こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

昨日のブログ「人材サービス業界、2018年はこんな年」でも触れましたが、今年の大きなトピックとして人材不足がこれまで以上にクローズアップされるように思います。

昨年の年末に気になった記事として、12月27日付の現代ビジネス「歴史的な大惨事レベル『人材不足』今年はこんなにヒドかったー2018年は『人材争奪』の年になる」というものがありました。わかりやすい記事です。

■ 採用方法の問題ではない

すでに人材不足は連日ニュースで採り上げられているので、今さら私が採り上げるまでもなく社会問題化していることは事実です。

それでもまだ、私が相談を受ける時点では採用方法について気になっている方が多い状況です。昨日のブログにも書いたように、求人広告をどうにかすればなんとかなるという次元はとっくに過ぎています。

入職経路を考えると、求人広告、ハローワーク、縁故、学校、人材紹介、出向・転籍、その他と特に従来の手法と変わりはありません。ここには奇策はありません。

自社メディアやSNSといったことも言われていますが、いずれも従来の手法の延長線でしかありません。あたかもこれらのことをやれば採用できるという向きもありますが、本当にそうなのか私は懐疑的です。

■ 採用の本質はなにか

もちろん、これだけ人材不足が叫ばれているなか、出来る限りのことをやることは必要です。何か一つだけをやって満足という訳にはいきません。自社メディアやSNSも含めてマルチチャネルで採用を捉える必要があるというのは確かでしょう。

一方、その表現だけをキャッチーなものにすればそれで済む話でしょうか。「広告」という観点では、エッジの効いたキャッチーなタイトル、コンテンツも奇をてらったものの方がウケはよいのかも知れませんが、それが実態とかけ離れたものになると問題です。

そもそも募集要項に書いてあることと実態とのギャップが大きければ大きいほど定着率に影響します。

単純に入社に結び付く事だけを考えた採用方法を採ることは、結果として採用費だけでなく教育研修費までドブに捨てることになるのが目に見えています。定着率が落ちれば社内の雰囲気も悪くなります。仕事の質も低下します。見えないデメリットも多く生むでしょう。

募集要項に胸を張って書けるだけのファクトをもつことが最も重要なのです。

■ 労働条件に敏感

特に昨今は長時間労働がクローズアップされていることや若年層が仕事よりもプライベートの充実を望む傾向が強いという中では、週休1日とか残業月平均60時間では応募に至りません。

仕事の魅力を訴えることは重要ですが、例えば「完全週休2日」「年間休日120日」「残業月平均20時間以下」とはっきり書けるかどうかも考慮しなければならない点です。

事実に反することは書けませんから、これらを書こうとすれば業務内容をきちんと見直し、実際にそうなるようにしなければなりません。

最も重要な衛生要因である賃金水準は同業他社の同種の業務内容に照らして少しでも上回っていることも必要になります。こうなるともう社内改革です。

■ 大企業は採用に困っていない

実は、大企業では巷で言われているほど採用に困っていません。斜陽産業は別として、基本的には人材が欲しければ採用できます。

安定を求める求職者にとって「大企業だから」という理由もあるかもしれませんが、前述のような労働条件が整っているかどうかという理由も大きいように思います。

「中小企業では大企業のような待遇は難しい」…たしかにそれは事実かも知れませんが、それを安易に受け入れ、「だからどうしようもない」と思っているとしたら、実も蓋もありません。厳しい言い方をすれば怠慢です。

中小企業でもブランド力を上げ、生産性を向上させ、大企業のできない特化した領域で、きめ細かい商品やサービスを通じて、大企業以上の待遇を実現している企業はたくさんあるのです。

何もしなければ「座して死を待つ」だけです。少しでもよい人材を採用できる社内体制を整える。これが本来求められる採用戦略ではないでしょうか。

歴史的な大惨事レベル「人材不足」今年はこんなにヒドかった

2018年は「人材争奪」の年になる

現代ビジネス 2017年12月27日(磯山友幸/経済ジャーナリスト)

歴史的な人手不足

2017年は人手不足に始まり人手不足に終わる年だった。

厚生労働省が12月26日に発表した11月の有効求人倍率(パートを含む、季節調整値)は1.56倍と、1974年1月以来、43年10カ月ぶりの高水準となった。すでにバブル期の水準を上回り、高度経済成長期並みの求人難となっている。

夏以降一服して頭打ちかと思われた新規求人件数も11月は98万8605件と前月比2.4%増加した。新規の求人に対してどれだけ採用できたかを示す「対新規充足率」は14.2%。7人雇いたいという求人に対して1人だけが決まっているという計算になる。

この14.2%という数字も、比較できる2002年以降で最低である。この厚労省の統計はハローワークを通じた求職求人の倍率だけで、最近増えているインターネットなどを使った民間サービスの求人は含まない。このため、実際には採用難はもっと深刻だという声も聞かれる。

この2年だけを見ても、2015年12月に247万人だった求人が、この11月には275万人に増えた。28万人も求人が増えたにもかかわらず、職を探している求職者は194万人から176万人と18万人減っている。

仕事を求める人が減った背景には、景気が良くなって失業者が減ったことや、少子化によって若年層の人口自体が減少したこと、女性で働く人が大幅に増えて、新規に就労する人が減ったことなどが考えられる。

なにせ11月の完全失業率は総務省の調査によると2.7%で、24年ぶりの低さとなった。求人倍率の高さ、失業率の低さとも、歴史的な人手不足状態が出現していると言える。2.7%という失業率は世界的に見ても異例の低さで、働く意思のある人が働いているという事実上の完全雇用状態といっていい。

そんな未曾有の人手不足は、いったい、いつまで続くのか。果たして2018年はどうなっていくのだろうか。

広がる人手不足倒産業種

2017年は人手不足によって深夜営業を止めたり、店舗を閉鎖したりする外食チェーンなどが相次いだ。政府が音頭を取る「働き方改革」などの影響もあり、長時間労働や低賃金といった条件の悪い職種が敬遠されている。人手の確保ができないところが、営業を縮小せざるを得なくなった。

2018年は、この傾向は一段と鮮明になるだろう。帝国データバンクの調査では2017年度上期(4〜9月)の倒産件数は4197件と前年同期比で3.4%増えた。前年同期比での増加は何と8年ぶりのことだ。

倒産理由を見ると、「人手不足倒産」が54件あり、まだ件数としては少ないが前年同期は32件で、69%も増えている。単月で見てもジワジワと人手不足倒産が増えており、2018年はこれが大きな問題になりそうだ。

人手不足が営業縮小では間に合わず、事業自体が存続できないところまで追い詰められてしまうケースが増えるとみられる。サービス業のほか、中堅中小の製造業などでも人手不足が深刻化しつつある。

有効求人倍率は2018年も上昇を続ける可能性が大きい。仮に有効求人が頭打ちになったとしても、団塊の世代の労働市場からの退出や、今後ますますの少子化によって、求職者数が減り続けるとみられる。人手不足が簡単に解消することはないだろう。

前述の厚労省の調査でも、新規求人倍率の高い職種ははっきりしている。

家庭生活支援サービスが約16.9倍、介護サービスが5.4倍、生活衛生サービスが7.7倍、接客・給仕5.9倍などとサービス産業での求人倍率の高さが目立つ。建設(6.5倍)、土木(5.5倍)など建設系の仕事も相変わらず人手不足だ。こうした職場では、2018年は人材確保が企業の死活問題になってくるに違いない。

また2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、駆け込み工事などが増えるほか、ホテルやレストランの新設オープンも目立ち始める。建設やサービスなどの人手不足が一段と激化するのは火を見るより明らかだ。

待遇改善による人材確保競争

安倍晋三内閣は2018年の春闘で「3%の賃上げ」を経済界に求めているが、賃上げに消極的だったり、労働時間の短縮が進まなかったりする企業からは、人材の流出が加速することになるだろう。

失業率が3%を恒常的に下回るようになって、人材の争奪戦が企業の間で熾烈になっていくとみられる。

給与の引き上げにどれぐらい対応できるかが、企業の人材確保を左右しそうだ。最低賃金は毎年引き上げられており、パートやアルバイトの人件費増が鮮明になっている。

そうした中で正社員化や正社員の待遇改善が焦点になっている。正社員だからと言って長時間労働を強いたり、ましてやサービス残業を常態化させるような経営を行えば、社員はどんどん逃げていく。

ひとたび社員の流出が始まれば、残った社員への負荷がさらに大きくなり、長時間労働に拍車がかかることになりかねない。労働環境の悪化がさらに離職につながるという悪循環に陥りかねないわけだ。

いったんそうした負のスパイラルに陥れば、簡単には立て直しが出来ず、「人手不足倒産」への道をまっしぐら、ということになりかねない。

2018年は必要な人材を確保できるかどうかが、企業の生殺与奪を握る、まさに「人材争奪」の年になるだろう。

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