TPPアメリカ大統領選後、毎日のようにトランプ氏の動向やトランプ氏が大統領になった以降のことが報じられています。

選挙期間中は、いろいろと過激な発言が多く、この先どうなってしまうのだろうと思ってしまいますが、その中で「TPPを批准しない」という発言もあり、先日の拙ブログでもその経済的な影響について少し触れました。

トランプ氏のよくわからないことは、本心で言っているのか、選挙対策として発言しているのか…どっちなんでしょう、と思えることです。

メディアに詳しいということであれば、どのようにすれば大衆を動かすことができるかということを熟知したうえで選挙戦を戦ったとも考えられる部分もあり、何が本当だかよくわからなくなってきましたね。

労働分野も無縁ではないTPP

その中でTPP、環太平洋パートナーシップですが、言い出しっぺのアメリカが離脱するというのもどうかと思いますよね。

一般的に日本国内ではTPPに反対する声として農林水産業について大きく採り上げられています。

一方、実はTPPには、輸出産業や農林水産業の陰にかくれて、「労働」についての項目も含まれていることはご存知でしょうか。

TPP特別委員会今日11月15日の参議院の「TPP特別委員会」(環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会)では、政府に対して民進党から「日本がILOの105号条約と111号条約を批准していないのはなぜか」との追求もあり、必ずしも農林水産だけが問題視されているわけではありません。

なぜ、TPPの議論でILOの話が出てくるかというと、TPPの「第19章 労働」では、以下のようにルールの概要として掲げられているからです。

国際的に認められた労働者の権利に直接関係する締約国の法律等(以下「労働法令」という。)を執行すること、国際労働機関の1998 年の労働における基本的な原則及び権利に関する宣言並びにその実施に関する措置(ILO宣言)に述べられている権利(強制労働の撤廃、児童労働の廃止、雇用・職業に関する差別の撤廃等)を自国の法律等において採用・維持すること、労働法令についての啓発の促進及び公衆による関与のための枠組み、協力に関する原則等について定める。

このようなルールがあるにもかかわらず、日本が以下のようなILOの105号条約と111号条約を批准していないのはなぜかというのが議論のポイントです。

  • 105号条約 強制労働の廃止に関する条約
  • 111号条約 雇用及び職業についての差別待遇に関する条約

ILO条約の批准を妨げる現実との乖離

日本国内ではさすがに強制労働ということはほとんどないのかも知れませんが、これにはフェアトレードも含まれます。つまり、他国で強制労働によって生産されたものの輸入が禁止されるということです。

差別待遇についても、ヨーロッパに比較するとかなり遅れて同一賃金同一労働推進法が制定されたばかりで、その実現はまだまだ先のことになるのだろうと思います。

これに対して塩崎厚生労働大臣は、「その他の労働法制との調整が必要なため」と繰り返し答弁しました。

これらはILOに加盟しているかなり多くの国が批准している中、アメリカは批准していないとのことで、民進党からの追求は「アメリカが批准していないから日本も批准しなくてもよいということか。安倍総理はTPPについて日本がリーダーシップをとると言っているのではないのか」というものです。

胸を張ってILO条約の批准ができる国へ

現実問題として111号条約の雇用及び職業についての差別待遇がないとは言えない状況でもあり、105号条約の強制労働についても輸入しているものの中にはこれに該当するものもあり得るという中で批准できないというのが正直なところかと思います。

なお、TPPの「第19章 労働」では、労働者の権利、労働法令の執行、企業の社会的責任などを初め、全15条で構成されています。

内容的には、何一つとして間違っていることは記載されていないと思いますが、現実問題との兼ね合いということでしょうか。胸を張ってILO条約を批准できる国にしたいものです。

人材サービスに携わる皆さんは、トランプ氏の動向も含め、TPPについて他山の石とせず、一定の関心をもって成り行きを見守る必要がありそうです。

 

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