同一労働同一賃金ガイドライン案本日12月20日18:00~19:00に開催された「第5回働き方改革実現会議」で、予定通り「同一労働同一賃金」に関する政府のガイドライン案が示されました。

ガイドライン案は、「1. 前文」「2. 有期雇用労働者及びパートタイム労働者」「3. 派遣労働者」という三部構成になっています。

ガイドラインの目的は以下のとおりです。基本的には「労使によって」「労使の話し合い」「労使で共有」というスタンスで、それ自体は極めてリーズナブルな路線かと思います。

(目的)

○本ガイドライン案は、正規か非正規かという雇用形態にかかわらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定するものである。同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用 労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。

○もとより賃金等の処遇は労使によって決定されることが基本である。しかし、我が国においては正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には欧州と比較して大きな処遇差がある。政府としては、この問題の対処に当たり、同一労働同一賃金の考え方が広く普及しているといわれる欧州制度の実態も参考としながら検証した結果、それぞれの国の労働市場全体の構造に応じた政策とすることが重要との示唆を得た。

○我が国の場合、基本給をはじめ、賃金制度の決まり方が様々な要素が組み合わされている場合も多いため、同一労働同一賃金の実現に向けて、まずは、各企業において、職務や能力等の明確化とその職務や能力等と賃金等の待遇との関係を含めた処遇体系全体を労使の話し合いによって、それぞれ確認し、非正規雇用労働者を含む労使で共有することが肝要である。

○今後、各企業が職務や能力等の内容の明確化と、それに基づく公正な評価を推進し、それに則った賃金制度を、労使の話し合いにより、可能な限り速やかに構築していくことが、同一労働同一賃金の実現には望ましい。

○不合理な待遇差の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成・能力開 発などを含めた取組が必要であり、特に、能力開発機会の拡大は、非正規雇用労働者の能力・スキル開発により、生産性の向上と処遇改善につながるため、重要であることに留意すべきである。

○このような正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取り組みを通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃することを目指すものである。

「有期雇用労働者及びパートタイム労働者」について先に触れると、以下について、細かく不合理な待遇差に該当するか否かについて記載されています。

  • 基本給(経験・能力、業績・成果、勤続年数、昇給)
  • 手当(賞与、役職、特殊作業、特殊勤務、制皆勤、時間外労働、深夜・休日労働、通勤・出張、食事、単身赴任、地域)
  • 福利厚生(施設、社宅、慶弔休暇、健康診断、病気休職、法定外年休)
  • その他(教育訓練、安全管理)など

さて、このガイドライン案では、わざわざ「有期雇用労働者及びパートタイム労働者」と「派遣労働者」が分けられていることになるのですが、「派遣労働者」については、以下のように記載されています。

3.派遣労働者

派遣元事業者は、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一である派遣労働者に対し、その派遣先の労働者と同一の賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。

また、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情に一定の違いがある場合において、その相違に応じた賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施をしなければならない。

働き方改革実現会議「有期雇用労働者及びパートタイム労働者」には12ページにわたって事細かに記載されている一方、「派遣労働者」はこれだけです。

遡ると、12月16日の拙ブログ「「同一労働同一賃金」派遣先社員と同一待遇!?」でもお伝えしたように「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」 の中間報告で、「労働者派遣については、まず派遣元内の待遇差の是正が必要 派遣先社員との均等・均衡待遇は、丁寧な制度設計が必要」と整理されていることから、やはり「まだこれから」ということなのでしょう。

たぶん、これを免罪符に「労働契約法」「パートタイム労働法」「労働者派遣法」の一括改正は見送りとなるような気がします。派遣法の改正は少し遅れることになると思いますが、平成24年法や27年法の附帯決議の見直しなども改正論議に含めてほしいものです。

今後は、このガイドライン案をもとに、関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて最終的に確定するそうですが、冒頭にあったように「労使による」が基本だということ、また派遣労働がすでに職務型の雇用形態であることをもとに議論をしてほしいと思います。

「同一労働同一賃金」は考え方としては理想だと思います。途方もなく長い時間がかかること、理想は理想として実際には実現は不可能であることも踏まえ、まず一歩を踏み出すことに意義があると考えるべきでしょうか。始めなければ格差が開く一方ですからね。

同一労働同一賃金ガイドライン案 (全文)

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