先日、台風11号、9号、10号がまとめてやってきて各地に大きな被害をもたらしましたが、その後間もなく12号は温帯低気圧となり九州の北に抜け、13号も温帯低気圧に変わりました。

これまでの立て続けの台風で地盤がゆるんでいることもあるのではないかと思います。特に東北、北海道の皆さんはくれぐれもお気をつけください。

子どものサッカーはリスクでいっぱい

さて、台風を初めとする自然災害はもちろんですが、企業は実に様々なリスクが取り巻かれています。

先日「危機管理広報」のことを書きましたが、これはあくまでもリスクを通り越して「危機(クライシス)」に陥った時のことを想定したときの話です。

言うまでもなく、危機が起こる前にリスクをどうマネジメントするかが求められています。

企業経営全体を見渡すと、ありとあらゆることがリスクとして想定されます。起こるかどうかわからないことを考えるよりも売り上げの方が先だという気持ちもわからなくはありません。

しかし、全社で売り上げのことだけを考えていたら、リスクについてはノーマークのお留守の状態です。

子どものサッカー私はこのような状態を「子どものサッカー」と呼んでいます。つまり、全員がボールが転がっていく方に向かって固まって走り出してしまう状態です。

これでは不意に起った反撃には対応できません。ある意味、オウンゴールよりも見苦しいことになってしまいます。

大企業ならば、コンプライアンス部、リスクマネジメント部、監査部などががっちりディフェンスに回るのだと思いますが、中堅、中小企業になるとなかなかそこまで手が回らないのも事実でしょう。そうなると経営者がそれを担うしかありません。

まさか社長もフォワードということはないですよね? ちなみに織田信長でも先頭に立ったのは桶狭間の時だけです。トップは全体を見渡せる立場、つまり監督かゴールキーパーとしての役割を担う、もしくはどうしてもフォワードをやりたければ、本田宗一郎と藤沢武夫の関係のように実質的に経営を任せられる人のサポートを受けるしかありません。

経営者の責任としてリスクマネジメントを率先してやらなければ、そこで働く従業員は泥船に乗ったようなものなのです。

リスクの抽出と見極め

企業に起こりうる主なリスクでは、実際にどのようなことがリスクとしてあるのでしょうか。以前「企業活動で起こりうる主なリスク」として整理してまとめたものがあります(表参照)。

この表を見ているだけでも頭が痛くなってきますね。中には該当しないものもあるとは思いますが、何から手をつけたらよいのでしょう。

ここに挙げたものは比較的どのような企業にも考えられることばかりだと思いますが、個々の企業にとって特有のリスクもあるはずです。

まずは、自社を取り巻くリスクにどのようなものが考えられるのか徹底的に洗い出すことです。自分がやっていることは自分ではわからないこともよくあります。外部の力を借りてでも客観的な見方をすることが必要です。

ひととおり洗い出しが済んだら、それらを発生する可能性と発生した場合の影響度で分類をしてリスクを評価していきます。可能性が高く影響度が大きいものは当然、すぐに何らかの手を打たなければなりません。

逆に可能性が低く影響度が小さいものは、それこそ発生ベースで考えればよいものとして認識しておけばよいと思います。ただし「認識しておく」ことは必要で、「意識にない」状態は作ってはいけません。

コスト削減につながるリスクマネジメント

発生する可能性は低く、影響度が高いものの筆頭は自然災害といえるかもしれません。100年に一度といわれる東日本大震災級の自然災害を無視して事業をしてよいのかが問われるわけです。

過度に心配をすることは精神的にはよくないのかもしれませんが、少なくとも「起こらないだろう」と思っているより「起こるかもしれない」と思っている方がリスクマネジメントの観点からは健全です。

「未曽有」という言葉は「起こらないだろう」を前提にしています。残念ながら私たちは歴史に学ぶこともなく危機に瀕したことになるのではないでしょうか。どこまで事前に対策するかの判断が求められます。

逆に、発生する可能性が高く、影響度が天変地異ほど大きくないものにはどのようなものがあるでしょう。

人材サービス特有のものとして一つ例を挙げるならば、派遣社員や派遣先からのクレーム。

「モノ」ではない「人」には必ず意思があり、その意思の疎通が適切におこなわれない状態になると不満がたまり、結果としてクレームとなって顕在化します。

つまり、「モノ」を扱っている事業よりもクレームの発生する可能性が遥かに高いのです。

皆さんもよくご存知のように一度クレームが発生するとそこには膨大なエネルギーが必要になります。

何事もなく事が運んだときと比較すると数十倍の時間を費やすことになることも多いでしょう。その時間はすべて人件費です。賠償を迫られることもあるでしょう。せっかく稼いだ利益の垂れ流しです。

そして、そこで生まれたクレームは会社の評判にまで影響します。すでに信頼を失っているのです。これを取り戻すためのパワーは計り知れません。

クレームを出さないようにリスクマネジメントをすることは、実は企業の業績を向上させるという意味でも非常に大きな貢献といえるのです。

ブレーキが信頼と成長を生む

「子どものサッカー」ではディフェンスに「さがれ」と声をかける人はいません。ポジションすら決まっていないこともあるかもしれません。言うなればブレーキの無い車のようなものです。

私はよく「良い車ほど良いブレーキがついている」という話をしますが、そもそも何のためにブレーキがついているのでしょう?

それは移動手段として安全に速く走るためについているのです。走らないのであればブレーキは必要ありません。

企業活動にとってもブレーキは極めて重要であり必要不可欠なものなのです。ブレーキのついていない車には乗りたくないですよね。

リスクの話は時として、お金がかかる、人手がかかる、時間がない、と事業活動にブレーキを踏むものとして厄介者のように扱われることも多いのですが、実はより安定的に成長をするための条件なのです。

経営力の違いは、いかにハンドリングをして方向を定め、攻めと守り、つまりアクセルとブレーキを使い分けるかという運転センスにかかっています。

絶妙なブレーキワークでリスクマネジメントに取り組んでみませんか。

それにしてもこのスッキリしない天候、最近、台風一過ということがないですね。明日は晴れたらいいな。

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