10月7日の日刊工業新聞に「政府、下請法50年ぶり見直し−取引環境改善へ ルール厳格化」という記事が掲載されていました。

いまのところ他の新聞では扱われておらず、非常に小さい記事ではありますが、アウトソーシングの適正化において公正取引の観点から極めて重要な取り組みだと思います。

この「下請法」は、正式には「下請代金支払遅延等防止法」といい、委託事業者、請負事業者の資本金規模と取引の内容によっては、民法の請負、委任(準委任)に加えてさらに独占禁止法の特別法として適用されるものです。

製造系の請負事業者の皆さんはご存知のことと思いますが、内容をよく見ると必ずしも製造系に限らず、あらゆる分野でのアウトソーシングに共通したことが含まれています。

拙著「雇用が変わる」でこの「下請法」についても採り上げたばかりなので少しラッキーな感じもしますが、委託元企業による優越的地位の濫用は、下請法の適用の有無にかかわらず、社会通念上、十分、留意すべきであると指摘しています。

発注元の企業の過度な圧力により労働者の待遇にしわ寄せがいったり、安全衛生にまで悪影響が及ぶということは避けなければなりません。

また、昨今、一人請負によるアウトソーシングも増加している中、この「下請法」の整備は非常に望ましいとこではないでしょうか。

今回の見直しは世耕弘成経済産業大臣が進めており、法改正ではなく通達でとのことなので、厳格な運用への移行もスムーズに進むものと思われます。

以前、世耕弘成経済産業大臣が、規制改革会議を担当しているときに勉強会に参加させてもらったことがありますが、その折に労働者派遣法について質問したところ規制緩和が必要だとのコメントをもらいました。珍しく?ビジネス感覚のある政治家という印象でした。

今回の「下請法」の見直しでは、不適正な原価低減要請や金型保管コストの押しつけといった違反行為の事例追加も公正取引委員会に提案するとされています。

事業内容や事業規模にかかわらず「弱い者いじめ」がないように、その適用拡大を求めたいものです。

政府、下請法50年ぶり見直し−取引環境改善へ ルール厳格化

日刊工業新聞2016年10月7日

下請法

政府は下請け取引環境の改善に向け、年内をめどに「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)の一部を見直す。支払手形の期間短縮を促すなど、下請け業者への支払いルールを厳格化する。見直しは約50年ぶり。併せて親会社となる企業に、業種別に自主行動計画の策定を要請する。下請け企業が不利益を被ることがないように取引環境を改め、収益性の向上を後押ししつつ賃上げの環境整備を進める。

下請け取引の適正化に向けて、政府は「よりメリハリの効いた取り組みを官民一体となって進めていく」(世耕弘成経産相)と従来よりも強力に推進していく考え。このため経済産業省は、コスト負担の適正化などを盛り込んだ政策パッケージ「未来志向型の取引慣行に向けて(通称・世耕プラン)」を策定した。

下請法は不当な下請代金の値引き要請、支払期日の延期などを防止する法律。今回の見直しでは、同法で禁止する割引困難な手形に関する期間の定義を変更する。現在、割引困難な手形の期間を繊維業が90日、それ以外の業種は120日以内と定めているが、これを60日に短縮する。年内にも新しい通達を出す。

さらに下請け事業者に対する支払いは、原則として手形ではなく現金とすることを親事業者に要請する。手形の場合でも、割引負担料を発注側である親事業者が負担するよう求める。このほか不適正な原価低減要請や金型保管コストの押しつけといった違反行為の事例追加も公正取引委員会に提案する。


– 世耕プラン –

<基本方針>

  1. 親事業者の不適正な行為に対して厳正に対処し、公正な取引環境を実現する
  2. 親事業者・下請事業者双方の「適正取引」や「付加価値向上」につながる望ましい取引慣行などを普及・定着させる
  3. サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善や賃上げできる環境の整備に向けた取り組みを図る

<重点課題>

  1. 価格決定方法の適正化
  2. コスト負担の適正化
  3. 支払い条件の改善

 

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