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「アウトソーシング」のマネジメント

(PDF版:「アウトソーシング」のマネジメント

アウトソーシング市場の伸展

まず、アウトソーシングの市場規模について見てみます。ミック経営研究所の調査による人材派遣を含むアウトソーシング市場は2005年以来この10年間でほぼ倍増し、市場規模は10兆円を超えています。このうち人材サービス産業における請負の規模は2010年時点で約18%を占め約1兆6千億円と見られています。

ちなみに日本人材サービス産業協議会の集計によれば、人材派遣が約6兆3千億円、求人広告が約1兆円、人材紹介が約2千億円で人材サービス産業全体としてはアウトソーシングを含めて約9兆円の市場規模とされています。

また、矢野経済研究所の調査によればIT系BPO(システム運用管理業務)と非IT系BPO(コールセンター系業務、間接部門系業務、直接部門系業務)を合わせたBPO全体の市場規模は、2018年までに年率2.9%程度の成長が見込まれ4兆円を超え、このうち非IT系BPO市場規模は約1兆7千億円と見込まれています。

調査対象の切り口が違うため、明確な市場規模が計れてはいないものの、人材サービス産業で請け負うアウトソーシングの市場規模は概ね1兆6千億円~1兆7千億円と捉えてよさそうです。

筆者が発注者側の立場でコールセンター業務のアウトソーシングを手がけたのが1992年、我が国の人材サービス業界で従量課金による最初のBPOと言われる事務センターのアウトソーシングを立ち上げたのが1997年です。当時はまだ統計データもありませんでしたが、この20年程の間に目覚しい成長を遂げたと言えるのではないでしょうか。

今後のアウトソーシング市場の見通し

今後の見通しはどうでしょうか。矢野経済研究所の2014年の調査によれば、2018年までの年平均成長率は1.2%とされており、非IT系BPO市場は人材不足、マイナンバー制度、東京オリンピックなどを背景に緩やかに成長することが見込まれています。

いくつか理由はあると思いますが、景気回復に伴い企業において人手不足感があるものの、依然として直接雇用に対して慎重になっていること、業務の繁閑を外部人材で対応し正社員をよりコアな業務に配置しようとすることなどが主に挙げられます。これらはアウトソーシング活用の理由として以前からあったものですが、リーマンショック以降さらに顕著になっているようです。また、労働者派遣法の規制強化により企業にとって人材派遣がサービスとして利用しづらくなっているという点も挙げられます。

一方、どのような業務でアウトソーシングが活用されるかというと、事務系にしても製造系にしても、比較的業務量の多い定型的業務ということは周知の通りですが、今後もこの傾向は大きく変わるものではないでしょう。

経理、法務、財務、研究開発などの特定領域や生産現場などで高度な技能を発揮する人材については、一定の指揮命令の元に業務を進めることが求められる可能性が高く、外部人材による人材活用という観点からは、人材派遣で対応することが一般的です。

クライアントとアウトソーサーのフラストレーション

さて、本題です。アウトソーサーの皆さんから、「受注したものの儲からない」「生産性があがらない」「マネジメントや運用が大変」「そもそも、どうしたらよいか分からない」などの声をお聞きすることがあります。逆にクライアント企業の皆さんからは、「コストが下がらない」「手間がかかる」「柔軟性がない」「こんなはずじゃなかった」と、双方がフラストレーションを抱えている状況が多く見受けられます。

多くのアウトソーサーが上手くいかないと嘆く根幹は何かというと、クライアント企業がアウトソーシングの検討をする際、対象となる業務をきちんと整理をしていなかったということから間違いが始まっています。そして、何をもって成果物(仕事の完成)とするのかが曖昧なままRFP(提案依頼書)が作成され、アウトソーサーがこれをそのまま受け取ってしまうのです。

業務の主体はあくまでもクライアント企業にあるので、クライアント企業の責任は重いということになるのですが、一方、アウトソーサーはプロとして提案をする前にこれらのことを十分に確認しておくことが求められます。クライアント企業に訊きづらいという気持ちはわからないではないですが、受注後に円滑な運営をするためには最初が肝心です。

もう一つは、人材サービス企業が人材派遣からアウトソーシングへの移行を安易に提案してしまうケース。クライアント企業からするといずれも間接雇用であり、外部人材の活用という点で何かが大きく変わるものではないように感じられるのでしょう。営業担当者の熱意に心が動くということも多いのかも知れません。しかし、ここにはサービスの本質として指揮命令の所在が異なるという非常に大きな違いがあります。頭ではわかっていたとしても、実際には委託者、受託者の双方ともにこれを軽視していることから間違いが始まります。

いずれにしても、すでに請け負っている業務の運営が上手くいっていないとするならば、入り口まで遡って見直しをかけないと本質的な解決は難しいと言えるでしょう。

経営の視点で適否を見極める

それでは、どうしたら上手くいくのかということを紐解いてみましょう。BPOの草分けとしてアウトソーシングに携わった筆者の経験からここではコールセンターや事務センターを念頭に置きます。適切に運営するために企画、運用、管理という三つのフェーズがあるという点では他の業務を請け負う場合でも大きな違いはないと考えています。これら三つのフェーズがきちんと機能してこそ、クライアント企業からの期待に応えられる運営につながるということを前提にまずは企画のフェーズから話を始めます。

市場規模が膨らんでいるということは、当然、発注側の企業に何らかの期待があるわけですから、まずクライアント企業から何を期待されているのかを明確にする必要があります。概ね、コストの削減、業務の効率化、固定費の変動費化、専門性の向上、コア業務への集中、リスクの分散、サービスの向上、付加価値の創出、人材不足の解消、新規事業への対応といったところでしょうか。クライアント企業にとって理由はまちまちです。

本来は、アウトソーシングを検討する時点でクライアント企業が考えることではありますが、そもそも社内でやるべき業務ではないのか、アウトソーシングできる業務なのか、アウトソーシングの方が効果を期待できるのか、社内にその業務をできる人材はいないのか、社内の負担が増えることはないのかなど、クライアント企業の経営の視点で見極めることが重要です。

提案をする前に考えるべきこと

アウトソーシングに適しているかどうかは、いくつかの切り口で判断する必要があります。まず、すでに述べた事務系、製造系の定型業務は今後も人材サービス企業の皆さんが受注する可能性の高いものですが、業務の種類と量の関係を考えると、一般的には以下のように考えられます。

業務の種類と量 適否 考え方
種類が少なく大量 アウトソーシングに最も向く領域です。ただし業務フローによっては結果として業務の種類が増えてしまい効果が得られない懸念もあります。事前の業務設計が非常に重要です。
種類が多く大量 業務量が多いという点では向いていると言えますが、一度に請けてしまうと混乱が生じます。事前の業務設計の時点での優先順位づけや運用の状況を見ながら順次請けることが必要です。
種類が多く少量 適しているとは言いがたいものの、多くある種類の業務の中から共通した業務だけを部分的に抜き出すことは検討の余地があります。
種類が少なく少量 × 業務設計にかかる時間や、指揮命令の柔軟性などの観点からアウトソーシングには向きません。人材派遣の領域です。

つぎに、業務の専門性と継続性(期間)の関係で考慮すると一般的には以下のようになると思われます。

業務の専門性と継続性 適否 考え方
専門性が低く継続的 労働集約的な業務という観点で非常に向いていると考えられます。ただし人材の確保がキーになります。業務内容を勘案し人員配置ができそうになければ要注意です。
専門性が低く短期的 簡単なマニュアル程度で短期間に立ち上げることが出来る業務ならばよいですが、プロセスが多くなると生産性が合わないことを考慮しなければなりません。
専門性が高く継続的 業務プロセスとマニュアルの完成度が重要です。そして他の業務以上に人選の適切さと育成が求められます。このパターンで成功できれば理想的です。
専門性が高く短期的 × アウトソーシングには向きません。業務設計にかかる時間や、指揮命令の柔軟性などの観点から人材派遣で対応するべきです。

いずれにしても、業務内容、業務量、求められる人材や人数などによって効果が大きく異なるので、クライアント企業に提案をする前に請けるべきかどうかの判断をすることが必要です。請けてから考えるのは非常にリスクが高いと言えるでしょう。間違っても流行でアウトソーシングの提案をしても上手くいかないのは言うまでもありません。

事前のシミュレーションが必須

アウトソーシングの運営を円滑に行うためには経営感覚が必要です。まず、クライアント企業が業務をアウトソースする目的は何か、その目標は何か、それを支える価値観は何かということから始まり、どのような戦略を策定するのか、どのような戦術や体制で遂行するのか、人材の配置や育成、評価はどうするのか、PDCAを回す仕組みをどう埋め込むのかとまさに企業経営と同じです。営業担当者の勢いで受注するだけでは上手くいかない非常に難しいサービスであるという認識を持つことが求められるのです。

利益創出の観点で言えば、これらの運営に関するコストはすべて事前に織り込むという経営感覚も必要ということです。よくある失敗は業務の運用の部分だけを見てコスト計算をしてしまうことです。例えば、人件費に焦点を合せると、打合せや教育研修などに費やす時間はすべてコスト(業務の生産性を上げるための投資とも言えますが)として算出しておかなければ、利益が出ないのは当たり前です。業務に当たっては人が行うことですからどうしても揺らぎもありますし、歩留まりも考慮に入れなければなりません。

コスト削減を目的としているクライアント企業の場合は少しでもコストを下げたいという意識が働くのは当然なので、このようなコストを計上せずに見積もりを提示する事業者を選定するということも有りがちかも知れません。受注したいという一心で敢えて計上しないということもあるのかも知れません。

しかし、安易な見積もりによって受注すると多くの場合、運用がおぼつかなくなり両者共に後悔します。中には安易な見積もりにより両者のいずれかが圧倒的に利益を得る、あるいは損失を被るというようなこともあるかも知れませんが、長い目で見ると結局いずれかが破綻することになりかねません。事前にきちんとシミュレーションをしながら、その意図をきちんとクライアント企業に説明し理解を得ることが結果としてWIN-WINにつながります。

業務範囲と成果物の特定から業務設計

アウトソーシングの最も重要な要件として業務遂行ための指揮命令をアウトソーサーが行うという大前提があります。従って対象となる業務の全体像をフローチャートとして可視化し、その全部もしくは一部について自らの指揮命令で業務を遂行できるかどうかを見極めることが非常に重要になります。当然ながら自らの指揮命令で業務を遂行できる部分が請け負う業務の対象範囲となります。

フローチャートを作成するときに有りがちなことは、最も順調に業務が進むことにしか目が向かず、イレギュラーな業務を見落としてしまうことです。決められたことを決められたように業務を行えばその業務が完結するようこともあるとは思いますが、目を向けなければならないことは業務のプロセスの中で何らかの判断が求められるかどうかです。

判断が求められるということは何らかの指揮命令が必要ということにつながるので、これを見逃してはいけません。アウトソーサー側の管理監督者の指揮命令のもとにすべてが完結するのであれば問題はありませんが、これが曖昧なまま業務を請け負ってしまうと適正な生産性を把握できずにイレギュラーなコストが多発することになるばかりか、労働者派遣法上、違法につながる可能性が高くなってしまいます。

従って、ある業務が多くの判断を必要とする分岐を経ながらいずれの分岐も最終地点に帰結するよう、その判断の分岐点をきちんと見極めたうえで精緻なフローチャートを作成しなければなりません。業務の範囲はどこからどこまでなのか、何を以って成果とするのかを明確にすることはアウトソーシングを請けるにあたって非常に重要であるとの認識が必要になります。筆者の経験から申し上げると、アウトソーシングの成否を大きく分ける大きなポイントの一つはここにあると言えるでしょう。

人材派遣とは全く違うビジネスモデル

人材派遣の場合、労務の提供に対する対価として報酬を受けますが、アウトソーシングは、仕事の完成を目的としているため、仕事を通して創出されたアウトプットの対価として報酬を受けることになります。人材サービスに携わる皆さんは当然これらのことは頭では理解されているのだと思いますが、実際にはなかなかピンと来ていない方も多いように思います。

つまり、人材派遣の場合は、就労する派遣社員が増えれば増えるほど売上が上がる仕組みになっていますが、アウトソーシングの場合は、いかに労働生産性を高め少ない人件費で成果を上げるかが利益につながるかということです。請け負った業務の量が増えることや当初請け負った業務以外に新たな業務を請け負うことができれば売上につながりますが、そうでもない限り少しでも少ない人数で運営できるかどうかが利益率に大きく影響するのです。

コールセンターのインバウンド業務のように入電がなくても受電できる体制がなければ成り立たない業務や企業の受付業務のように来訪者がなくてもそこで待機していなければ成り立たない業務の場合は、人数を減らし利益率を向上させることは難しいと言えます。当然これらは「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)」とこれに関する疑義応答集の要件を満たす必要があり、「人数×時間×単価」ではなく包括的な契約形態により業務遂行を満たすことで仕事の完成となります。

自らの企画または専門的技術や経験に基づいて、適切な業務管理や教育訓練をすることで人件費を調整し利益率を向上させることが可能な場合もありますが、一方、クライアント企業によっては一定の業務をコアのビジネスから切り出し、単なるコスト削減を図るだけでなく固定費から変動費へ転換させたいというニーズもあり、この場合は一気に難易度が高くなります。

従量課金によるアウトソーシング

日本の人材サービス産業で初めてBPOに従量課金の制度を持ち込んだのは筆者ですが、現在、BPOで流通している「従量単価」という言葉は筆者が電気通信事業者に勤務していたときに、3分10円の電話料金が従量課金であったことからこのように命名したものです。

要するに量に従って単価を乗じて支払う「数量×単価」の仕組みであり、クライアント企業から見るとサービスを利用した分だけ支払いが生じることになります。これにより管理会計上も商品・サービス別、部門別など間接費を直接費化して計上することができるため、採算制の把握につながり、適切な事業判断ができるというメリットがあります。アメーバ経営のお膝元ならではの発想でした。

一方、アウトソーサーの立場から見ると従量課金で請け負うことはかなりハードルが高く、特に業務の繁閑差が大きい場合や業務フローが複雑な場合は請け負う前に十分な検討が必要になります。場合によってはクライアント企業との契約内容に業務量の増減についての特約条項を付けるなど対策も必要になります。

クライアント企業にとっても従量課金の仕組みはアウトソーサーへの管理に手間がかかるため、一定量を超える大規模な業務でなければそのメリットを得づらい側面もあります。必ずしも従量課金が良いとも言い切れないので、事前によく相談することが必要でしょう。

クライアント企業の経営理念、戦略の理解

企画段階ではどうしても業務の中身にばかり目が行きがちですが、忘れてはならないのはクライアント企業の経営理念や戦略などへの理解、企業風土や文化などとの相性です。

どのような業務を行うにせよ、経営理念や戦略から外れることは業務に矛盾が生じ、あるべき成果につながりません。アウトソーシングを請ける前はもちろん運用が開始されてからも経営理念や戦略との整合性を常に意識しながら、疑問があればクライアント企業に確認を求める必要があります。それによりクライアント企業への業務改善の提案もしやすくなるだけでなく信頼を高めることにもつながります。

また、企業風土や文化について理解しておくことは、業務を運用するSVやスタッフの人選やその後のモチベーションに大きく影響することを覚えておかなければなりません。特にインハウスでの業務ではクライアント企業からの直接の指揮命令がないにしても雰囲気などの要因で業務に優劣が生じる可能性が高くなるため事前に見定めておくことが必要です。

アウトソーシングに限った話ではありませんが、クライアント企業との協力関係をどう築けるかが運用上、非常に重要なことになります。

マネジメント力が運用の決め手

運用の話に進めましょう。クライアント企業の立場から言うと、アウトソーサーを選定する際、マネジメント力を重視することが多いと言われますが、逆にアウトソーサーはマネジメント力に長けていなければならないということになります。

その意味では、運用はSVの力量によるところが非常に大きいと言えます。SV自身が前述したような経営感覚を持っていることと同時に、多くのスタッフを統率するリーダーシップやコミュニケーション能力、論理的思考、さらには情報を知恵へ換える能力が求められます。SV次第で現場の運用の成否が大きく左右されるという観点からSVの人選もアウトソーシングの成否を分ける大きなポイントの一つになります。

また、よくあるアウトソーサーの失敗は、営業担当者がSVに現場を任せっきりで業務の内容を把握しないままSVに責任を押し付けるというパターンです。すでに述べたように運用が始まる前の企画段階からその案件が始まっていると考えれば、SVに丸投げという選択肢はないはずです。

SVがクライアント企業と業務を遂行するスタッフの板ばさみになるというような状況を作ってはいけません。営業担当者はSVと二人三脚で業務と向き合い、必要に応じてSVを側面から支援し、クライアント企業への提案や交渉の場面では営業担当者が前面に立つことも必要になります。

システムや技術の要件の明確化と適切な人材配置

設備や機器を使って業務を行うケースも多いと思いますが、その場合、システムや技術の要件も明らかにしておく必要があります。例えば、事務系であれば一定のPCスキルが求められることも多く、当然ながら、相応の人材配置が必要になります。

人材サービス企業にありがちな誤りは、人材派遣で他のクライアント企業の要求に対応しづらい派遣社員を自社が請け負った案件に配置してしまうという例です。もちろん、マッチングの問題ですから請け負った業務に見合った人材配置であれば良いのですが、そうでなければ自らの首を絞めるのは明らかです。

指揮命令の所在がクライアント企業の手を離れたアウトソーシングでは、派遣社員以上に自発的に行動できる人材が必要になる場合も多くあることから、採用に当たっては求める人材像を明らかにした上で、適切な人材配置をすることが必要です。アウトソーシングが企業経営と同じという観点から、いかに適切な人材を採用するかということは、運営の成否を決める大きな要因となります。

一見、当たり前のように思えるとは思いますが、実際には適切な人材配置ができていないために労働生産性が上がらず、結果として業務の成果が創出できないということも多く見受けられます。採用時の人材配置ももちろんですが、適宜、教育、訓練や人員の見直しをすることが必要です。

業務の標準化とマニュアル化

業務を均一に遂行し求められる成果物を創出するためには、業務の標準化は欠かせません。クライアント企業による典型的なアウトソーシングの活用は、定型的な業務を大量にこなすことを求めるものが多いと思いますが、当然ながら人員数もそれに応じたものになります。

また、シフトによる人員の入れ替えや人々の働き方の多様性から、携わる人の延べ人数も多くなることもあるのではないでしょうか。一つの業務に対して誰がやってもプロセスが同じという状況を作り出さなければ、成果物自体がまちまちになりクライアント企業のニーズを満たすことができません。

まず、業務プロセスを標準化することが必要となりますが、これについてはすでに企画段階の業務設計で一定レベルまで掘り下げているはずですが、実際の運用のためには標準化されたプロセスを誰が見ても同じように理解できるよう分かりやすいマニュアルに落とし込むという作業が必要です。

未経験者がマニュアルを見たとおりに業務を行えば、誰でも業務が完成するというものが理想となります。業務の全体像が俯瞰できるような工夫や判断基準などが明確になっていることが必要です。また、専門用語や業界用語はもちろんですが、クライアント企業独自の言葉も含め、誰にでも分かるよう表現の統一や丁寧な説明も必要になります。業務の均一性を保ち、生産性を高めるためにも精度の高いマニュアルを用意することが必要です。ただし、マニュアルだけに頼りすぎると働き手のやらされ感が強くなってしまうため、実際の業務に照らして改善提案ができるような機会を持つことも必要になるでしょう。

働きやすい職場でモチベーションアップ

業務を行うのはもちろん人ですから、人のモチベーションを高めることは非常に大切です。決められたことを決められたようにやればよいというような接し方ではモチベーションが上がるはずがありません。働く人びとにとって働きやすい職場づくりをすることもアウトソーシングの成否を分けるポイントとなります。

働き手の定着化や戦力化という観点からもモチベーションの向上を図るための施策は重要です。しかし、モチベーションと一言で言っても人によって多種多様です。業務の意義や内容はもちろんですが、目標、評価、待遇、周囲との人間関係、職場環境などありとあらゆることがモチベーションに影響を与えます。

簡単なことで言えば、きちんと挨拶をする、名前を呼び人格を認める、疑問に対してきちんと答えるという当たり前なコミュニケーションだけでも受け手の気持ちは変わります。表彰制度を設けるとか懇親会を開くというような演出上のこともありますが、案外、基本的なことができておらず、小手先のことでモチベーションを上げようとしても上手くいかないということが多いようです。

これらはアウトソーシングに限った話ではありませんが、重要なことは、働く人びと個々に対してその存在を認め、尊重することに尽きると言ってもよいのではないでしょうか。人材サービス業ならではと言われるよう人のモチベーションの向上について検討することは非常に意義があることと思います。

物理的な環境改善で生産性や品質の向上

働きやすい職場づくりに通じることではありますが、物理的に職場が働きやすいかどうかということも十分考慮しなくてはなりません。人間は環境の動物と言われますが、簡単に言えば、人は良い環境のもとでは良い方向に向かい、悪い環境では悪い環境に向かうということです。

まずは、5S。整理、整頓、清潔、清掃、躾けがきちんとされているかということが重要です。雑然とした職場では雑然とした業務が当たり前になります。環境美化やモラル向上などが挙げられますが、間接的には、効率化、不備の防止、安全衛生などの効果も期待できます。整理整頓された職場では、問題点なども顕在化するため改善も進みやすくなります。

特にインハウスのアウトソーシングや人材派遣では、クライアント企業の社員との差別的な扱いもしばしば問題になります。業務上の責任の範疇で区別があることはあるとは思いますが、例えば、社員食堂や休憩室が使えないとか、ロッカーがないなど、本来の業務とは関係ないところで差別が生じることは避けなければなりません。場合によっては、クライアント企業への提案、交渉も必要になってくることもあるでしょう。

また、コールセンターや事務センターでよくある話ですが、トイレの数が足りないとか、電子レンジや冷蔵庫が使えないなどといった業務に直接関係ないことにもきちんと対応することもモチベーションを高める上で大切になります。そのような職場環境にまで気配りできるアウトソーサーは働く人びとからも信頼され、結果として業務の生産性や品質の向上につながります。

チームワークの向上で業務改善

多くの業務でチームワークが必要と言われています。しかし、その「チームワーク」という言葉自体が人によって捉え方が違うということを考えたことはあるでしょうか。実は、結構、曖昧です。

多くの皆さんはご自分が考えるチームワークを是としていると思いますが、世代間や性別によってもチームワークの捉え方が違うのです。まずは、アウトソーシングの現場の皆さんも含めて、チームワークとは何かということから話をしてみるとよいと思います。

「一丸となって」とか「みんなで」というような、ともすると、事の良し悪しにかかわらない「一蓮托生」や「なかよしクラブ」に近い解釈も多いと思いますが、本来は、何らかの目標を達成するために、それぞれの役割を分担し相乗効果を創出しながら協働するのがチームワークです。

そのような共通認識を持った上で議論をすると、それぞれの業務で得られた暗黙知を引き出すことができるようになります。つまり、現場にある真実を引き出すことで、マニュアルや教育訓練では得られない効果的、効率的な業務改善につながるということです。また、相互に学ぶ機会を持つことで気づきが生まれるだけでなく、自ら参画することで満足度も上がります。このような角度からチームワークを考えてみるのはいかがでしょうか。

働き手の意識改革

人の意識はなかなか変えられないものです。他人が変えろと言っても、本人がその気にならない限り変わらないと言ってもいいでしょう。しかし、請け負った業務の生産性や質を向上するためには、そこに関わる人びとの意識が高いものでなくてはなりません。

アウトソーシングの現場で意識の上がらない多くは、その業務の目的や目標が十分に共有されていないことに端を発していることが多いように思います。その業務は誰のためにどのように役に立っているのか、その業務をきちんとやることでどのように評価されるのか、また何をやってはいけないのかということが明確になっていなければなりません。単なる業務を行うための作業員ではなく、一つの業務を行うメンバーという視点を持つことが必要ではないでしょうか。

では、どうしたら、メンバーとしての参画意識を持たせることができるでしょう。方法はいろいろあると思いますが、一つの例として、何らかの課題に対して解決のためのプロジェクトチームを設置し、その中で自発的な発言を促すような環境を創るというのはいかがでしょう。小さなことでもそれぞれの役割を明確にして責任感を持たせるということも効果があるかも知れません。

いずれにしても大切なことは、その業務に関わる人びとが主体的に参加している状態を創り出すこと、それにより関わる人びとの意識を業務に向けるということであり、そのためのマネジメントが重要なものと言えるでしょう。

人材育成と公正な評価

アウトソーシングで請けた業務は、その多くを契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど、いわゆる非正規雇用の人びとを中心として運用することが多いのが一般的です。そのような働き手を育成することは、業務の品質を高め、効率を向上させるだけでなく、キャリア育成支援にもつながります。

外部人材だから教育や研修を行うのはもったいないなどという心の狭い考え方では、ゆくゆく人が集まらなくなるという悪循環を生みます。一定の雇用期間であっても人材育成を疎かにしないことは、仮にその業務での契約が終了しても「他の機会があったら、またよろしく」と互いに言えることになり、そような関係を作っていくことは非常に大切です。

また、人材育成と同時に公正な評価をすることも必要です。人は自分がやったことを正当に評価されることを求めます。もちろん、その評価が報酬に結びつけば言うことはありませんが、仮に報酬につながらないとしても、良いこと悪いことをきちんとフィードバックするだけでまったく違う結果をもたらします。

いずれにしても、外部人材だからと言って単なる作業員としての接し方をしているだけでは、業務の品質も効率も上がりません。少なくとも縁があって一緒に仕事をしている限り、仲間としてきちんと育成し、評価をすることが必要ではないでしょうか。

人を活かす適切な生産性管理

管理の話へ話を進めます。アウトソーシングの運用を成功させる大きなポイントとして生産性の管理は最も大きな要素になります。製造系ではある意味当たり前かも知れませんが、BPOにおいても同じことが言える業務が多いのではないかと思われます。

多くの場合、働く人びとから見ると自分が管理されているような気持ちになり、拒絶感が生じることもあるのですが、生産性の管理は個人の能力を測るためではなく、組織力を向上させるためのものと捉えることが必要です。

具体的に何を管理するのかというと、誰が、何を、何件、どのぐらいの時間でということになります。この生産性をきちんと管理することでいろいろなことが見えてきます。実際にどのようにこれらを計るのかは業務の内容によっても違うのでここでは触れませんが、単純にその業務をやっている人のやる気の問題なのか、やり方の問題なのか、仕組みの問題なのか、マネジメントの問題なのかなどが浮かび上がってきます。当然、その問題を改めれば生産性が上がるわけですから業務の効率や品質が上がりやすくなります。正しい業務管理をすることはアウトソーシングにとって必須です。

筆者の持論ですが、人は管理できません。人には意思や感情があるからです。重要なことは、人を取り巻く時間、モノ、お金、情報、仕組み、環境を管理することで人を目的のために動機付けるという考え方ではないでしょうか。人事管理、労務管理という言葉はありますが、これらも人そのものを管理しているのではなく、人にまつわる制度を管理していると捉えると分かりやすいと思います。管理という言葉はややもすると堅苦しいイメージがあるかも知れませんが、きちんと管理することで人が生きてくると考えた方が前向きです。

業務改善で収益性の向上

前述のように誰が、何を、何件、どのぐらいの時間でと日々、生産性を管理していくうちにその値が変動することが多いことに気づくことでしょう。これをきちんと毎日記録し、その変動の理由を知ることが必要です。それにより必ずギャップを発見することになるはずです。

業務を行う人によって変動がある場合もあるでしょうし、対象となる業務によって変動の幅が異なることもあるでしょう。もちろん、同じ業務の件数で時間の長短が分かれることもあるはずです。そのギャップを発見し、原因を特定することこそ改善のタネになるのです。

いつもより時間がかかった、いつもより早く終わったということをつぶさに分析することが必要です。たまたま時間がかかった、たまたま早く終わったということはないはずです。そこには理由があるのです。その理由を突き止め日々の記録に情報として書き加えることで、生産性に影響を与える原因を特定することができます。そして、特定した原因をめぐり実際に業務を行っている人びとからヒヤリングをするというサイクルが必要です。

アウトソーシングは、生産性が上がれば上がるほど収益性も向上することが多いため、漠然と業務を遂行するのではなく、弛みない業務改善の積み重ねが大きな成果につながると考えることが必要です。

イレギュラー処理の低減

業務設計の項で、フローチャートを作成するときに、最も順調に業務が進むことにしか目が向かず、イレギュラーな業務を見落としてしまう、ということを述べましたが、どんなに設計時点でイレギュラーな業務を洗い出しても、実際の運用になるとさらにイレギュラーなケースが見つかるものです。

イレギュラーな業務、つまり最も順調に進む業務以外の業務を放置してしまうと生産性が著しく悪化していきます。例えば、経費の伝票入力の業務をイメージしてもらえれば分かると思います。一般的に日付、金額、内訳、支払先、支払日、経費負担元のようなことを入力することになると思いますが、この入力自体は簡単です。慣れた人なら数分もかからないでしょう。しかし、仮に支払日が記載されていなかった場合はどうでしょう。伝票の発行元に確認しない限りこの業務は足踏みをしてしまいます。順調に進む業務と比較して十倍以上の時間がかかってしまうのではないでしょうか。

このようなイレギュラーな業務に費やす時間こそが生産性を低下させる元凶なのです。時は金なりと言いますが、アウトソーシングこそ時は金なりの連続だと考えるとイレギュラー業務は少なければ少ないほどよいということがよくわかると思います。

このようなイレギュラーな業務が見つかったときには、請け負った業務の前工程まで遡って改善をしていくことが必要です。時にはクライアントに前工程での改善提案をしていくといったことも必要になるでしょう。

ミスの撲滅

イレギュラー業務と同様にミスによる生産性低下も見逃せません。人はミスをするものということは前提になりますが、そのミスをいかに低減させるかということは業務の品質だけでなく、生産性にも大きく関わってきます。

一般的にミスが発生するとそのまま何らかのトラブルを免れることは極めて稀です。ほとんどの場合、お客さまに迷惑をかける、社内の手続きが滞るなど、ミスを起こした側だけでなく対象となる人、モノにもその影響が及んでしまいます。

少なくともやり直しという二度手間が発生し生産性が低下します。重度のミスが発生した場合はクレーム対応、損害賠償、最悪の場合は商品やサービスの取引そのものを失う事態にも発展しかねません。それらに費やす時間はミスのない業務に比較すると計り知れないほど多大なものとなってしまいます。

事前に極力ミスのないような業務設計をすることは言うまでもありませんが、日ごろから小さなミスでも見逃さず、常に業務改善を行うことが必要です。ハインリッヒの法則によれば1件の重大なミスの背後には300件の軽微なミスが隠れているとされています。ダブルチェック、手順の見直し、マニュアルの修正、再教育、職場の健康など、取り返しのつかないようなことにならないよう随時対策を打つことが求められます。

 IT、機器の活用で人件費ゼロ部分の構築

アウトソーシング導入のメリットとして、業務をまとめるからこそ業務の無駄が浮かび上がるという側面があります。一件一件の業務では見落とされがちだったことも業務量がまとまれば一気にその無駄を取り除くことも可能になることがあります。

分かりやすい例を挙げます。例えば、郵便物を一件一件開封し、そこに同封された書類に基づいて業務を行うような場合、郵便物の開封そのものは取るに足らない作業に思えるでしょう。しかし、これが百件千件というまとまった量になった場合はどうでしょう。封筒をハサミで開封する作業がどれだけ無駄な時間を費やしているか実感するはずです。当然、この無駄な時間をどう省くかということが課題になります。

同じようにPCを使って業務をしている場合、毎回同じことの繰り返しという作業も多くあるはずです。一定の条件を満たした業務については一括して処理をするようなシステムがあれば同じことの繰り返し作業は激減します。

製造系では生産技術という分野がありますが、BPOであってもどうしたら業務が早く確実に遂行できるのか、人が関わる部分をどれだけ短縮できるのかといった観点はまったく同じです。日ごろの業務をそのまま何の疑問も持たずに漫然と行うだけではいつまでたっても生産性は上がりません。規模の小さな業務であればPCでマクロや関数を利用するとか、規模が大きくなればシステム改善要求を出すというような対応を考えることも必要でしょう。

業務量の増加による生産性の向上

これまで述べてきたような業務改善が進み、業務が安定してきた段階で考慮すべきことがあります。アウトソーシングを請けるにあたっては、クライアント企業のすべての部署から一度に業務を請けることはあまりないのではないでしょうか。多くの場合は一部署からの受注から始まることが多いと思います。

一般に同様の業務を大量に処理するような場合、量が多いほど生産性が上がります。当初、一部署から請けていた業務と同様の業務、または類似した業務をクライアント企業の他の部署からも請ける働きかけをすることにより業務量が増加し生産性が向上することにつながるため、クライアント企業への働きかけをすることも価値のある取り組みとなります。いわゆるシェアードサービスということになりますが、クライアント企業とそのグループ企業が対象になります。これが昂じてくるとオフショアという話になるのだと思いますが、余程規模が大きくない限りメリットを出しづらいと考えられるため筆者としてはあまりお勧めしません。

クライアント企業へのシェアードサービスの働きかけをするためには、それまでの業務における信頼とクライアント企業との関係性が十分に構築されていなければなりません。アウトソーシングの現場ではクライアント企業との接点を持つのはSVということになりますが、ここでもSVの力量が問われることになります。

ただし、SVに関する人件費はクライアント企業が負担していることになるので、SVが表に立ってクライアント企業に対して営業活動を行うことは本来筋違いのことと捉えられる向きもあるため、新たな受注に関する交渉は、あくまでも営業担当者が表に立ちながらSVが支えるという構図の方が望ましいと言えます。

納期に制限がない業務の受注

少し話を戻します。BPOを請けていると業務量の変化に困らせられることがあるはずです。特に従量課金で直接的に人件費に響くこととして、一定程度の業務量を見込んで人材を確保しておきながら、見込んだ業務量よりも少なかった、あるいは多かったという場合です。

少ない場合は人手が余ることになり成果物がないにも関わらず人件費だけが費やされるという状況が生じてしまいます。多ければ時間外労働の割増賃金や場合によっては人員の補強といった余分なコストがかかります。つまり、業務量は事前の見込みよりも多くても少なくても収益に影響するということです。

納期が多少前後してもよいような業務の場合は日々の業務の増減を均等化するということも考えられますが、日々、業務を完結していくことが求められている場合は、クライアント企業との間に何らかの取り決めをすることを検討しなければなりません。例えば、クライアント企業から一ヶ月前には当該月の業務量の見通しを通知してもらうということも必要でしょうし、業務量が見込み数よりも少ない場合、多い場合には一定程度の割増料金の設定をするといったことも考えなければなりません。同業務を長期間行っていれば、ある程度の予測はつくかも知れませんが、それにしても業務量の増減はアウトソーサーよりもクライアント企業の方が見通しを立てやすい立場にあるのですから、クライアント企業に発注者としての責任を負ってもらった方が懸命です。

もう一つ、繁閑の穴埋めの策としては、納期にほとんど制限のない業務も同時に請け負うという方法です。企業の中には、「いつでもいいけど、やらなくてはならない仕事」というものも存在しているはずです。簡単な例で言えば、山のように溜まった廃棄書類をシュレッダーにかけるとか、文書整理、仕分けをするというような業務も請けることで、繁閑の波を吸収することができます。アウトソーサーも人を雇用して成り立っているわけですから、請けた業務の中で繁閑の山をなくしていく努力が必要です。

追加業務は別途規定

本来、業務内容は事前に決めた上でアウトソーシングを請けているので、その業務以外は発生しないはずですが、発注元のクライアント企業の担当者とアウトソーサーのSVの関係が良好であればあるほど、つい「ついでにこれも…」という話になりがちです。特にインハウスで業務を請け負っている場合は関係も深くなり、業務の境目が曖昧になるということが生じる可能性が高くなります。

関係性が強固であること自体はよいことですが、安易に依頼する、安易に請けるということを繰り返すと長期的には双方にとってマイナスになります。契約のしかたにもよるのだと思いますが、原則的には当初決めた業務以外は依頼しない、請けないという取り決めをしておくことが必要です。

前述のように生産性の管理をしている場合、「ついでにこれも…」が入ることで何がどのぐらいの時間でということがわからなくなってしまい、管理そのものが成り立たなくなってしまうばかりか、人員配置にまで影響することになるので利益率を圧迫することになりかねません。

それでも、ビジネスですから「ついでにこれも…」に対応しなくてはならないこともあるでしょう。そのような場合は必ず、文書にして通常の業務と別の業務を行うことを明確にすべきです。あくまでも「ついでに」ですから、本来請け負っている業務から派生したものであることが多いと思いますが、これについては改めて契約書に盛り込むことで、むしろ必要に応じて受注を受けるという流れを作るべきです。

情報共有のしくみ

請け負った業務も時と共に変化することはよくあることだと思います。規模が大きくなるとSVからサブSVを通じてメンバーへと情報を流すことになると思いますが、どうしても伝言ゲームで正確に情報が届かないということもあります。シフト勤務などで人の出入りが頻繁であったり、長く働いている人とそうでない人の知識レベルに差ができてしまうようなことは避けなければなりません。

情報がきちんと共有できなければ、業務の均一性が保てなくなり、品質と効率も低下します。誤ったオペレーションでミスも発生します。これまでお伝えしてきたような努力も水の泡です。

常に最新の情報を関わるメンバー全員に的確に伝えることはマネジメント上、非常に重要です。簡単なことであっても書面で配布する、マニュアルを差し替え式のものにするというような工夫も必要です。筆者の場合、イントラネット上に逐次情報を流し、全員が同時に同じ情報を得られる仕組みを作りました。クライアント企業の理解が得られれば、そのような工夫は有効だと思います。

情報が適切に共有されないことは、業務に直接悪影響を及ぼすだけでなく、働いている人のモチベーションにも影響するので、かなり意識をして行うことが必要です。

機密情報、個人情報の保護対策

BPOで一番怖いのは機密情報、個人情報の漏えいではないでしょうか。結論から言うと情報漏えいは物理的に防ぐことはできません。どんなにセキュリティを厳しくしても悪意があれば漏れます。では、どうしたら機密、個人情報の漏えいリスクを極小化できるでしょうか。これにも決定打はありませんが、言えることは基本的なことをきちんと対策するということしかありません。

まず、人の問題です。採用の時点で人として信頼できるかどうかの見極めをすることから始める必要があります。採用が難しいからと言っていい加減に採用してしまうと後々大事に至ってしまいます。採用は慎重にしましょう。また、採用したら、情報管理の重要性だけでなく、業務の目的や意義、情報が漏えいした場合にどのようなことになるかまできちんと教育する必要があります。また、雇用契約書と共に守秘義務契約書も交わすことが必要です。就業中も一定期間に繰り返し意識づけをすることも大切です。

次に環境の問題です。雑然とした職場環境では漏えいの可能性が高まります。悪意がないにしても、ミスを誘発しやすくなるため、常に整理整頓がされている状態を保つ必要があります。また、入室管理などもしっかりすることで、潜在的な意識づけにつなげることも必要です。私物を持ち込まないよう透明のバックだけを持ち込みを許可するようなしくみも有効でしょう。定期的に席替えをすることもよいと思います。基本中の基本ですが互いに挨拶するような風土で、相互信頼の文化を作ることは非常に大切です。

PCを多用することが多いBPOでは、ハードウェアへの対策も必要です。セキュリティ対策をするだけでなく、サーバーなどへのアクセス権限も最低限必要なものに留めるとか、ネット上のクラウドサービスなどへのアクセスを遮断するような対策もしておくとよいでしょう。情報漏えいの原因の約80%は、圧倒的に管理ミス、誤操作、紛失など悪意のないものです。不正アクセスや盗難など外部犯行によるものが10%程度、さらに目的外使用、設定ミス、システムのバグやセキュリティホールが5%程度、残りが内部の犯行です。内部の犯行は日ごろからの意識づけが最も重要になります。くれぐれも情報漏えいが起こらないようしっかりと管理をしましょう。

リスクマネジメント

企業をとりまくリスクは多岐に渡ります。中には情報システムの対策だけしてリスクマネジメントが完了したというような的外れな考えを持つ人も見受けますが、まったくの誤りです。リスクとは、収益や損失に影響を与える不確実な要素であり、事業継続を脅かし、事業目的の達成を阻むすべてのことを指します。「転ばぬ先の杖」と言いますが、何かが起こってから対応をしようとしても手遅れということもあります。

BPOに関連するリスクをピックアップしてみると、概ね以下のようなものが対象になると考えられます。経済危機、産業構造の変化、労働人口の減少、自然災害、テロ、反社会的勢力、不適切情報、社内犯罪、文書管理、備品管理、緊急時対応、職場環境、債権回収、差別、従業員の健康・安全、パンデミック、人権侵害、パワハラ・セクハラ、男女問題、優秀人材の流出、労働力の確保、労働争議、労働災害、労働法制違反、情報漏洩、不正アクセス、システムダウン、ネットワーク障害、ウイルス進入、新規参入者、顧客ニーズの変化、顧客への損害賠償、品質低下、技術力の不足などなど。気が遠くなるほど多くのことを想定しなければなりません。

これらの中でも特に人材サービスの観点で確実に対策を打たなければならないことは、労働法制、人権、人事に関することです。アウトソーサーとしては、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)」に違反しないことは大前提です。いわゆる偽装請負に該当することがないかどうかの確認は絶対です。

「備えあれば憂いなし」です。いずれにしても、あらゆるリスクを想定した上で、それを適切に評価し、未然に対策を打っておくことはアウトソーサーとしても非常に重要な課題と言えるでしょう。潜在的なリスクを識別し、許容限度内に収めておくことで、思わぬことで足元をすくわれることの無いよう万全の態勢を構築することは、クライアント企業から見ても信頼につながるはずです。

クライアント企業の理解獲得

クライアント企業とアウトソーサーは、発注者と受注者の関係にあるため、とかくクライアント企業の方が立場が上という考え方に陥りがちですが、本来は、イコールパートナーであるべきです。いわゆる「業者」扱いをされるということは、まだアウトソーサーとしての力が足りないと考えた方がよいでしょう。

クライアント企業に対してアドバイスができるほどになれば、いつまでも「業者」の地位に甘んずることもなくなります。むしろ、クライアント企業にとってなくてはならない存在にならなくてはなりません。そのためには業務を熟知し、プロとしての期待以上の運営をすることが必要です。

まずは、日ごろの業務を通して、報告、連絡、相談を密にとり、良いことも悪いことも、その原因の究明と改善策についての理解を得ておくことが必要です。本来は、主体となるクライアント企業がその業務については詳しいはずですが、時が経つにつれてアウトソーサーの方が詳しくなってしまうというのはよくある話です。クライアント企業の担当者が代わろうものならなおさらです。

どのような業務をどのように遂行しているのか、問題は何か、改善するためには何が必要かといったことを提案できるようになることでパートナーとしての立場を確立することで、安定的かつ継続的なビジネスにつなげると伴に新たな機会を得られるよう力をつけなければなりません。

営業担当者の立ち回り

SVに任せっきりで営業担当者が業務の内容を把握しないままSVに責任を押し付けることに問題があることについてはすでにお伝えしましたが、これは本当によく見られる問題です。とかく営業担当者は、最初に受注する前までは一所懸命にクライアント企業に提案するのですが、運用が始まってしまうと現場に任せっきりということが多く感心しません。

しかし、実際にはクライアント企業は営業担当者の立ち回りをよく見ているものです。SVは現場のマネジメントをすることが仕事ですから、クライアント企業とアウトソーサーという企業対企業の関係構築は、本来、営業担当者の仕事なのです。

例えば、人材サービス企業がアウトソーシングを請ける場合、自社に登録した派遣社員を請負のためのスタッフとして人選することが多いと思います。雇用契約上は有期雇用の契約社員の位置づけになるとは思いますが、実際にはアウトソーシングの現場と人選をして現場に人材を配置する営業担当者やコーディネーターは、派遣先と派遣元の関係と同じような関係になります。従って、SVが雇用契約上の問題にかかわるよりも、営業担当者やコーディネーターが業務以外の雇用に関することについて対応した方が、現場の運用はスムーズになります。

クライアント企業は、現場のSVがストレスなく業務に専念する方が業務が進むことを理解しているので、SVと営業担当者の責任範囲を明確にすることが望ましいと言えます。これにより業務を円滑に遂行できるようになります。

クライアント企業への利益還元

クライアント企業とアウトソーサーは、ビジネスパートナーとして互いにWIN-WINの関係を保つことが非常に大切です。クライアント企業は、従来の業務からコアな業務だけ切り出す、定型的な業務にかかる人件費のコスト削減を図る、あるいは業務の性質上、専門性のある業務をアウトソーサーに任すなどの目的としてアウトソーシングサービスを利用します。

一方、アウトソーサーは、人材配置や人事上の手続きなど自らの得意分野をもって、クライアント企業の目的を果たすためにその受け皿となりサービスを提供し、最終的に利益を得ることができます。

まさに両者ともにWIN-WINの関係です。もちろん、運用が上手くいかなければ、両者の協力のもとに改善を重ね本来の目的を果たせるようしなければなりませんが、一方、受けた業務についてノウハウの蓄積ができ、生産性を上げることで予定以上の利益を得られるようになった場合は、その利益の一部をクライアント企業に還元するということも考慮するとよいのではないでしょうか。

このことは、クライアント企業との絆を一層、強固なものとし、他の業務を請けることにもつながるでしょうし、何よりも競合他社の参入を防ぐことにもなります。

SVを育成する仕組み

アウトソーシングを事業の柱の一つとして捉えると、複数の案件を同時に運営するようになるはずです。すでに述べたようにSVのマネジメント力が成功への大きなポイントとなることを考えるとSVの育成は非常に重要な課題です。

これまで、一つの案件を想定してお伝えしてきましたが、複数の案件を手掛けているならば、育成も考慮しSVの異動を考えることは有効だと思われます。さまざまな業務の経験、さまざまな業界の経験をすることでノウハウの蓄積が可能となり、それが何よりの強みになります。

人材育成という観点から、一般のスタッフからサブのSVへ、サブのSVからSVへ、さらに難易度の低い案件から難易度の高い案件へ、また既存の案件から新規の案件へと経験を積ませることで、総合的な能力をつけさせることができます。

人材サービス企業ならではの人材育成の場としてアウトソーシングの現場は非常に有効です。そのようなSVを多く育成することでアウトソーサーとしての力もより強いものになるのではないでしょうか。

「人」として

最後に、我が国の産業構造は、少子高齢化、高度情報化、グローバル化の波を受け、否が応でも変革を迫られています。今後、いわゆる正規、非正規といった雇用形態の壁は薄れていくことになるのではないでしょうか。その中で人材サービス企業が自己の持つ強みを生かしてアウトソーシング事業を高めていくためには、単に人材配置をするだけでなく、さまざまな業務や業界における知識、経験、技能を磨き、企画、運用、管理能力を身に付け、人材を育成していくことが重要になってきます。そして何よりも人を人として尊重し、事業を通じて互いに成長していくことを最も大切なこととして事業を進めて頂ければ何よりです。

2016年1月

人材サービス総合研究所

水川浩之

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