こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

台風5号はまだ日本列島に留まっているようですね。はっきりしない天気が続きますが、進路にあたる地域の方はくれぐれもお気をつけください。

厚生労働省政務三役決定

8月2日(水)深夜に内閣改造で新厚生労働大臣に加藤勝信氏が就任するとの報道があり、翌3日には組閣、同日の安倍総理の記者会見のあと、加藤勝信氏の会見もありました。

加藤厚生労働大臣は、働き方改革担当大臣も兼務するとのことで、これまで内閣府で働き方改革を牽引してきな内容を実現するフェーズに移す狙いがあるものと思われます。

その4日後の昨日8月7日(月)の閣議で副大臣、政務官を含めた政務三役も決定しました。

今日は、内閣改造から昨日の政務三役の決定も踏まえ、今後の労働法制がどうなっていくのかを見通してみたいと思います。

新内閣の意気込み

まず、安倍総理の記者会見から厚生労働行政について抽出すると以下とのことです。

平成29年8月3日

安倍内閣総理大臣記者会見

「働き方改革」の実行は、加藤大臣です。戦後ずっと続いてきた長時間労働の慣行を断ち切る同一労働同一賃金を導入し、正規と非正規の壁を打ち破る。働き方改革はいよいよ実行の段階に移ります。実行計画を取りまとめた加藤大臣に、厚生労働大臣として次の臨時国会で必要な法案の成立を目指してもらいます。

つぎに同日に閣議決定された新内閣の基本方針から厚生労働行政にかかわる部分です。

平成29年8月3日

閣議決定 基本方針

3.「一億総活躍」社会の実現

少子高齢化の流れに歯止めをかけ、50年後も人口一億人を維持するとともに、高齢者も若者も、女性も男性も、難病や障害を抱える人も、誰もが、今よりももう一歩前へ、踏み出すことができる社会を創る。

「一億総活躍」の社会を実現するため、明確な目標を掲げ、以下の「新・三本の矢」を放つ。すべての閣僚が、その持ち場において、全力を尽くし、従来の発想にとらわれない、大胆かつ効果的な施策を立案し、実施する。

最大のチャレンジは、「働き方改革」である。多様な働き方を可能とする社会を目指し、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現など、労働制度の大胆な改革を進める。

これまで加藤大臣は、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現に向け「働き方改革実行計画」をまとめ、法改正の方向性を示す立場でしたが、今後はこれを実現する立場に変わりました。

就任時の記者会見の模様についてはこちら(動画)のとおりです。また、組閣後初の厚生労働省での記者会見では以下のように述べています。

加藤大臣閣議後記者会見・共同会見(厚生労働記者会)概要

(H29.8.4(金)13:09 ~ 13:31 省内会見室)

(記者)

昨日、大臣は働き方改革について断行していきたいとおっしゃいましたが、連合の神津会長が続投する見通しであるなかで、連合では政労使合意が立ち消えになるなど色々とありましたが、大臣と神津会長は中学生の同級生であったり、これまでの働き方改革をともに進めてきたという経緯があると思います。神津会長が続投となるならば、法案成立に向けて進めやすいのではないかと思われますがいかがでしょうか。

(大臣)

連合の会長が続投されるかは正式に聞いておりませんし、それについて政府側からコメントすることは控えたいと思います。また、個人的な関係であるからといって、政策的に有利ということは別問題だと思います。いずれにしても、これまで神津会長には働き方改革の会議に参加をしていただいて、長時間労働の是正に向けて、様々なかたちでご協力いただきました。今回の政府が提出しております労基法改正にかかる議論については、今お話があったような経緯があります。我々としてはそこで提出していただいた要望については、総理から現段階では真摯に対応していきたいと申しておりますし、その姿勢には変わりありません。これから関係者の理解をいただきながらそれぞれの法案を提出したり、成案に向けて努力していきたいと思います。

(記者)

連合が高プロ、裁量労働の拡大と上限規制は同じ労基法の改正とはいえ、切り離して審議をしてほしいとずっと言ってきているわけですが、その一方で同じ法律なので、まとめて出したいという考えがあると思いますが、大臣として次の国会での法案審議の仕方はどのように現時点ではお考えですか。

(大臣)

現時点では、労基法の改正は国会に提出して、継続審議扱いとなっています。長時間労働の是正に係る部分については建議をいただいているところであります。これからどういう法案にするかは労働政策審議会での議論となると思います。そのうえで法律をこれまで作ってきているという状況のなかで、同じこの労基法の改正、2つの法律が出てくるとなると、それぞれの成立する状況が変わってくるわけですから、整合性をとっていく、あるいは混乱を招き得ないような状況を回避していくことから、まとめて議論していくという流れがあります。そういう意味も踏まえて対応していこうと考えています。

労働系に携わる政務三役は?

昨日、任命された副大臣、政務官は、以下の4名です。

  • 副大臣 牧原秀樹(自民党)
  • 副大臣 高木美智代(公明党)
  • 政務官 田畑裕明(自民党)
  • 政務官 大沼みずほ(自民党)

まず、牧原副大臣、まだ46歳と若く、埼玉5区の衆議院議員。民進党枝野幸男氏と同じ選挙区ですね。我が家の近くです。弁護士さんだったそうです。座右の銘に「たゆまぬ努力」とあり、稲盛和夫さんの経営12か条にもある言葉。私にとっては好感度高いものがあります(笑)。嫌いなものは、不正、犯罪、政治家の嘘、騙しとのことなので、ぜひその通りに行動をして欲しいものです。

つぎに高木副大臣ですが、福岡県北九州市生まれの64歳、比例区東京ブロック選出の衆議院議員。医療・福祉・子育て支援を担当するそうです。あまり労働系の話には関係なさそうですが、前任の古谷範子氏から引き継ぎがあるとすれば何らかの形でかかわることになるかもしれません。

政務官の田畑裕明氏は、富山1区の衆議院議員で44歳。たしか労働者派遣法の平成27年改正のときに質疑に立っていたと思います。私の記憶ではかなり的を射た答弁をしており、期待がもてると思います。ビジネスライクな答弁でした。その時以来、私はfacebookでつながってます(笑)。ちなみに奥さんは元宝塚の女優さんとのこと。

最後に大沼みずほ氏ですが、名前だけ見ると非常に失礼ながら大嫌いな名前ですが、イメージを払拭してもらえるのでしょうか。小学校以降ずっと東京の学校ながらなぜか山形在住、38歳とまだ若い。政策には労働関係のことはなく、保育や介護が関心事のようです。役回りとしてはスポークスマンでしょうか。

…というわけで、ざっくりプロフィールなどを見ると、今回の加藤厚生労働行政では、牧原副大臣と田畑政務官が今後の働き方改革関連法案推進の担い手になるのかなという感じです。

今後の労政審や検討会などへの参加の有無などでその位置づけが明らかになるように思います。

秋の臨時国会はどうなる?

少なくとも安倍総理は働き方改革を断行すると言っており、加藤大臣も同様に断行すると言っています。

これまで内閣府で働き方改革実行計画をまとめてきただけになおさらでしょう。

現状では、国会での自民党の議席は圧倒的なので、最終的には成立にもっていくのではないでしょうか。

ホワイトカラーエグゼンプションについては、すでに労働基準法の継続審議となっていることから、連合から大反対を受けているこの部分についての扱いが一番もめるタネになりそうです。

恐らく、長時間労働の是正、同一労働同一賃金については、比較的スムーズに通過するのではないでしょうか。

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