こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

今日は働き方改革実現会議の実行計画の中から、同一労働同一賃金を採り上げてみます。

本来、人材派遣は職務給

いわゆる非正規雇用の中でも、人材派遣の賃金については、派遣元均衡でもよいということは、すでに3月9日のブログ「『働き方改革実行計画』、派遣はどうなる?」で書きました。

もともと職務給で賃金が設定されることが多い人材派遣が派遣元均衡も可となるのは、ある意味当然のことだと思いますが、とりあえず今回の実行計画では、常識的なところに落ち着いたかなという感じです。

本来の同一労働同一賃金は、多くの人材派遣で決定されている職務給による設定であることが多く、むしろ人材派遣に限らず今後はこの職務給による賃金設定が増えていくことが望まれるのではないでしょうか。

同一労働同一賃金のガイドライン

ただし今回の実行計画では、人材派遣の場合、条件付きで派遣先との均衡を求めないとされているだけで、同一労働同一賃金を推進しなくてもよいというわけではありません。

基本的には、将来の役割期待、賃金の決定基準・ルール、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならないということが前提です。

まず、3つの条件、①同種業務の一般の労働者の賃金水準と同等以上であること。②派遣労働者のキャリア形成を前提に能力を適切に評価して賃金に反映させていくこと。③賃金以外の待遇について派遣元事業者に雇われている正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないこと。をすべて満たす必要があります。

これらを満たしていなければ派遣先企業との賃金の均衡を図ることが求められます。

賃金として対象となるもの

賃金については、具体的に以下が対象として挙げられています。

  • 基本給
  • 昇給
  • ボーナス(賞与)
  • 役職手当 
  • 特殊作業手当(業務の危険度等)
  • 特殊勤務手当(交代制勤務など)
  • 時間外労働手当の割増率
  • 深夜・休日労働手当の割増率
  • 食事手当(通勤手当・出張旅費、勤務時間内に食事時間が挟まれている際)
  • 単身赴任手当
  • 地域手当

人材派遣ではあまり該当しないようなものも含まれていますが、例えば賞与についても、不合理な実態があればそれ相応の是正が必要になります。

職務分離を助長する可能性

すでに現行の労働者派遣法では派遣先企業との均衡について配慮義務が課されています。

労働者派遣法第30条の3、1項

派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力若しくは経験等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するように配慮しなければならない。

労働者派遣法第40条5項

派遣先は、第三十条の三第一項の規定により賃金が適切に決定されるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先に雇用される労働者の賃金水準に関する情報又は当該業務に従事する労働者の募集に係る事項を提供することその他の厚生労働省令で定める措置を講ずるように配慮しなければならない。

法律の内容としては、すでに十分ではないかと思いますが、実行計画では派遣先企業への義務についてさらに踏み込んだ表現がされています。

今後の法改正の議論では、一つの焦点になるのではないかと思われますが、読めば読むほど、これ以上に規制が厳しいものになると、むしろ職務分離を助長するように思います。

また、実行計画にもあるように「派遣先が変わるごとに賃金水準が変わることで不安定となり、派遣元事業者による段階的・体系的な教育訓練等のキャリアアップ支援と不整合な事態を招く」ことにもつながるのではないでしょうか。

同等以上の仕事をしても、派遣先企業が変わることで待遇が悪くなるというのは、おかしな話ですよね。

賃金以外の均衡

実行計画では、同一労働同一賃金のガイドラインとして、基本給、昇給、ボーナス、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生もカバーするとしています。

具体的には以下が対象とされています。

  • 食堂、休憩室、更衣室などの福利厚生施設の利用
  • 転勤者用社宅
  • 慶弔休暇
  • 健康診断に伴う勤務免除・有給保障
  • 病気休職
  • 法定外年休・休暇
  • 教育訓練

拙著「雇用が変わる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント」でも書いたように、派遣先企業がその成果を得るためには派遣社員のモチベーション向上も重要です。

たまに派遣社員が社員食堂や休憩室を使わせてもらえないというような話も耳にしますが、これはむしろ珍しいから話題になるだけで、すでに多くの派遣先企業では問題なく実施されているのではないでしょうか。

派遣元、派遣先の講ずべき措置

これについても、すでに労働者派遣法で派遣元、派遣先の講ずべき措置として定められており、特に教育訓練については平成27年改正法で有給無償などという過剰なほどの規制がかかっています。

教育訓練自体は否定しませんが、いわゆる正社員でもまともな教育訓練がない企業も多いなかで、人材派遣にだけこのような規制がかけられるのも妙な話です。

労働者派遣法第30条の3、2項

派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者について、教育訓練及び福利厚生の実施その他当該派遣労働者の円滑な派遣就業の確保のために必要な措置を講ずるように配慮しなければならない。

労働者派遣法第40条2項

派遣先は、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者について、当該派遣労働者を雇用する派遣元事業主からの求めに応じ、当該派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事するその雇用する労働者が従事する業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練については、当該派遣労働者が既に当該業務に必要な能力を有している場合その他厚生労働省令で定める場合を除き、派遣労働者に対しても、これを実施するよう配慮しなければならない。

労働者派遣法第40条3項

派遣先は、当該派遣先に雇用される労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であつて、業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その指揮命令の下に労働させる派遣労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない。

法律的には本法ではなく政省令の改正で済むような話のような気もしますがどうなんでしょうね。今月中にも労働政策審議会が開催されることになるのだと思いますが、今後の注目点です。

通勤手当についての考え方

同一労働同一賃金について今後、特に気をつけなければならないこととして通勤費が指摘されています。

すでに厚生労働省からは、本年2月28日づけで、労働契約法20条を踏まえて通勤手当について不合理にならないように留意する旨の周知がされています。

(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)

労働契約法20条

有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

厚生労働省からの周知の文書を読むと非常に奥歯にものが挟まったような言い回しになっているのですが、要するに交通費を支払えということでしょうか。

本来、これも契約自由の原則が適用されるべきもので、当該条件が嫌であれば労働者は契約をしなければよいということなのだと思いますが、適切な対応が求められます。

ちなみに本日、先週の金曜日、4月7日の塩崎厚生労働大臣の会見の概要が公表されましたが、働き方改革について以下のようにコメントしています。

塩崎大臣会見概要

(2017.4.7.(金)8:45~8:49)

(記者)

働き方改革実行計画を受けて今日、労政審の分科会が始まりますが、これに対する大臣の期待と、議論の進め方で期待されることがありましたらお聞かせください。

(大臣)

今日、働き方改革のなかの、長時間労働についての労政審の分科会がスタートいたします。

初めて、罰則付きの法律で、時間外労働の上限を設けるという極めて画期的な前進が図られるわけでありますけれども、その詰めをしていただくということで、是非、関係する諸課題に答えを出していただくとありがたいと思います。

今回の働き方改革は、やはりこの日本全体の暮らしも変えていくくらいの大きい話で、あらゆる問題が関わってくることであります。

予断をもたずに広い議論をしていただいて、実行計画を肉づけていただく議論を労政審ではお願いしたいと思っておりますし、全国的にも国民的な議論がこれをきっかけに起こるということを私たちは大いに期待を申し上げたいと思います。

「実行計画を肉づけていただく」ということは、実行計画有りきということなのだとは思いますが、そのうえで「国民的な議論がこれをきっかけに起こるということを期待」とのことなので、業界としてもきちんと声を挙げた方がいいですね。

以下、実行計画から同一労働同一賃金の部分について、全文を記載しておきます。

2.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善

(1)同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備

(基本的考え方)

我が国の非正規雇用労働者は、現在、全雇用者の4割を占めている。不本意ながら非正規の職に就いている方の割合はここ数年低下しているが、特に女性では結婚、子育てなどもあって、30代半ば以降自ら非正規雇用を選択しいる方が多い。

非正規雇用で働く方の待遇を改善し、女性や若者などの多様な働き方の選択を広げていく必要がある。

これは、デフレで傷んだ中間層を再興し、ますます希少となってくる人材を社会全体で育て、1人ひとりに自己実現の道を切り開くことにもなる。

非正規雇用の割合が高いシングルマザーや単身女性の貧困問題の解決のためにも重要である。

同一労働同一賃金の導入は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲をもって働けるよう、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。

賃金等の処遇は労使によって決定されることが基本であるが、我が国においては正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には欧州と比較して大きな処遇差がある。

同一労働同一賃金の考え方が広く普及しているといわれる欧州の実態も参考としながら、我が国の労働市場全体の構造に応じた政策とすることが重要である。

我が国の場合、基本給をはじめ、賃金制度の決まり方が様々な要素が組み合わされている場合も多いため、同一労働同一賃金の実現に向けて、まずは、各企業において、職務や能力等の明確化とその職務や能力等と賃金等の待遇との関係を含めた処遇体系全体を労使の話し合いによって、それぞれ確認し、非正規雇用労働者を含む労使で共有することが肝要である。

同一労働同一賃金の実現に向けては、各企業が非正規雇用労働者を含む労使の話し合いによって、職務や能力等の内容の明確化とそれに基づく公正な評価を推進し、それに則った賃金制度など処遇体系全体を可能な限り速やかに構築していくことが望まれる。

その際、ベンチャーや中小企業については、職務内容が複層的又は流動的であることも勘案し、労使の話し合いにより処遇体系に工夫をしていくことが望ましい。

職務や能力等の明確化と公正な評価については、法制度のみでなく、年功ではなく能力で評価する人事システムを導入する企業への支援や、様々な仕事に求められる知識・能力・技術といった職業情報の提供、技能検定やジョブカード等による職業能力評価制度の整備などの関連施策と連携して推進を図っていく。

このような正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃することを目指す。

(同一労働同一賃金のガイドライン)

何が不合理な待遇差なのか、具体的に定めることが重要である。

政府が示した同一労働同一賃金のガイドライン案(別添1)は、正規か非正規かという雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現に向けて策定したものである。

その対象は、基本給、昇給、ボーナス、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生もカバーしている。

原則となる考え方を示すとともに、中小企業の方にもわかりやすいよう、典型的な事例として整理できるものについては、問題とならない例、問題となる例として、事例も多く取り入れている。

ガイドライン案に記載していない待遇を含め、不合理な待遇差の是正を求める労働者が裁判で争えるよう、その根拠となる法律を整備する。

今後、本ガイドライン案を基に、法改正の立案作業を進める。

ガイドライン案については、関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて、最終的に確定し、改正法の施行日に施行することとする。

また、本ガイドライン案は、同一の企業・団体における、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正することを目的としているため、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に実際に待遇差が存在する場合に参照されることを目的としている。

このため、そもそも客観的にみて待遇差が存在しない場合については、本ガイドライン案は対象としていない。

ガイドライン案の概要は、以下のとおりである。

① 基本給の均等・均衡待遇の確保

基本給が、職務に応じて支払うもの、職業能力に応じて支払うもの、勤続に応じて支払うものなど、その趣旨・性格が様々である現実を認めた上で、 それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める。

すなわち、均衡だけでなく、均等にも踏み込んだものとしている。

昇給についても、勤続による職業能力の向上に応じて行おうとする場合には、同様の職業能力の向上には同一の、違いがあれば違いに応じた昇給を求める。

② 各種手当の均等・均衡待遇の確保

ボーナス(賞与)について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める。

役職手当についても、役職の内容、責任の範囲・程度に対して支給しようとする場合、同一の役職・責任には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める。

そのほか、業務の危険度等に応じて支給される特殊作業手当、交代制勤務などに応じて支給される特殊勤務手当、所定労働時間を超えて同一の時間外労働を行った場合に支給される時間外労働手当の割増率、深夜・休日労働を行った場合に支給される深夜・休日労働手当の割増率、通勤手当・出張旅費、勤務時間内に食事時間が挟まれている際の食事手当、同一の支給要件を満たす場合の単身赴任手当、特定の地域で働くことに対する補償として支給する地域手当等については、同一の支給を求める。なお、基本給や各種手当といった賃金に差がある場合において、その要因として賃金の決定基準・ルールの違いがあるときは、「無期雇用フルタイム労働者と有期雇用労働者又はパートタイム労働者は将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という主観的・抽象的説明に終始しがちであるが、これでは足りず、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならない。

③ 福利厚生や教育訓練の均等・均衡待遇の確保

食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設の利用、転勤の有無等の要件が同一の場合の転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障については、同一の利用・付与を求める。

病気休職については、無期雇用パートタイム労働者には無期雇用フルタイム労働者と同一の、有期雇用労働者にも労働契約の残存期間については同一の付与を求める。

法定外年休・休暇については、勤続期間に応じて認めている場合には、同一の勤続期間であれば同一の付与を求め、特に有期労働契約を更新している場合には、当初の契約期間から通算した期間を勤続期間として算定することを要することとする。

教育訓練については、現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施しようとする場合、同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を行わなければならない。

④ 派遣労働者の取扱派遣元事業者は派遣労働者に対し、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情が同一であれば同一の、違いがあれば違いに応じた賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施が求められる。

(法改正の方向性)

職務内容、職務の成果・能力・経験等に対する正規雇用労働者とパートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者を通じた公正な評価・待遇決定の推進や、そうした公正な待遇の決定が、労働者の能力の有効な発揮等を通じ、経済及び社会の発展に寄与するものである等の大きな理念を明らかにした上で、ガイドライン案の実効性を担保するため、裁判(司法判断)で救済を受けることができるよう、その根拠を整備する法改正を行う。

具体的には、パートタイム労働法1、労働契約法2、及び労働者派遣法3の改正を図ることとし、その改正事項の概要は、以下のとおりとする。

① 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備

現行制度では、均等待遇の規定は、有期雇用労働者については規制がない。

また、派遣労働者については、均等待遇だけでなく、均衡待遇についても規制がない。

この状況を改めるため、有期雇用労働者について、均等待遇を求める法改正を行う。

また、派遣労働者について、均等待遇及び均衡待遇を求める法改正を行う。

さらに、パートタイム労働者も含めて、均衡待遇の規定について、明確化を図る。

② 労働者に対する待遇に関する説明の義務化

裁判上の立証責任を労使のどちらが負うかという議論もあるが、訴訟においては、訴える側・訴えられる側がそれぞれの主張を立証していくことになることは当然である。

不合理な待遇差の是正を求める労働者が、最終的には、実際に裁判で争えるような実効性ある法制度となっているか否かが重要である。

企業側しか持っていない情報のために、労働者が訴訟を起こせないといったことがないようにしなければならない。

この点は、訴訟に至らずとも、労使の話合いの際に労働者が不利になることのないようにするためにも重要である。

現行制度では、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者のいずれに対しても、比較対象となる正規雇用労働者との待遇差に関する説明義務が事業者に課されていない。

また、有期契約労働者については、待遇に関する説明義務自体も事業者に課されていない。

今般の法改正においては、事業者は、有期雇用労働者についても、雇入れ時に、労働者に適用される待遇の内容等の本人に対する説明義務を課する。

また、雇入れ後に、事業者は、パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者の求めに応じ、比較対象となる労働者との待遇差の理由等についての説明義務を課する。

③ 行政による裁判外紛争解決手続の整備

不合理な待遇差の是正を求める労働者にとって、最終的に裁判で争えることを保障する法制度を整備するが、実際に裁判に訴えるとすると経済的負担を伴う。

このため、裁判外紛争解決手段(行政ADR)を整備し、均等・均衡待遇を求める当事者が身近に、無料で利用できるようにする

④ 派遣労働者に関する法整備

派遣元事業者は、派遣先労働者の賃金水準等の情報が無ければ、派遣労働者の派遣先労働者との均等・均衡待遇の確保義務を履行できない。

このため、派遣先事業者に対し、派遣先労働者の賃金等の待遇に関する情報を派遣元事業者に提供する義務などの規定を整備する。

一方、派遣労働者については、同一労働同一賃金の適用により、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わることで不安定となり、派遣元事業者による段階的・体系的な教育訓練等のキャリアアップ支援と不整合な事態を招くこともありうる。

このため、ドイツでは、労働協約を締結することで同一労働同一賃金の適用を除外している。

しかしながら単に労使の合意のみに委ねると、同一労働同一賃金の実効性を担保できない恐れがある。

このため、派遣労働者として十分に保護が図られている場合として以下の3要件を満たす労使協定を締結した場合については、派遣先労働者との均等・均衡待遇を求めないこととする。

この場合でも、単に要件を満たす労使協定を締結することだけでは足りず、3要件を満たす形で協定が実際に履行されていることが求められる。

<1>同種業務の一般の労働者の賃金水準と同等以上であること。

<2>派遣労働者のキャリア形成を前提に能力を適切に評価して賃金に反映させていくこと。

<3>賃金以外の待遇について派遣元事業者に雇われている正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないこと。

(2)法改正の施行に当たって

(法施行までの準備期間の確保)

中小企業を含め、本制度改正は企業活動に与える影響が大きいものとなるため、施行に当たっては、周知を徹底するとともに、十分な法施行までの準備期間を確保する。

(説明会の開催や相談窓口の整備などの支援)

同一労働同一賃金の法改正の施行に当たっては、説明会の開催や情報提供・相談窓口の整備等を図り、中小企業等の実情も踏まえ労使双方に丁寧に対応することを求める。

また、不本意非正規労働者の正社員化や賃金引上げを支援するとともに、賃金だけでなく諸手当を含めた待遇制度の正規・非正規共通化などに取り組む企業への支援の仕組みを創設する。

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