9月20日に厚生労働省が、2015年版「働く女性の実情」を公表しました。以下の3部構成となっています。 

  1. 平成27年の働く女性の状況
  2. 働く女性に関する対策の概況
  3. 男女雇用機会均等法成立30年を迎えて

これによると、女性の労働力率のM字型カーブの底(30~34歳)は、男女雇用機会均等法成立してから30年間で20.6ポイント上昇したとのことです。

女性の労働力率の推移やっと上昇したM字カーブの底

1985年に50.6%だったものが2015年には71.2%まで上昇しており、この間、女性の社会進出がいかに顕著であったかがわかります。

2015年の25~29 歳のピークは80.3%であり、この年代についてはほぼ男性と同程度の労働力率となっています。

私が社会に出て間もない1985年に男女雇用機会均等法が制定されてから実に30年間かかってやっとここまできたのかという気持ちです。

それでもまだ2020230

私は、女性が求められる業務に相応しい能力をもっているのであれば、男でも女でもよいと思うのですが、世間ではなかなかそうはいかないようですね。

個人的には、社会に出てから男女平等が当たり前という環境の中で過ごしてきたので、いまだに202030、つまり2020年までに女性の管理職比率を30%にまで引き上げるというのは、どちらかと言うと遅れているように感じます。ことほど左様に雇用問題の転換には時間がかかるということでしょう。

私は、かつてコールセンターや事務センターなど男性よりも女性の方がはるかに人数の多い職場でマネジメントや企画業務に携わっていたこともあるので、女性がリーダーシップをとること自体には何の違和感ももっていません。

むしろ、女性の方が男性よりもはるかに優秀である場面を多くみてきています。向き不向きもあるのでしょうが、女性が正当に評価され、処遇されることは非常によいことだと思います。

ただし、女性を責任あるポジションに引き上げるために、それが目的化することは問題があると思います。男性、女性に限らず能力の不足した上司のもとで仕事をするのはどちらにとってもよいことではないですから。

厚生労働省が奮闘したから労働力率が向上した?

なぜ女性の労働力率がこれだけ上昇してきたのでしょうか。厚生労働省によると第二部の「働く女性に関する対策の概況」で以下のような政策が女性の労働力率を高めたという説明がされています。

  • 雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等対策の推進
  • 仕事と生活の調和の実現に向けた取組
  • パートタイム労働対策の推進
  • 在宅ワーク対策の推進
  • 家内労働対策の推進
  • 女性の能力発揮促進のための援助

もちろん、これらの政策によって女性の労働力率が多少は向上したというのは、環境づくりの一環としては多少は効果があったのかもしれません。

しかし、本当にシンボルマーク「きらら」や女性活躍推進法認定マーク「えるぼし」、「くるみん」認定企業に対する優遇税制などだけでそれほど寄与したのでしょうか。さすがに少しまゆつば臭さも残ってしまいます(失礼)。

働く女性 女性の労働力率が上昇した本当の理由

かなり独断ですが女性の労働力率が向上した理由を他の角度から考えてみたいと思います。

  1. 学校教育における男女平等意識の醸成により子どものころから女性が上に立つことが珍しくなくなった
  2. 女性の大学進学率の増加による社会的問題意識への目覚めによる社会参画への欲求が高まった
  3. 「ウーマンリブ」(今では死後?むしろ男性が弱者?)に後押しされた男女同権意識が向上した
  4. 少子化により子育てに携わる時間が減少した(子どもが少ないから働くのか、働くから子どもが少ないかの議論は残るが)
  5. 待機児童の問題は残っているが従来よりも学童保育が一般的になった
  6. 電器製品の性能、機能の向上により女性が家事から解放される時間の増加。家事は女性がするものという風潮が低下した
  7. 社会参加を容易にする外食産業の興隆とスーパー・百貨店の惣菜、冷凍・レトルト食品などの質の向上により食生活が変化した
  8. あらゆるもの、コトが便利になったため、専業主婦でいることがつまらなくなった
  9. 景気後退や仕事のフラット化を原因とした男性配偶者の待遇低下により家計補助へのニーズが高まった
  10. 子どもの大学進学率向上により学費負担を解消する必要性が高まった
  11. 核家族化による親から受ける経済的な恩恵が低下し世帯収入増加の必要性が高まった
  12. IT化により企業の業務プロセスが変わり、女性が得意とする職種に対する人材ニーズが増加した
  13. 女性が社会進出することを支える事業、職業が増加してさらにそこに女性の労働力が必要となった
  14. 人材派遣をはじめ女性が働きやすいビジネスが拡大、サービスの質も向上したことで雇用の機会が増加した

考え出すときりがないほど浮かんできます。他にももっとたくさんあるのではないでしょうか。むしろそれを突き詰めるともっと女性の労働力率が向上するかもしれませんね。

働きたくないのに働いている人も

内閣府の調査によれば、20代で「専業主婦」を希望している人は58.5%で、若い世代ほど専業主婦になりたいと考えているそうです。つまり、前述の2015年の25~29 歳のピークは80.3%を持ち出すと20%以上の人が外で働きたくないのに働いているという状況になっているということですね。これはどう考えたらよいのでしょう(笑)。

厚生労働省資料:

平成27年版働く女性の実情

平成 27 年版 働く女性の実情(Ⅲ部)(概要版)