こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

先日、3月29日の拙ブログ「『働き方改革実行計画』、派遣はどうなる?」では、同一労働同一賃金について、人材派遣が派遣元均衡でもよいということをお伝えしました。

しかし、働き方改革の実行計画全体を見渡すと、派遣のことはごく一握りのことです。

本文だけでも28ページもあるので、なかなかすべてを細かく見ていくことができませんが、とりあえず全体像から押さえておきたいと思います。

働き方改革の意義

冒頭の「働く人の視点に立った働き方改革の意義」から、キーワードを拾ってみると、まず現状認識として「イノベーションの欠如」「生産性向上の低迷」「革新的技術への投資不足」が挙げられています。

そしてその解決策として「労働参加率の向上」「画一的な労働制度の除去」「多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会の追求」「転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立」と続きます。

さらに、今回の働き方改革で最も力が入っている「罰則付きの時間外労働の上限規制」を労働基準法70年の中で歴史的な大改革と位置づけたうえで、長期的かつ継続的に実行していくことが必要であり、継続的に実施状況を調査し、施策の見直しを図るとしています。

これが働き方改革の全体像ということでしょう。

解決策となる内容を読めば読むほど人材サービスにとってはビジネスチャンスがあるように思います。

初会合で掲げられたテーマ

ご存知のように、昨年9月27日の「働き方改革実現会議」の初会合では、以下の9項目が優先順位も含めて掲げられました。

  1. 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善。
  2. 賃金引き上げと労働生産性の向上。
  3. 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正。
  4. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題。
  5. テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方。
  6. 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備。
  7. 高齢者の就業促進。
  8. 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立。
  9. 外国人材の受入れの問題。

報道では、ほとんど長時間労働の是正にスポットが当たっていましたが、その他の議論はどうだったのでしょうか。

本当に議論をしたのか疑問

働き方改革実現会議は、全部で10回開催され、いずれも1時間程度。初回と最終回を除いた8回で、当初テーマとして掲げられた9項目が議論されたことになります。

そのうち長時間労働の是正と同一労働同一賃金については複数回議題として挙げられましたが、それ以外は、委員が若干コメントしただけのものばかりです。

これが実行計画として法律の方向性を決めてしまうのですから怖ろしいですね。

御前会議だから仕方がないのかもしれませんが、実行計画が示されるまでのプロセスは不透明です。

微妙に違うテーマ設定と実行計画

それぞれの項目を実行計画の項目と照らし合わせると、以下のようになります。

テ)=初会合で掲げられたテーマ、実)=最終的な実行計画です。

  1. テ)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善。→ 実)同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
  2. テ)賃金引き上げと労働生産性の向上。→ 実)賃金引上げと労働生産性向上
  3. テ)時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正。→ 実)罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
  4. テ)テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方。→ 実)柔軟な働き方がしやすい環境整備
  5. テ)働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備。→ 実)女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
  6. テ)病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立。→ 実)病気の治療と仕事の両立、実)子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
  7. テ)雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題。→ 実)雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援、実)誰にでもチャンスのある教育環境の整備
  8. テ)高齢者の就業促進。→ 実)高齢者の就業促進
  9. テ)外国人材の受入れの問題。→ 実)外国人材の受入れ

若干の違いはありますが、おおむね当初のテーマどおりに実行計画が示されたことになります。

10時間にも満たないような時間の議論でこれだけ広範囲あ項目について28ページにわたる実行計画ができてしまうのですから、内閣府の作文能力はすごいものがあります。

ビジネスチャンスとしての働き方改革

先日の拙ブログ『働き方改革実行計画』、派遣はどうなる?では、労働者派遣法に与える影響として実行計画を採り上げましたが、一方、人材サービスのビジネスの観点からみるとどうでしょう。

今日は個々には採り上げませんが、内容をよく読めば、ビジネスチャンスは多くあることがわかります。

すべてに渡って戦略に織り込むことは難しいとは思いますが、自社の強みを生かしてどこに注力するかを考えることが必要となると言えるでしょう。

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