企業倫理経団連から「企業倫理徹底のお願い」というお知らせが通知されています。10月は「企業倫理月間」なのだそうです。

○○月間、○○週間というのは、交通安全週間と同じでその時だけ守ればいいというものではないのですが、啓発活動としてはよい取り組みなのかもしれません。

味わい深い「企業行動憲章」

さて、改めてこの経団連からのお知らせにしたがって「企業行動憲章」を読んでみました。一言一言丁寧に読んでいくと実に味わい深いことが書いてあります。もちろん小説ではないので文学的に味があるわけではなく、あくまで企業経営の観点からの味わいですが…。

とかくこの手のものは、ある意味「当たり前」のことばかりなので読み飛ばしてしまうことが多いのかもしれませんが、この「企業行動憲章」に書いてあることは企業経営にとって最も重要なことばかり。これこそ「The 経営」という感じです。

ただし、ここに書いてあることが「実践できていれば」という条件付きです。

「有限不実行」こそ最大の罪

最近の企業の不祥事を見ても、タカタのエアバッグのリコール、東洋ゴムの防振ゴムのデータ偽装、東芝の不適切会計、三菱自動車の燃費不正表示と、いわゆる一流企業といわれる会社によるものが後を絶ちません。

これらの企業の経営トップが、「企業行動憲章」に書かれているようなことを知らないはずがありません。結局、「企業行動憲章」のようなものが社内にあったとしても、それを実践していないのです。知っていることと、できることは違います。言っていることをやらないのは罪な話です。

逆に言えば、それだけ人の心は弱いものといえるのでしょうが、経営者にはその弱さをはねのける勇気と真摯さを求めたいものです。

経営戦略策定のためにも「企業行動憲章」

企業経営を語るときにミッションやビジョンのことはよく話題になっても、バリューのことが取り上げられることは少ないのではないでしょうか。実は企業文化を創るうえではバリューこそが最も重要です。

当然ながらこの「企業行動憲章」に書かれているようなことは人材サービス企業にとっても無縁ではありません。売上も大事、利益も大事です。しかし、それ以前に企業の存在価値を見つめなおし、ここに書かれているようなことが実践できているか確かめる時期としてこの「企業倫理月間」を捉えてみたらいかがでしょうか。

先日から、来期の経営戦略策定について少しずつ触れていますが、このタイミングで「企業行動憲章」に書かれていることを実践できているかどうか振り返ることは決して無駄にはならないはずです。

今日10月21日から秋の全国交通安全週間ですね。3年前に30年近く維持してきたゴールド免許を失いました(^^;;。交通安全週間だけ守ればよいというものではありませんが車の運転は慎重に(笑)。


2016年9月20日

会員代表者各位

一般社団法人 日本経済団体連合会

会長 榊原定征

企業倫理徹底のお願い

経団連では、毎年10月を企業倫理月間と定め、会員各位に企業倫理の徹底をお願いしています。企業は、社会からの信頼に支えられて初めて存続できるものであり、経営者には高い倫理観をもって社会的責任を果たしていくことが強く求められます。

特に近年、経済のグローバル化が益々進展する中で、企業が社会からの信頼を得て持続的な成長を図っていくためには、経営トップ自らが先頭に立って企業統治体制を確立するとともに、適切な情報公開を実施し説明責任を果たすことが必要不可欠です。

つきましては、より一層の企業倫理の徹底と社会的責任の推進をこの機会に図るべく、別紙の通り企業行動憲章等を参考にしていただき、グループ企業も含めた事業活動全般の総点検を行っていただきますよう改めてお願い申し上げます。

以上


企業行動憲章

2010年9月14日

(社)日本経済団体連合会

【序文】

日本経団連は、かねてより、民主導・自律型の活力ある豊かな経済社会の構築に全力をあげて取り組んできた。そのような社会を実現するためには、企業や個人が高い倫理観をもつとともに、法令遵守を超えた自らの社会的責任を認識し、さまざまな課題の解決に積極的に取り組んでいくことが必要となる。そこで、企業の自主的な取り組みを着実かつ積極的に促すべく、1991年の「企業行動憲章」の制定や、1996年の「実行の手引き」の作成、さらには、経済社会の変化を踏まえて、数次にわたる憲章ならびに実行の手引きの見直しを行ってきた。

近年、ISO26000(社会的責任に関する国際規格)に代表されるように、持続可能な社会の発展に向けて、あらゆる組織が自らの社会的責任(SR: Social Responsibility)を認識し、その責任を果たすべきであるとの考え方が国際的に広まっている。とりわけ企業は、所得や雇用の創出など、経済社会の発展になくてはならない存在であるとともに、社会や環境に与える影響が大きいことを認識し、「企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)」を率先して果たす必要がある。

具体的には、企業は、これまで以上に消費者の安全確保や環境に配慮した活動に取り組むなど、株主・投資家、消費者、取引先、従業員、地域社会をはじめとする企業を取り巻く幅広いステークホルダーとの対話を通じて、その期待に応え、信頼を得るよう努めるべきである。また、企業グループとしての取り組みのみならず、サプライチェーン全体に社会的責任を踏まえた行動を促すことが必要である。さらには、人権問題や貧困問題への関心の高まりを受けて、グローバルな視野をもってこれらの課題に対応することが重要である。

そこで、今般、「企業の社会的責任」を取り巻く最近の状況変化を踏まえ、会員企業の自主的取り組みをさらに推進するため、企業行動憲章を改定した。会員企業は、倫理的側面に十分配慮しつつ、優れた商品・サービスを創出することで、引き続き社会の発展に貢献する。また、企業と社会の発展が密接に関係していることを再認識したうえで、経済、環境、社会の側面を総合的に捉えて事業活動を展開し、持続可能な社会の創造に資する。そのため、会員企業は、次に定める企業行動憲章の精神を尊重し、自主的に実践していくことを申し合わせる。

企業行動憲章
― 社会の信頼と共感を得るために ―

企業は、公正な競争を通じて付加価値を創出し、雇用を生み出すなど経済社会の発展を担うとともに、広く社会にとって有用な存在でなければならない。そのため企業は、次の10原則に基づき、国の内外において、人権を尊重し、関係法令、国際ルールおよびその精神を遵守しつつ、持続可能な社会の創造に向けて、高い倫理観をもって社会的責任を果たしていく。

  1. 社会的に有用で安全な商品・サービスを開発、提供し、消費者・顧客の満足と信頼を獲得する。
  2. 公正、透明、自由な競争ならびに適正な取引を行う。また、政治、行政との健全かつ正常な関係を保つ。
  3. 株主はもとより、広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示する。また、個人情報・顧客情報をはじめとする各種情報の保護・管理を徹底する。
  4. 従業員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する。
  5. 環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件として、主体的に行動する。
  6. 「良き企業市民」として、積極的に社会貢献活動を行う。
  7. 市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力および団体とは断固として対決し、関係遮断を徹底する。
  8. 事業活動のグローバル化に対応し、各国・地域の法律の遵守、人権を含む各種の国際規範の尊重はもとより、文化や慣習、ステークホルダーの関心に配慮した経営を行い、当該国・地域の経済社会の発展に貢献する。
  9. 経営トップは、本憲章の精神の実現が自らの役割であることを認識し、率先垂範の上、社内ならびにグループ企業にその徹底を図るとともに、取引先にも促す。また、社内外の声を常時把握し、実効ある社内体制を確立する。
  10. 本憲章に反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。

以上