矢野総研のレポートによれば、労働者派遣市場は、2015年は前年比105%の実績、2016年は前年比102%の見込と報じられています。

その一方、労働契約法の5年の無期転換、労働者派遣法の雇用安定措置やキャリア形成支援、社会保険の適用拡大、キャリアカウンセラーの国家資格化、そして昨日の拙ブログでも採り上げた同一労働同一賃金の推進などの法整備により、人材サービスを提供する事業者にとっては、経営上はかなりの負担になっているというのが実情ではないでしょうか。

つまり、売上は堅調に推移しながらも、利益率は圧迫されているということです。

改めて考える「経営力」とは

経営力私は、このような状況を打開するためには目先の取り組みでは難しく、ビジネスの根幹として「経営力」を身につけ、経営基盤を盤石なものとすることが求められているのだろうと考えています。

ただし、この「経営力」という言葉、今一つ何を以て「経営力」というのかが、やや曖昧なように思います。

改めて少し調べてみると、松下幸之助さんは、かなり「経営力」という言葉にこだわっていたようです。

曰く、「経営革新の断行に当ってその基本をなすものは卓越した経営力」とのこと。これが発信されたのは、戦後間もない1946年。その内容を見ると実に含蓄があります。

経営革新の断行に当ってその基本をなすものは卓越した経営力

戦時戦後を通じて経営力は著しい低下を来し会社全般の活動力を鈍化させたが、今こそ再び経営力を強化して、これを会社経営理念であるところの、社会的必要な優良品の生産、従業員高水準給与の確保、経営の維持発展の為の適正利潤の確保の諸点に発現させ生産能率の向上、市場競争への必勝態勢の整備・利潤確保による増資態勢の確立を期さなければならない。

経営力の発揮は独断から出発した独裁であってはならない。広く合理的に衆智を集め、全員の情熱が結集されてはじめて強力な経営力が形成されるのであって、これが社長をはじめ各首脳者を原動力として会社の細部まで滲透するとき、我社の経営は危機を突破して安定圏に入り、将来の躍進を約束することができるのである。

この意味で社長は全従業員の協力を要望し提案を期待する。

「経営力」に必要とされるキーワード

ここから浮かび上がるキーワードを拾い、今風の言葉に置き換えてみると、概ね「経営力」で必要とされることが明らかになるように思います。

  • 経営理念
  • 社会的ニーズ
  • 商品(サービス)の向上
  • 従業員の待遇
  • サステナビリティ
  • 適正利益
  • 生産性の向上
  • マーケティング
  • 資金調達
  • 財務体質の強化
  • 経営者のあり方
  • チームワーク
  • マネジメント
  • リーダーシップ
  • 人材育成
  • リスクマネジメント
  • 安定
  • 成長

まずは「経営理念」の浸透と実践から

真っ先に掲げられていることは、やはり「経営理念」ということになります。

この「経営理念」を浸透させ、全社で実践することが最も重要で、その達成のために「何を」「どのように」「どうする」か、的確な「経営戦略」を立てることが大切ということになるということでしょう。

そして、「経営戦略」を支えるものとして「組織」や「制度」を整え「人材育成」を図ることが求められます。

さらに「マーケティング力の向上」「サービスの質の向上」「生産性の向上」「リスクマネジメント」や、適正な利益を得ることで「財務体質の強化」を図ること。

結果として、安定と成長をもたらし、持続的成長につなげる力が「経営力」ということではないでしょうか。

たぶん、ここまでの話を読んでくださった方の多くは、「当たり前でしょ」と思われるのではないでしょうか。

しかし、その「当たり前」のことが実際にできていますか?と尋ねられたらどうでしょうか。多くの場合、できているとは言いづらいこともあるのではないでしょうか。

これらは、アタマではわかっていても、なかなか思うようにはいかないのが一般的なのです。

「当たり前」のことを行うための「しくみ」創り

「当たり前のことを当たり前に行うことは難しい」とよく言われます。

少なくとも「当たり前のことを当たり前に行う」ためには、「当たり前に行おう」とする意思が必要です。

「経営」は英語では「Corporate Management」ですが、結局は、経営トップが経営者として「当たり前に行う」ための正しい判断をくだし、リーダーシップを発揮して「経営力」を高めるしかないのだと思います。

そして、その「当たり前」のことを少しでも実行しようとするならば、それ相応の「しくみ」を創ることが必要なのです。

現状に合わせた変革を

これらの一連のプロセスは、時と共に変革が必要になります。

企業のライフサイクルとして、導入期、成長期、安定期、衰退期があると言われますが、可能な限り成長期や安定期を継続させるためには、その都度、状況にあった「経営戦略」を立て、「組織」「制度」を整備し、「人材育成」を行うことが必要です。

創業当時のままいつまでも同じということはありません。逆に創業当時のままではそれ以上の成長はないのです。

話を最初に戻しますが、「経営力」が必要とされるいま、「何を」「どのように」「どうする」のかが問われています。

俗にいう「ゆでガエル」になる前に、いまこそ「真の経営力」を磨くときではないでしょうか。

 

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