こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

働き方改革はまだ続きます。今日は「誰にでもチャンスのある教育環境の整備」。

内容をよく読んでみると、実行計画に書かれていること自体は悪くはないのですが、これを働き方改革という文脈で語られると若干違和感があります。

教育改革と捉えた方がよいような気がしないでもありません。

本来は密接につながっている話ではあるのですが、現在採り上げられている他の働き方改革と比較するとなんとなくフェーズ感が違うように思います。

機会の平等

子どもが生まれ育った環境にかかわらず、誰もが望んだ教育を受けられるようにするということは否定のしようがありません。

機会の平等が必要とされることは言うまでもありません。

金持ちしか良い塾、良い学校にしか行けず、結果として良い企業に就職するのはそのように経済的に恵まれた子どもだけだとしたら、本来、才能を持ち合わせた子どもの芽を摘んでしまうことになります。

ここで言う「良い」というのは、いわゆる優秀であるとか成績のレベルが高いということになるのでしょう。

偏差値教育の偏重というか、恐らく私の世代も含めて長い間、学校の成績がすべて、学歴がすべてという尺度でモノが語られてきたのだと思います。

少なくとも新卒の入り口時点ではこのような選別がされていることは未だに拭えていないのではないでしょうか。

そろそろそういう風潮からは脱却しなければならないでしょうね。

経済的な支援だけ?

この実行計画では終始、経済的な支援策についてのみ記載されています。

学歴をお金で買うような風潮があることも否めませんが、果たしてそれだけでしょうか。

実際には「何を教育するのか」ということが最も重要ではないかと思います。

本人の興味や関心を伸ばすということももちろん大切ですが、それと同時に時代の要請に合ったことを教育することも必要ではないでしょうか。

高度情報化が進む現在、どのような仕事でもICTを活用することが求められることは間違いありません。子どもの頃から何の抵抗もなく使えるようにしていくことが求められます。

また、グローバル化の中にあって外国語の習得も非常に大切です。ただ単に話せるだけではなく、相手国の文化や習慣などを理解した上で、きちんとコミュニケーションを図れるような人材が求められると思います。

単なるスキルだけでは不足

もちろん、ICTに関する技術やコミュニケーションといったスキルだけではビジネスはできません。すべての人がビジネスの世界に進むわけではないとは思いますが、人としてベースとなる力を養うことも必要だと思います。

仕事への意欲、使命感、チームワーク、コンプライアンスなどのマインド形成に加え、リーダーシップ、コミュニケーション能力、論理的思考、科学的思考、課題発見力やその解決力、タイムマネジメントなど一般的な社会生活においても必要となることを教育しなければなりません。

さらに自ら学ぶ力、考える力、理解する力、創造する力、また、それ以上に道徳観や倫理観の醸成が必要です。

働き方改革の文脈の中には、これらのことを働くこととつなげて施策とすることを入れて欲しいものです。

労働法制についての基礎知識も

もう一つ、重要なこととして労働法制についての基礎知識です。

男女雇用機会均等法は私が社会に出てすぐの頃に施行されました。ところが35年経ってもまだ「202030」(2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%)と言っています。

それどころか、その実現はほとんど夢物語のような状況です。

ことほど左様に労働法制は実態が伴うのに時間がかかるものなのだろうと思います。

仮に2019年に長時間労働是正や同一労働同一賃金に関連する法律が施行されたとしても、4月1日から即その法律に書かれているとおりになるかというと、そうはならないはずです。

これから社会に出る若い人たちにそのような基礎知識を身につかせ、それらの人が社会的に中心的な役割を担うようになったときに、それが常識化し、初めてそれらしくなっていくのではないでしょうか。

大局的に見るとそのような時間の経過も併せて教育をしていくということも必要なのだろうと思います。

人を育てることほど重要なことはないのではないでしょうか。

この時点では人材サービスに直接的に関係することはないのだとは思いますが、CSRの観点から学校教育を支援することは非常に意味があるのではないかと思います。

10.誰にでもチャンスのある教育環境の整備

子供たちの誰もが、家庭の経済事情に関わらず、未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることができる社会を創る。

そのためには、公教育の質の向上とともに、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければならない。

我が国は高等教育の漸進的な無償化を規定した国際人権規約を批准しており、財源を確保しつつ、確実に子供たちの進学を後押しできるような高等教育の経済的負担軽減策を推進する。

また、義務教育段階から学力保障のための教育環境の充実を進める。

返還不要、給付型の奨学金制度を、新しく創設する。

本年から、児童養護施設や里親の下で育った子供たちなど、経済的に特に厳しい学生を対象に、先行的にスタートする。

来年以降、1学年2万人規模で、月2万円から4万円の奨学金を給付する。

無利子の奨学金については、本年春から、低所得世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに残存適格者を解消し、必要とする全ての子供たちが無利子奨学金を受給できるようにする。

貸与型の奨学金の返還についても、卒業後の所得に応じて返還月額を変える制度を導入することで、大幅に負担を軽減する。

また、既に返還を開始している方についても減額返還制度を拡充することにより、負担軽減を図る。

幼児教育についても、2017年度予算において、所得の低い世帯では、第3子以降に加え、第2子も無償とするなど、無償化の範囲をさらに拡大する。

引き続き、財源を確保しながら幼児教育無償化を段階的に推進するとともに、国公私立を通じた義務教育段階の就学支援、高校生等奨学給付金、大学等の授業料減免の充実等による教育費の負担軽減を図る。

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