こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

一気に桜が咲きましたね。今週末こそ花見かと思いきや天気が怪しそうですね。

さて、先週末3月31日に厚生労働省から「平成27年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」が公表されました。

平成27年度労働者派遣改正法が、9月30日に施行されたこともあり、その内容がとても複雑です。

複雑なだけであれば、頑張って解読するのですが、残念なことにデータの継続性も保たれなくなってしまっているので、何がどう増減したのかもはっきりしたことはわかりません。

以前、その恐れを指摘したことがあると思いますが、マーケティング上、非常に困ったことになっています。

派遣労働者数は増加?

一番よくわからないのが派遣労働者数です。

改正前の平成27年4月1日~平成27年9月29日の約21万人と改正後の平成27年9月30日~平成28年3月31日の約130万人という2つの数字があります。

改正前では、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業に分かれ、さらに一般には常時雇用以外の労働者(常用換算)が計上されていました。

改正後には、労働者派遣事業と(旧)特定労働者派遣事業に分かれ、されにそれぞれに無期雇用と有期雇用が計上されています。

したがって21万人と130万人を単純に足せばよいと言うものではなさそうです。

法律が変わったのだから、法律どおりに集計したと言ってしまえばそれまでですが、期中で変わったこともあり、ますますよくわかりません。

厚生労働省も増減比率を示しておらず、計算不能?ということなのでしょうか。

派遣先数は16.9%減少

派遣先企業が約17%も減少しています。しかも、労働者派遣事業の19.1%減に対して(旧)特定労働者派遣事業が2.6%減と、圧倒的に労働者派遣事業で派遣先企業が減少しています。

(旧)特定労働者派遣事業に対する規制が強化されたため、それが減少するならば分かるのですが、これはどういうことでしょう。

内訳をみてみなければ分かりませんが、規制強化に伴い特定から一般に移ったということでしょうか。

それとも、従来、一般労働者派遣事業者から派遣社員を受け入れていた企業が、人材派遣サービスを利用することを止めたということでしょうか。

これだけをみると(旧)特定労働者派遣事業に対する規制強化の思惑が外れたことになります。ただ、特定については3年間の猶予期間があるため、再来年にならないとその結果はわからないということかもしれません。

売上は4.4%向上

派遣先企業が減少しているにもかかわらず、売上が増加しているというのは、一つの派遣先企業での派遣受入人数が増えたか、派遣料金が大幅に向上したかのいずれかということになると思います。

しかし、派遣料金、賃金とも労働者派遣事業で1%に満たない向上であることから、同一派遣先企業での派遣受入人数が増えたということになります。

そうだとすると、人材派遣サービスに魅力がなくなった派遣先企業が利用をやめる一方、従来から人材派遣サービスに便宜を感じていた企業は人材派遣サービスの利用を増やすという傾向があるのではないかと思われますがいかがでしょう。

従来、人材派遣サービスを使っていなかった企業が大幅に利用を始めたということも可能性としてはありますが、実際にはあまり考えられませんね。

マクロのマーケティング的には既存顧客のフォローとその企業でのアップセル、クロスセルが有効ということが言えると思います。

市場の情報入手が必要

業務別の労働者派遣者数など細かいことについては継続性のある資料が見当たりません。

一方、派遣料金、賃金などについては業務別に細かく公表されているので、今後、同一労働同一賃金に伴う法改正では、それなりに有効だと思います

いずれにしても、一番問題なことは、継続的な情報が得られないことです。

事業報告書の集計結果のようなデータは民間では入手できないので困りますね。

客観的な市場動向を掴めないということになるので、今後、現在の情報の蓄積がされるまでしばらくは自前で情報を入手していくことが必要になるでしょう。

お陰さまで好評発売中です!ご注文は、Amazon からお願いします。

全国の紀伊國屋書店、丸善ジュンク堂、ブックファースト、有隣堂、三省堂書店などでもご購入いただけます。

雇用が変わる

関連記事: