8月5日付で発表されている、厚生労働省の民間人材ビジネス実態把握調査(派遣元事業者)を改めてじっくりとみてみました。

圧倒的に多いアウトソーシング

人材派遣以外に行っている事業この調査結果は、派遣元事業者を対象にし、約5千事業者が回答したものですが、このなかで、人材派遣事業者が人材派遣以外に行っている事業について尋ねたものでは、ほぼ70%の事業者が請負を行っていると回答しています(複数回答あり)。

請負のなかには、民法でいわれる、いわゆる「請負」と「委任」「準委任」が含まれていると考えられますが、かなりの率で人材派遣とアウトソーシングを並行して事業として行っているということになります。

一昨日のエントリー「下請法の50年ぶり見直しによるルール厳格化」が思いのほか関心を集めたことを考えても、人材サービス事業者の皆さんが人材派遣とアウトソーシングを事業として手掛けていることがわかります。

本業は人材派遣?

もっとも、この調査は人材派遣事業者を対象としたものなので、請負を主な事業として営んでいる事業者さんが人材派遣も行っているとも言えますが、いずれにしても、外部人材となる人材派遣とアウトソーシングは、企業からみてもニーズの高いビジネスと言えるのではないでしょうか。

拙著「雇用が変わる」でも、副題に「人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント」とつけているのですが、拙著の中では主にBPOについてとりあげています。

クライアント視点でBPOをどのようにマネジメントするかという本は数少ないと思うので、もしよろしければご参照いただければと思います。宣伝でスミマセン。

集中化戦略か差別化戦略を

さて、経営的には圧倒的に人材派遣とアウトソーシングの二足の草鞋ということになりますが、請負に次いで多いのは「人材サービス以外」、そして「職業紹介」と続いています。

「人材サービス以外」というのは、どちらかというと「請負」と同じで、もともと本業が人材サービス以外にあり、人材派遣も行っているということが多いのでしょうか。人材派遣では利益率が低いから他の事業も行っているということでしょうか。

いずれにしても、規模によってはどちらかに集中した方がよいのかなと思ったりもします。

回答した事業者が約5千ということなので、その圧倒的多くは中堅、中小事業者ということになると思いますが、マイケルポーターの競争戦略を考えるならば、コストリーダーシップ戦略をとることはできないので、集中化戦略か差別化戦略しかありません。

経営資源の適正配分という観点から、あっちもこっちもというのは経営効率が悪いため、強みとなる事業に集中すべきではないかと思うのですがいかがでしょう。ランチェスター戦略ですね。

もちろん、リスク分散という観点からは複数の事業を行う必要もあるのかもしれませんが、それも状況を見極めながらケースバイケースですね。

問われる明確な事業戦略

「職業紹介」については、「人材派遣」と半分以上は同じスキームなので、アウトソーシングと同様に事業としてもっておいてもよいとは思いますが、これも規模次第でしょうね。

もちろん、人材派遣サービスを提供するつもりだったものが人材紹介になったり、逆に人材紹介サービスを提供するつもりだったものが人材派遣になったりということもあるでしょう。

事業免許は持っておいた方がよいとは思いますが、それにしてもどちらに軸足を置くかということは戦略上明確にしておいた方がよいと思います。

いずれも、市場環境や自社の経営資源をよく考え、将来的な見通しをもとに明確な経営戦略が求められているのではないでしょうか。

受注ができたらラッキーではなく、何を受注するかを明確にする姿勢が重要になっていくように思います。これからの時代は棚ボタを待つのではなく、しっかりとした戦略をもってとりにいくことが必要になってくるのではないでしょうか。

余談ですが、労働契約申込みみなし制度は、業務単位の期間制限が事業所単位と個人単位に変わったため人材派遣サービスそのもので抵触する可能性は低くなりましたが、偽装請負については依然として抵触の危険性が残っています。くれぐれもアウトソーシングの適正な運営を。

 

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雇用が変わる

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