経済産業省すっかり、周りは秋の気配です。なんとなく肌寒ささえ感じますね。

さて、先週、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の第16回ハイライト・セミナー「生産性向上と働き方改革」にいってきました。

…が、こんなことは、ほとんどないことですが、開始時間を14:00と午後4:00を間違え、会場に到着した時にはすでにほぼ終了。トホホ。。

お目当ては、慶応義塾大学大学院商学研究課教授の鶴光太郎先生の講演だったのですが、結局、資料だけ頂き、自分で考える時間を得ることになりました。

鶴光太郎先生鶴先生の資料を拝見していると政府の動向から、いわゆる正社員の無限定性、同一労働同一賃金、個別労働紛争、そして新たな機械化(人工知能)まで幅広く「働き方改革」について論じられており、改めて、時間を間違えたことが残念に思えてなりません。

この中で、同一労働同一賃金だけを採り出してみると、以下のように記載されています。

同一労働同一賃金の実現などの非正規 雇用の処遇改善へのインプリケーション

  •  「合理的理由のない待遇格差の禁止」というより 包括的な概念の下、ガイドラインや法制度の整備が進められる予定
  • 職務内容、勤続年数、キャリアコースの違いなどに基づく格差は客観的に合理的と認められる可能性
  • 学歴、勤続年数、職種で格差を設けることは合理的
  • 上記分析ではこうした要因で説明できる格差は大きいので、「合理的理由のない待遇格差の禁止」という取り組みを行ったとしても、賃金格差はそれほど縮小しないのでは?
  • 学歴、勤続年数、職種で格差を設けることは合理的だとしても違いに応じてどの程度の格差が合理的であるかを上記の分析が示しているわけではない。
  • また、たとえ、「同一労働同一賃金」が強制されたとしても、企業は正社員と非正規社員の職務・職種を変えることで賃金格差を正当化しようとするインセンティブを持つ。
  • 上記の分析においても職務の要因で説明される部分が比較的大きいことに注意。
  • したがって、格差を設けることが合理的と判断される場合でも、格差が要因の違いに見合ったバランスのとれたものにすること(均衡処遇)が重要であるし、どの程度の格差が妥当であるかをケースバイケースで検討する必要(特に、職務の場合)

同一労働同一賃金推進法に基づく議論では、当初の「同じ仕事をしていれば同じ賃金」というものから、「合理的理由のない待遇格差の禁止」という解釈に着地しそうだということはすでに周知のとおりですが、私なりに考えると以下のようなことになるのではないかと思います。

  • 企業は、待遇格差がある場合にその理由を説明する義務を負う。人材派遣の場合は、その差を説明できるようにする必要がある。いずれにしても説明責任が求められる。できる派遣社員はできない正社員のことを知っていることが多いとは思いますが…。
  • それなりの説明があったとしても、実際の賃金格差は現在の4割から2割前後に収まるよう格差是正のガイドラインが設定される。ただし、「企業は正社員と非正規社員の職務・職種を変えることで賃金格差を正当化しようとする」ため、これが高じると、いわゆる非正規雇用者の教育訓練の度合いはむしろ低下する、または直接雇用の道を閉ざすのでは?
  • 社員食堂、保育施設、交通サービスなどの福利厚生施設や共有設備の利用について 正規労働者と同等の扱いが求められる。人材派遣にも交通費支給が義務づけられるかも。まずは努力義務?

いずれにしても、「同一労働同一賃金」は、理想として向かう方向としてはよいのですが、法律でこれを縛るのは並大抵のことではないですね。特効薬的な正規・非正規問題の解消にはならないような気がします。

企業が自ら ILO の根本原理「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である」に気づき、自主的に是正をしていくことを考えるようになるよう誘導していくことが必要だと思います。

すでに企業のビジネスプロセス全体を見れば、大きな格差はマイナスだと気づいている企業もあると思います。

「同一労働同一賃金」の推進は、いわゆる非正規雇用を対象としたものなので、契約社員やパート、アルバイトまで含まれますが、人材派遣事業者にとっては負担が大きくなる施策でもあるため、今後ますます「真の経営力」が求められることになります。

 

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雇用が変わる

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