことばかり考えていましたが、歳をとるとそれなりにその意味を考えるようになりました。

私たちが生きている今だけでなく、将来を生きる子孫のために何が正しいのかと考えずにいられません。

憲法改正の議論が交わされていますが、一般的には「9条 戦争の放棄」をめぐる議論ばかりです。

そこで今日は、人権や雇用にかかわる問題として以下について考えてみたいと思います。

  • 第11条 基本的人権の享有
  • 第12条 国民の責務
  • 第13条 人としての尊重等
  • 第14畳 法の下の平等
  • 第27条 勤労の権利及び義務等
  • 第28条 勤労者の団結権等

まず、改憲か護憲かというと、私は改憲に賛成です。

憲法は理念を謳うものなので可能な限り普遍的なものであることが望ましいと思いますが、時と共に変わるのは当然です。

これは企業にとっての経営理念と同様です。トヨタもパナソニックも刷新しています。そこに事実に反することがあれば改めるべきではないでしょうか。嘘を信じろというのは無理があります。

では、何をどのように改めるのかということになりますが、現状では、現行の憲法に対して自民党の改憲案があります。

これを元に検討をしてみました。

各条文ごとに、現行法、自民党案、私案、その理由を記載します。

第11条 基本的人権の享有
(現行)

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。
この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

(自民党案)

国民は、全ての基本的人権を享有する。
この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

(私案)

国民は、すべての基本的人権を享有する。
この憲法が現在および将来の国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。

(理由)

1節は、自民党案の言い回しの方が、第三者から与えられるという受け身よりも、主体的でよい。

2節は、子孫にまでこの権利があることを明確にするため、「現在及び将来の国民」という表現を残した方がよい。

第12条 国民の責務
(現行)

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

(自民党案)

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。
国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

(私案)

この憲法が国民に保障する自由および権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
国民は、これを濫用してはならず、常に自由には責任が伴い、また権利には義務が伴うことを自覚し、公益を保持しなければならない。

(理由)

自民党案がわざわざ受け身の表現に変えている意味がわからないため、1節は現行のままでよい。

2節は自民党案の自由と責任、権利と義務の自覚はよいが、「公の秩序」は疑問が残る。徴兵制に応じることが公の秩序だと言われたら抗えない。

第13条 人としての尊重等
(現行)

すべて国民は、個人として尊重される。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

(自民党案)

全て国民は、人として尊重される。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

(私案)

すべて国民は、人として尊重される。
生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については、公益に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。

(理由)

1節の「個人」→「人」は自民党案の方がよい。

2節の「公の秩序」は疑問である。何を以て「正義」とするのかと同様。

第14畳 法の下の平等
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
(自民党案)

全て国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障害の有無、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

華族その他の貴族の制度は、認めない。

栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

(私案)

すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、障がいの有無、社会的身分、経済力、雇用形態または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。

いかなる貴族の制度も認めない。

栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄誉、勲章その他の栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限る。

(理由)

1節は、自民党案で「障害の有無」が加えられているが、私案では「経済力」「雇用形態」を加えた。所得格差是正を明確にしたい。

2節は、華族もなにもない。すべて認めない。

3節は、自民党案では「いかなる特権も伴はない」を削除しているが、現行どおりでよい。一方、「いかなる特権も伴はない」のであるから、「一代に限り、その効力を有する」は矛盾する。効力はない。

第27条 勤労の権利及び義務等
(現行)

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

児童は、これを酷使してはならない。

(自民党案)

全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。

賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。

何人も、児童を酷使してはならない。

(私案)

すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2
賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
3
何人も、児童を酷使してはならない。

(理由)

自民党案がよい。その他の条文同様に「全て」→「すべて」と平易な方がよい。

第28条 勤労者の団結権等
(現行)

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

(自民党案)

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。
この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。

(私案)

勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利を保障する。

公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部または一部を制限することができる。
この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。

(理由)

1節は、自民党案でよい。

2節は、日教組を想定しているのだろうか。自衛隊、警察、消防などもストライキなどは許されない。もう少し表現を練ったらどうか。

全条文に共通して言えることは、中学生でも理解できるように可能な限り平易にすべきです。「全て」→「すべて」、「又は」→「または」、「及び」→「および」は漢字にする必要は感じられない。開いた方がよいと思います。

さて、いかがでしょう。9条ばかりではなく、人材サービス業界に携わる立場で、何が日本国民にとって大切か考えてみませんか?

自民党だけでなく、改憲を考える与党にはそれぞれ案を出してほしいものですね。

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