少し前のことになりますが、情報誌を作りたいと相談をいただきました。私も以前、広報宣伝に携わり、情報誌も制作していた経験があることから、喜んでお話をさせていただいたのですが、伺ってみるとそもそも「広報」の役割についての認識が…。

まず、「広報とは何か」という話です。少し調べると「一般に広く知らせること」「情報発信を行うこと」となっています。なるほど、たしかに企業の存在を知らせることは重要です。

ただ、ここで重要なことはただ「知らせる」ことが目的ではなく、いつ、誰に、何を、どのように知らせるか。もっと重要なことは、受け手がどのようにそれを感じ、理解し、行動を起こすかということなのです。

広報 - Public Relationsもともと英語でPR(Public Relations)と言われているものが広報です。つまり、公との関係性を築くことが本来の役割です。

新聞や雑誌などのメディアに向けてせっせとプレスリリースを書くことが仕事のようなイメージが強いのかもしれませんが、業務としてそれはごく一部です。そのような業務を指して狭義に「広報」と言っているケースもありますが、本来の解釈としては大きく不足しています。

さて、タイトルにあるPRとアピール(Apeal)の違いですが、発音がピーアール、アピールとよく似ているので混同しやすいですね。

外に向かって何かを伝えることだけを採り出せば、よく似た行動なのかもしれませんが、それでは狭義の「広報」の解釈以上に勘違いになってしまいます。意味として、アピールは「訴える」ことなのでPRとは大分違います。

例えば、Facebookなどでもたまに見かけるのは、「俺ってこんなに頑張ってる」「こんなに仕事できる」「いろんなこと知ってる」「こんなに顔が広い」「私ってこんなにお上品」みたいなこと、これらはアピールですね。

人間だから多少、気持ちを共有したいことはあるとは思います。セールスポイントなり、特長なりを知ってもらわなければ商売にならないことも確かでしょう。しかし、これも度が過ぎると、受け手からすると「ウザい」「痛い」「お前のことなんか聞いてない」となってしまいます。

また、よくあるのが、しょっちゅう送られてくるメルマガ。中身があればよいのですが、自社の言いたいことだけを一方的に送り付けてくるのは、受け手にとってはクズでしかありません。

その結果どうでしょう。本来、受け手との関係性を構築するはずのことが、むしろ関係性ぶち壊しです。

まずは、PRとアピールはこんなに違うということを理解した上で、本来のPR(広報)を考えてみましょう。

本来の広報は、ブランディング、商品・サービスの認知向上、企業イメージの向上、リスクマネジメント、社内のコミュニケーション、従業員の意思統一や教育・育成、コーポレートガバナンスなど経営機能そのものを担うことが広義の「広報」の役割です。当然、アウトプットをするためにはインプットも必要なので情報収集も役割です。最終的にすべてのステークホルダーからの信頼を得、エンゲージメントを築くことが求められます。

一流と言われる企業になればなるほど、広報機能は重視され、役員がこれを担うことが多くなります。経営機能そのものですから当然です。なぜならば、経営の意思をもってすべてのステークホルダーとコミュニケーションを持つことが役割なのですから、政府で言えば官房長官のようなものなのです。

私も広報を担当していた頃は、週に1~2回は経営トップと社内外のさまざまなことについて、どのように対処し、どのようにコミュニケーションを図るか、じっくり話す時間を持っていました。

狭義に「広報」を捉えていると、総務部の一担当者にこれを担わせようということになってしまうのかもしれません。それでも担当者がいるだけでも立派なのだと思います。

人材サービス業では本来の広報機能を発揮している企業は少ないように思いますが、中小でも非常に大きな成果をあげている事業者もあります。規模が小さければ広報担当者をアサインする余裕がないのも当然なのかもしれませんが、役割として広義の「広報」を意識できる人をアサインすることは経営的にも非常に大切なのではないでしょうか。

話が戻りますが、「PR」と「アピール」の違い、狭義と広義の「広報」の違い、これが正しく理解されていないと情報誌を作ることが目的になってしまいますね。語り出すとキリがないので、今日はこのぐらいにしておきます(笑)。