昨日のCEATECのエントリーと話は前後しますが、一昨日10月3日には「NPO法人 人材派遣・請負会社のためのサポートセンター」の「2016年度第4回派遣請負問題勉強会」に参加をしてきました。

これからの雇用社会と人材サービスの役割

その内容はとても濃密で、スーパースターのライヴを3本立て続けに聴いた感じ。私の趣味で言えば、エリック・クラプトンとローリング・ストーンズとポール・マッカートニーをそれぞれ2時間ずつ続けて聴いたという感じでしょうか♪

逆に濃密すぎて何が焦点なのかわからなくなるほどでした。

かなり早くから関わりのあった勉強会

内容の話に移る前にまずはこの「派遣請負問題勉強会」、今回でひとまず中締めになるとのこと、一昨日になって初めて知り唖然としています。

「派遣請負問題勉強会」は2008年に始まったと記憶していますが、当初は同僚から「面白そうなセミナーがあるから行ってみない?」と誘われて参加したのが最初です。

翌年の2009年の第6回になると、なんと当時の私の直属の上司、つまり社長が登壇することとなり、とても他人事ではない状態になったことを覚えています。

それがどのぐらいの位置づけだったのかと、改めて「人材派遣・請負会社のためのサポートセンター」のホームページを覗いてみると、ほとんどが学識者、有識者ばかりの講演の中で、初めての人材サービス事業者の登壇。しかも最初で最後の欧米人(笑)。

一応、テーマが「海外の派遣労働・人材ビジネスの実情から見た日本の派遣労働・人材ビジネスの課題について学ぶ」だったので、外資系の立場、かつ規模的にも世界最大手ということで、話題性も含めてよかったのかなぁとは思うものの、今になって思えば「マーク、なんで引き受けちゃったの?」っていう感じ。

裏方の仕事も大事?

当然ながらこの手の話になると、当時、広報宣伝部を担当していた私のところに話が降ってくるわけです。なぜって、ストーリーを作るのはもちろん本人ではなく担当部署ですから。

頂いたテーマは「海外人材ビジネスの現状と日本の今後の課題」。社長に何を話したいかと意向を聴いて話の組み立てや肉付けをするのはこちらの仕事。

もちろん、資料も作りましたよ。今だから話せることですが(話してもいいのかな)、当時の社長はあまり人前で話すことは好きではなく、当日も若干ナーバスだったのです。

割といつも使うネタで、「Good afternoon, everybody!」…会場「シーン」となったところで、流暢な日本語で話しはじめ、会場がホッとするという流れまではよかったのですが、スライドに合わせて、「ここでは○○について話してくださいよ」と事前にレクしてあったことを飛ばす飛ばす(笑)。

日ごろ流暢な日本語を話していてもやはり日本人と同じことを期待できないのは仕方がないのですが、聴衆の皆さんにどこまで通じているのかという心配もありました。

ゴーストライターも

労働者派遣法改正問題に対する提言翌年に発行された「労働者派遣法問題に対する提言」の冊子でその講演の模様が収録されたのですが、その原稿の校正ももちろん広報宣伝部の仕事。

社長の日本語が若干怪しい分だけ、テープ起こしの原稿が意図するところと違うこともあり鉛筆なめなめ。

「ここでは○○について話してくださいよ」を足さないと意味が通らないこともあり、文章上は講演で話をしていないことまで脚色をしてしまいました。今さらですがスミマセン。

ただ、骨子は、労働者全体を俯瞰して待遇を公平にすべきということと、エンプロイアビリティを高める必要があるということで、昨今の表現で言えば、同一労働同一賃金とキャリア形成支援。この頃から言っていることは変わらないわけです。

当時の派遣協会の会長もこの内容を気に入ってくださり、その冊子を持ち歩いていることをご本人から伺いましたが、さすがに私がゴーストライターだとも言えず…(笑)。

主催者の高見理事長に感謝

そんなこんなで、以来、ほとんど欠かさずに毎回、この勉強会に通わせていただきました。

懐かしくなってついつい長くなってしまいましたが、この勉強会がこれまで人材サービス業界に与えた影響は計り知れないものがあったと思います。

とかく、登壇する方ばかりがクローズアップされますが、実際には企画し運営する人の力なくしては成り立ちません。

これまでご苦労いただいた高見理事長の情熱には心から敬意を表したいと思います。

ぜひ、これで終わりと言わず、また新たな機会をつくってくださることを心からお願い申し上げたいと思います。そうしないと反省会と称する飲み会もできなくなってしまいますから…(笑)。

最強の登壇者

逢見事務局長さて、内容の話ですが、テーマは「これからの雇用社会と人材サービスの役割」。

これがもう濃くて濃くて。連合の逢見事務局長を筆頭に、労働政策研究・研修機構主席統括研究員の濱口圭一郎先生、東京大学社会科科学研究所教授の水町勇一郎先生、中央大学ビジネススクール大学院戦略経営研究科教授の佐藤博樹先生ととりあえずの最後を締めくくるにふさわしい布陣。

よくよく考えてみると、この3人の先生方は全員、研究室をお訪ねしたことがあるのでした。それだけでも感慨深いものがあります。

逢見事務局長の講演は、結構、生々しい政治の裏側まで触れる内容で、少し角度の違う話に、なるほどと思うことも多くありましたが、「方向は同じなのになぁ…」という気持ちも少々。

それに続くスーパースターのソロライヴ、1人だけでも話の内容を咀嚼するのに大変なのに3人揃ったら思考が停止してしまいます。

労働組合は必要か

濱口圭一郎先生濱口先生のテーマは「労使関係と人材サービス」。

労働組合というと、私が社会に出たころはまだ組合の存在感というものはそれなりにあって、高校時代は国鉄(JRになる前と言わないとわからない人が昨今いるらしい)の千葉動労が強烈な闘争をしていて総武線がストで学校に行けなくてラッキーなどということもありました。

近所の医療関係者の協同組合でできた病院では、赤いハチマキをした人たちがシュプレヒコールを上げるという光景も目にしていました。

何よりも新卒で入社した家電メーカーにも労働組合があり、当然ながら私も組合員でした。

かなり組合活動も下火になり、労使協調が言われた時代でしたが、それでもたまにオルグなるものがあり、春闘だの賞与だのとある意味、生活を守ってもらっているという実感もありました。

当時は労働組合がある会社はいい企業というような風潮もあり、それなりに労働組合の必要性は感じていましたが、次に転職した新興企業には組合などというものはありませんでした。

ただ、創業者、稲盛和夫さんの「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という強い経営理念がゆえに労働組合の必要性を感じなくなっていきました。JALでは当初この経営理念は反対されたらしいですけど…。

現在の組合の組織率17%は、やはりもっと頑張ってもらった方がよいのかなと思いながら話を聴いていたわけですが、最後に「日本に根づかなかったジョブ型基幹的労働市場を構築できるのは誰か」との問い。

その一翼を担うのはもちろん人材サービス業界ですね。ジョブ型=職務型と捉えると、人材派遣もアウトソーシングも職務型で成り立っている珍しい雇用形態と言えます。

もともと、人材派遣会社はセクハラやパワハラなのから労働者を守る組合の機能も果たしているということも言われていましたが、キャリア形成支援まで含めてこの役割を果たし、雇用安定を図る事業者がこれから求められるということでしょうね。

ちなみに拙著「雇用が変わる」では、濱口先生のレポートを無断で参照させて頂いたのでご挨拶に伺っておきました。事後報告でスミマセン。

法改正の是非よりもその内容

水町勇一郎先生続く水町先生のテーマは「労働法改革と人材サービスの課題」。

経営的には三重苦と考えられる労働契約法、労働者派遣法、同一労働同一賃金推進法による事業規制の強化。

そう言えば、労働契約法18条をどう考えるか事業者の意見を聴かせてほしいというのが水町先生の研究所を訪問したときのテーマでした。

現状の法規制が限界に達していることは確かなので、法改正そのものはよいのですが、どう改正するかは経営的には事業者にとって大きな問題です。

労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の一括改正はすでに安倍首相から表明されていることですが、要するにどう改正するかが問題です。

法改正は必ず企業経営と隣り合わせ、労働者保護はよいのですが、事業規制は活力を失います。

結果として労働者へのサービスが低下することにもなりかねません。

何がよくて何が困るのかは、よく考えて声を挙げることが必要ではないでしょうか。

企業の人材活用、そうですよねぇ

佐藤博樹先生最後の佐藤先生のテーマは「企業の人材活用と人材サービス業」。ハラハラしながらお話を伺いました。

なぜって、「雇用が変わる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント」ってどこかで聞いたことのあるタイトルの副題をひっくり返した表現の内容。

企業向けに執筆した拙著では、私も同じようなことを書いており、とてもホッとしたというのが正直なところです。

特にこれから外部人材の扱いが非常に大事という話はドンピシャでむしろ嬉しいぐらい。

休憩時間中に佐藤先生にご挨拶に伺うと「ネットで見てるよ。頑張っているみたいじゃない」と仰っていただきとても感激しました。

なんとか勉強会の継続を

パネルディスカッションさすがに今回で終わりというのは余りに惜しい、働き方改革は始まったばかりでまだこれからと思い、アンケートにはぜひ継続してほしいとお願いしましたが、本当にこの勉強会、これまでまさに勉強をさせていただきました。

今後何らかの形で継続されることになると信じていますが、節目として改めて感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

はぁ、こんなに書くはずではなかったのについ力が入ってしまいました。繰り返しますが、テーマは「これからの雇用社会と人材サービスの役割」ですからね。

皆さんもよくよく考えなければ…先は長いですけど、いまはそのターニングポイントでしょう。

(※とりあえずの最後というのに写真がボケボケでスミマセンでした)

 

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雇用が変わる

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