こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

先日、業界の集まりに顔をだしたら、「最近ブログが止まっていませんか?」と言われてしまいました。逆に言うとちゃんと見てくれている人もいるということですね(笑)。

止まっている理由の一つは、昨今の人材不足、採用難でお問い合わせを頂くことも多くなっており、その対応に時間が取られていることがあります。採用に関するトピックについては、別途どこかで採り上げたいと思います。

もう一つの理由は、働き方改革の実行計画について一通り内容の確認をし、労政審での同一労働同一賃金の議論も一段落、ちょっとネタ切れという状態です(笑)。

実際にはネタがないわけではないのですが、さすがにブログに書けないような話もあり、既知のこと、公知のことであればともかく、そこら辺はわきまえているつもりです。

私自身がなにをやっているかということも、つまらないと思うので、基本的にはできる限り、人材サービス事業者の皆さんのお役に立ちそうな話題を採り上げようと思っています。

危険水域に達した「人手不足」

さて、今週の労働新聞6月26日号1面に「人材流動化の促進へ」という記事が掲載されています。

早速、その提言を行った経済同友会のページを調べてみました。

6月7日に「サービス産業生産性革命 ~ピンチ(人手不足)をチャンス(変革)に!~」と提言されています。

まず、認識として現在の人材不足についてデータを踏まえて説明があり、同友会によると、過去、有効求人倍率が「1倍」を超えた高度経済成長期」、「バブル期」、「リーマン・ショック前」と現在の2013年からの「1倍」超えとは毛色の違うとのこと。

このことは、拙著「雇用が変わる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント」でも書いていますが、リーマン・ショック後の景気回復といわゆる団塊の世代の労働市場からの退出が重なり、一気に人材不足が表面化したということなのでしょう。

少子高齢化の人口構成を見れば、この傾向は簡単に改善するものではなく、企業はこれをきちんと認識することがまず重要ということなのだと思います。

これまでとは異なり、圧倒的な売り手市場が続くということでしょう。

対策は働き手を増やすか仕事をなくすか

同友会は人材不足への対応策として「①労働供給の増加」と「②労働需要の減少」を挙げています。

当然と言えば当然ですが、これまで労働力は必要に応じて何とかなるという感覚が強かったのだろうと思いますが、これからはそうはいかないということでしょう。

私が採用について相談を受けるケースでもまだ何とかなるという感覚もなきにしも非ず。

例えば、求人媒体の選び方や見せ方で何とかなると考えられているフシが強いのですが、恐らく、そのようなことでは何ともならない状況になっているのではないでしょうか。

同友会は、「①労働供給の増加」については、女性、高齢者、外国人の労働参加率を上げることを挙げています。

また、「②労働需要の減少」については、ロボットの利用や国外へのアウトソーシングを念頭に置きながらも、実際には一人ひとりの生産性を向上させることが必要としています。

生産性が低い原因

職種や地域によっても生産性が異なるということの指摘もされていますが、特に我が国のサービス産業の生産性がOECD諸国の中で低いことが指摘されています。

ただ、私自身はこの生産性については、必ずしも低いとは思わない…というよりも、むしろ、欧米と比較しても一人ひとりの生産性は高いと思うのですが、利益額を従業員数で割ったような算出方法(労働生産性=付加価値額(売上高-費用総額+給与総額+租税公課)/従業者数)では、低いということになるようです。

本来は、サービス業は、一時間当たりどれだけのアウトプットを出せるのかという観点で算出されるべきとは思いますが、少なくとも同友会の算出方法では低いということのようです。

この提言の発表に当り、記者会見もされているのですが、その質疑応答を見ているとローソンの顧問が記者から24時間営業する必要があるのかと質問され、これについては競争があるからと非常に歯切れの悪い回答をしていました。

恐らく、一人一人は優秀で時間当たり生産性は非常に高いのに、企業の思い込みで24時間営業をしなければならないと考えていること自体が生産性を悪くしているのではないでしょうか。

私の家の近くにもコンビニはありますが、終電を過ぎた時間からはほとんど人はいません。そのような状況で24時間店を開けておく必要性は感じられません。

一般的な仕事でもやらなくてもよいことに時間をかけてやっていることは多いように思います。

矛盾する提言の内容

提言として同友会では以下の4点を挙げています。

  • テクノロジーの積極的活用
  • 過剰サービス・不適切なプライシングからの脱却
  • 労働慣行・雇用慣行の革新を
  • サービス産業活性化に向けた環境整備

テクノロジーの活用について考えると、時間の短縮や労力の削減ができるものについては、恐らく放っておいても進むのではないでしょうか。PCも当初は特別なもののように扱われていましたが、今ではPCを使わずに仕事ができないほどになっています。

過剰サービス・不適切なプライシングについては、前述のローソンの回答からもわかるように経営者側の問題が多きいと思います。24時間営業はある意味過剰サービスですし、不適切なプライシングは、納入業者への不適切な価格の要求になります。同友会の立場ではもう一歩踏み込んでほしいところです。

労働移動は人材サービスで

労働慣行・雇用慣行の革新については、以下の5つが挙げられています。

  1. 「生産性を上げれば賃金は上がる」を共通認識に
  2. ダイバーシティからインクルージョンへ
  3. 女性の労働参画を促進する環境作りを
  4. シニアの労働参画、ノウハウ共有を促進する環境作りを
  5. 人材流動性を高める

人材の流動化については、企業における転職支援制度の導入や、企業の枠を超えた「人材流動化プラットフォーム」の創設などを検討することが言われていますが、ここの部分こそが人材サービス事業者が担うべきところだと思います。

人材が過剰な産業から不足している産業への労働移動は、恐らく働く人びとにとってもよいことだと思います。

「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が、喧々諤々のうちに無理やり報告書がまとめられ、これから労政審での議論に移ることになると思いますが、労働者の保護を図りながらも円滑に労働移動ができる法制度が必要だと思います。

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