ご好評いただいた9月8日の拙ブログ「利益を生むリスクマネジメント」で、「企業活動で起こりうる主なリスク」として以前調査してまとめたリストをご紹介しましたが、その中に「法改正」というものが潜んでいます。
このブログでは、労働法制について採り上げることが多いのですが、労働法制の動向を掴むという意味では、アドバンスニュースさんが最もスピードが速いですし、非常にニュートラルな報道を突っ込んで網羅されていると思います。
深く掘り下げるという意味では老舗中の老舗のオピニオンさんの「月刊人材ビジネス」で学識者、有識者のコメントを読んだ方がいいですね。私もよく読ませていただいています。
では、なぜこのブログでも動向を追っているかというと、人材サービス業にとって労働法制の成り行きは経営上、業績を大きく左右するものになるからです。経営戦略を策定する上でも先々の動向を押さえておく必要があるのです。
環境分析は経営戦略策定の基本です。あくまでも経営戦略に資するものとして捉えているので、新聞などの一般のメディアとも違う企業経営の視点で事業に引き寄せてお伝えしているつもりです。
…で、その「法改正」ですが、言うまでもなく人材派遣サービスは規制対象業種です。
他の規制対象業種はどうでしょう。例えば、電気通信事業もそうですね。
電気通信事業にはアクセスチャージというものがあります。事業者間で電話回線を貸したり借りたりするときの料金を精算するしくみですが一般にはほとんど知られていません。
実はこのアクセスチャージが何パーセント増減するかで、営業担当者が日ごろ汗水垂らして回線獲得に励んでいるものを大きく凌駕する、あるいは一瞬にして利益が吹っ飛ぶほどのインパクトがあります。
これは電気通信事業法によって総務大臣の許可を得ることが定められているのです。営業努力よりも許可に対する働きかけの方が業績を左右する度合いが大きいのです。リスクとチャンスの背中合わせです。
労働者派遣法も同じですね。1999年のネガティブリスト化、2004年の製造業務派遣の解禁と、その規制次第で市場そのものが大きく変わったことは皆さんもよくご存知のはずです。
もしかすると普天間基地問題で鳩山元総理が内閣総辞職をしなければ、今ごろ一般労働者派遣事業はなくなっていたかもしれないのです。まさに薄氷の一日でしたね。
昨年の平成27年改正法も国会での附帯決議だけで、皆さんの利益率はかなり圧迫されることになったはずです。
段階的かつ体系的な教育訓練を実施することが定められ、有給無償で教育訓練を行うこと、そのための交通費を支給することといったことは、労働政策審議会では決まっていなかったことです。
国が事業者の財布に手を突っ込んでいる状態というのはどうかと思います。一般的な業界では考えられません。
こういった変化は、変わってから対応していたのでは遅いのです。やはり、規制対象業種はそのような変化を常に敏感に先取りして考えなければ生き残れません。
ちまたでは、雇用安定措置…なにそれ? キャリア形成支援…なにそれ? という事業者さんもいらっしゃると聞きました。知らないと損するどころではなく、知らないと事業停止や事業廃止にいたることさえあるのです。
法改正はリスクとなることも、チャンスとなることもあります。また、リスクをチャンスとして捉え勝ち進む糧にすることも必要です。
経営企画的な発想でお役に立てればいいなと思っているので、もしご不明なことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
そう言えば、大昔にNHKの「ピンチだ!チャンスだ!」という番組に出たことがあったなぁ。ほとんどの人は知らないと思いますが(笑)。
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