ある人材サービス企業の経営の方と話をしていて、どうにも話が噛み合わないことがありました。
その人材サービス企業は、比較的、急成長をしたこと自体はよいことなのでしょうけど、中身の話になるとかなり心許ない状態なのです。
創業メンバーとしてその企業を牽引してきたその経営者は、それなりに力を発揮してきたのだとは思いますが、創業者も一般的な企業の成り立ちを知らずに起業、その経営者も新卒で入社したため、もちろん他の企業の経験もなく、基本的な企業のあり方についての知識もない。
頑張って会社を成長させたことは素晴らしいことなのですが、それはあくまでも財務上の話です。売上と利益だけを見ればたしかに素晴らしい。しかし、中身はというと、少なくとも私の目から見ると会社ごっこにしか見えないのです。
■ 全体最適への認識不足
時流にのって勢いだけで成長してしまったというのが実情で、残念ながら、とてもまともな経営とは言えません。持続的な成長は財務的な成長だけでは計れないのです。
ある程度までは、無手勝流、つまりそれなりの師に習うのではなく、自らの流儀によって成長することはできるのかもしれませんが、一定規模を超えるとやはりそれでは限界が来てしまいます。
特に人材サービスは、ビジネスモデルそのものは比較的単純なため、ややもするとビジネスプロセスに目が向かないということもあるように思います。
その経営者と話をしていると、そもそも「経営」と「営業」の区別がついていない。
人事・労務や生産性の向上、コンプライアンス、リスクマネジメントなどについての意識があまりにも低く、経営戦略さえ精神論ばかりで実行性がない。言うなれば、ドロ船状態で、いつ沈んでもおかしくない。
■ 知識・経験不足では限界
もちろん「営業」は重要です。売上をあげ、利益を創出しなければ、存続そのものが危ぶまれます。「営業」が最も重要な機能の一つであることは間違いありません。
しかし、一定規模になるとどうしてもそれだけでは限度があります。「経営」と「営業」は同じではないのです。「営業」だけを見ていては、木を見て森を見ないことと同じです。
ピーター・ドラッカーは、「いかに優れた部分最適も全体最適には勝てない」と言っています。企業は「営業」機能だけを向上させても勝てないのです。
大企業病という言葉があるぐらいなので、必ずしも大企業が正しいということはありませんが、大企業は大企業になるためにそれなりのプロセスをたどっているのです。
導入、成長、安定、衰退といった企業のライフサイクルの中で、その時々にそれなりの経営のしくみを整えたから大きく成長したということが言えます。
■ 客観的視点の重要性
無手勝流では限界があります。一定のセオリーに従うことも成長には重要なことなのです。
部分最適の積み上げは部分最適のかたまりでしかありません。
中小企業の場合、年商10億、30億、50億、100億で壁があると言われますが、多くの場合、これらの成長の度合いに合わせてしくみが創れていないことに起因します。
自分でやっていることは自分ではわからないことが多くあります。さらなる成長を目指すために客観的な視点による踊り場も必要ということですね。
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