こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

本日、6月5日付で労働政策審議会から「時間外労働の上限規制等について」建議がされましたのでお知らせします。

上限は年720時間

建議では「時間外労働の上限規制」「勤務間インターバル」「長時間労働に対する健康確保措置」「その他」で構成されています。

「時間外労働の上限規制」については、月45時間、かつ、年360時間とすることが適当とされ、特例の場合を除いて罰則を課されることになります。

特例として、臨時的な特別の事情がある場合は、労使協定を結んでも年720時間を上回ることはできないとされています。月平均では60時間までということになります。

また、720時間以内であっても以下の規制がされます。

  1. 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で 80時間以内
  2. 休日労働を含み、単月で100時間未満
  3. 原則である月45 時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回まで

筋書きどおりの結論

…と読んでみると、結局、大筋は本年3月13日に、経団連と連合が合意した「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」の筋書きどおりということになります。

これに加えて適用除外についても言及され、「自動車の運転業務」「建設事業」「新技術、新商品等の研究開発の業務」「厚生労働省労働基準局長が指定する業務」「医師」について対象とされています。

また、労働基準法に基づく新たな指針を設けることも示されており、、行政官庁が使用者や労働組合等に必要な助言・指導を行えるようにすること、休日労働の抑制などもこの指針に含まれることになりそうです。

なお、代休、健康診断、年次有給休暇の取得、相談窓口の設置、配置転換、産業医の保健指導など健康確保措置も併せて求められることになります。

インターバル規制

「勤務間インターバル」については、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保をするための努力義務として、新たに「終業時刻及び始業時刻」の項目を設けられることになります。

具体的に何時間という既定はありませんが、常識的には往復の通勤と食事、入浴の時間と睡眠時間と考えると、突発的な業務があったとしても9~11時間は設定する必要があるのではないでしょうか。

一般的にはすでにこの程度のインターバルはあるとは思いますが、明確に規定することはよいことではないかと思います。

健康確保措置

「長時間労働に対する健康確保措置」では、医師による面接指導と労働時間の客観的な把握が挙げられています。

医師による面接指導については、現行では1か月当たり100時間を超えた場合に義務づけられていますが、これが1か月当たり80時間超となります。

労働時間の客観的な把握については、管理監督者を含み、すべての労働者を対象に労働時間を客観的に把握することが求められます。

いまさらタイムカードに戻るということはないとは思いますが、事務系の業務であればPCのログイン、ログオフやセキュリティカードの入退室の記録のようなものが求められるのかもしれません。

人材サービスには追い風

この法律が施行されると人材サービスにとっては追い風となります。

現状では青天井と言われている長時間労働に上限が設定されることになれば、企業は、上限を超えた部分の仕事は止めるか、生産性を上げて業務時間を抑制するか、人員を増やして対応するかしかありません。

人員を増やして対応するためには一時的、臨時的な業務に対応するための人員が必要になります。また生産性を上げるためにはビジネスプロセスを改革し人員構成を改めることも考えられます。

そこでどのようにクライアント企業に対してコンサルティングをできるかが問われることになるのではないでしょうか。

自社のビジネスプロセス改革も

一方、人材サービス企業の自社のビジネスプロセスはどうでしょう。

従来からマッチングなど夜にならなければ派遣スタッフとの連絡がとれないという理由で長時間労働になりがちな人材サービス業ですが、当然、この規制が成立すると自社の長時間労働も抑制しなければなりません。

一般企業と同様に上限を超えた部分の仕事は止めるか、生産性を上げて業務時間を抑制するか、人員を増やして対応するかしかありません。

自社の取り組みについてもどうするかは考えておく必要がありそうですね。

なお、施行については、中小企業を含め急激な変化による弊害を避けるため、十分な準備時間が必要、年度の初日からとすることが適当と言及されていることから、今後の国会での議論にもよりますが、再来年2019年4月1日になることが濃厚です。

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雇用が変わる

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