こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。
昨日は、高付加価値アウトソーシング研究会さんにゲスト講師としてヒューコムエンジニアリングの出井社長とともに登壇してきました。
お題は、「特定派遣の会社はどうなる?」「来年の10月以降の派遣業界はどんなイメージ?」「働き方改革はどうなりそう?(政局・法制度)」「この先派遣業界の進むべき道は?」と幅広いものでした。
一週間ほど前にお題をもらいながら、「ゆるーく」とのことだったので、ほとんど準備らしい準備もせず、ぶっちゃけトークも交えながら楽しい時間を過ごさせてもらいました。
■「さすが」と言われる業界に
ここで語られたことについては口外しないとのお約束でしたが、最後の「この先派遣業界の進むべき道は?」についてだけ、私からは「『さすが』と言われる業界に」と答えさせてもらいました。
昨日参加された事業者さんだけでなく、業界全体として人材派遣業界に対しての自信が欠落しているような気がします。
その自信の欠落はどこかにコンプライアンスを徹底しきれていないとか、人に対する姿勢が必ずしも十分ではない、あるいは、報道による後ろめたさがあるのではないでしょうか。
やるべきことをきちんとやり、正しいことを正しく行い、当たり前のことを当たり前にする、ということができていれば、堂々と胸を張って世のため人のために貢献しているのだと言い切れるのだと思います。
そして、私が「『さすが』と言われる業界に」と言ったのは、さらにその上、期待される価値を上回る価値の提供、それは言葉にしても、行動にしても、本当の意味で働く人びとのためであり、企業のためであるものであること。そこを目指しましょうということです。
■ 新政務三役の役割分担
つい、昨日の続きのモードで語ってしまいした(笑)。
昨日は、政務三役が決定し労働法制がどうなるかという話で、一億総活躍担当大臣で働き方改革担当大臣の加藤勝信大臣が厚生労働大臣と働き方改革大臣を兼務するということをお伝えしました。
安倍内閣の閣議決定でも方針として働き方改革を進めることが確認され、加藤大臣の人事を見ればこの方針をより確かなものにするということは見て取れます。
そして、副大臣と政務官ですが、8月8日(火)の加藤厚生労働大臣の記者会見で以下のように述べられています。
加藤大臣会見概要
(H29.8.8(火)10:47 ~ 10:57 省内会見室) 《閣議等について》 (大臣) 閣議についてですが、牧原秀樹厚生労働副大臣及び田畑裕明厚生労働大臣政務官に、働き方改革を担当する大臣としての私の補佐をするよう指示した旨をご報告致しました。 牧原副大臣、田畑政務官とともに、働き方改革の実現に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。 その後に行われました復興推進会議でありますが、そこにおいては、私から厚生労働省として引き続き避難生活の長期化や恒久住宅への移転に伴う被災者の心のケア、医療・介護提供体制の整備と人材確保、雇用のミスマッチへの対応などについて、被災者の心に寄り添いつつ、しっかりと取り組む旨を報告致しました。冒頭、私からは以上です。 |
昨日の私のブログの内容はドンピシャでしたね。やはり牧原副大臣と田畑政務官が働き方改革を担当するとのことです。
加藤大臣、牧原副大臣、田畑政務官というフォーメーションということになりますが、かなり低迷気味の現在の安倍内閣にあって、どこまで働き方改革を実現していけるかは注視していく必要がありそうです。
現実的には、野党もドロドロなので、ホワイトカラー・エグゼンプションを除けば、概ね法案は成立するような気がしますが…。
■ 厚生労働省の長時間労働
この記者会見では、質問が厚生労働省の長時間労働にも飛び火しています。
取り締まる側の立場にある厚生労働省の長時間労働については前々から言われていることですが、やはり民間に是正しろと言っているからには自ら範を示すことが大切ということになるでしょう。
加藤大臣からは、以下のように質疑応答されています。
(記者)
働き方改革には熱を持って取り組んでいらっしゃるということですが、厚生労働省は中央省庁の中でも残業時間が多いことで有名であります。 その受け止めと、今後国会対応で時間がとられることが多いということですが、大臣の省内の働き方改革について教えて下さい。 (大臣) 厚生労働省の中の実態については、私がきちんと把握しているわけではありませんけれども、これまで内閣人事局長をしていたり、あるいは働き方改革担当大臣の時にも民間だけではなくて、いわゆる公務員においても同じように進めていくべきだということでありました。 そのような観点から、厚生労働省はそうした長時間労働が多い役所であるという認識は持っておりましたし、前の塩崎厚生労働大臣もそういった認識のもとだと思いますけれども、積極的に取り組んでいくということでやってこられたわけであります。 いずれにしても、短くしようということだけではなくて、短くするためにどうするのかという意味において、民間では会議をなるべく少なくするなど様々な施策を組み合わせる中で、そうした長時間労働の是正を図っていくわけですから、単に掛け声だけではなくて具体的にどういった施策を、これまでも取ってきたと思いますが、それが徹底しているかしていないか、更にはそれ以外にも方策はあるかないかということも含めて、しっかりと私自身も取り組んでいきたいなと思っております。 国会についても、かなり各省で工夫をされていると思います。 これまでは国会の最後の質問者が出るまで課内の多くの方が待っていたという体制から、本当に必要なセクションだけ、あるいは輪番制である部署に偏らないように色々な工夫をされていると思います。 それも含めて厚生労働省においては、それがどのような形になっているのか私もチェックをさせていただいて、働き方改革、特に長時間労働の是正については、我々はしっかり言っていくわけでありますから、足元をしっかりやっていくのは当然のことだと思います。 |
■ 具体的な是正策を
認識として「足元をしっかりやっていくのは当然」とのこと。その通りですが、現時点では具体的な策は見当たりません。
そこで、どうしたら厚生労働省の長時間労働が是正できるかと勝手にいくつか考えてみました。
1.妙な精神論の廃止
いつも書くことですが、厚生労働省は環境省と同居しているせいか、夏の気温設定が異常に高く、恐らくあれでは仕事になりません。
エアコンの機器の温度設定は28度なのかもしれませんが、実気温で計測すべきではないでしょうか。
会議室などではおそらく35度ぐらいありそうです。
何度か厚労省の地下の食堂で昼食を食べたことが有りますが、お世辞にも美味しいとは思えません。職員の方の英気を養うためにももう少し配慮が必要ではないでしょうか。
これらは小さなことのように思われるかも知れませんが、企業で言えば従業員第一という観点と一緒です。
官僚が贅沢をしていると言われるのを避けたいという過剰忖度もあるのかも知れませんが、働くためのよい環境を提供しなければ、優秀な職員も集まりません。
2.生産性の向上策を
検討会や労政審の申込みなどをシステマチックにする必要があります。一事が万事と言いますが、私のような外部の人間でもわかるような事務的な部分が恐ろしくアナログ的ということは、恐らく省内のあらゆることが同様の可能性があります。
担当部署によっては、いまだにファックスで申込み、ほとんどはメール、経産省のようにWebで申込みのようなことはありません。データの入り口がバラバラということは、それ以降のオペレーションもバラバラなはずです。
突き詰めると、入館するにしても、職員は顔認証、訪問者も最初の登録を済ませれば二回目以降は顔認証とワンタイムパスワードでの入館のようなシステムを導入したら、受付も最少人数で済みます。
3.書類の訂正箇所の明示
人材派遣業界で評判が悪いのは「業務取扱要領」です。改定のたびにどこが改訂されているのかわからない。正誤表のようなものがついていないのです。これも一事が万事、他のことでもあるのではないでしょうか。
修正自体はやむを得ないこともあるのだろうと思いますが、一般企業では、どこを修正したのか誰が見てもわかるようにすることぐらいは、新入社員でもしつけられます。
これは、本省だけの問題ではなくそれを受ける労働局や民間事業者も500ページ近い中から修正箇所を探すという膨大な無駄を強いられているのです。
本省だけでなく、日本全国に生産性悪化を巻き散らかしているのですから質が悪いものがあります。
たまに「業務取扱要領」でも修正個所が明示されていることもありますが、関係者からは逆に「珍しく修正個所が書いてある」と驚きの声が上がるほどです。
4.国会運営の見直し
キャリア官僚の方の労働時間が長いことの最大の原因は国会答弁のための資料作成ではないでしょうか。
恐らく、前日になって質疑の事前通告があり、翌日までに答弁の資料を出せというような国会議員の無茶振りがあるのではないでしょうか。
これは一般企業ではかなり忌み嫌われる行為だと思います。少なくとも上司に当たる人間がこれをやると一遍に嫌われます。
むしろ、マネジメントできない上司の典型ということになるのだと思います。
もちろん、どうしても緊急を要することはあるとは思いますが、多くの場合は重要事項をなおざりにした結果、緊急事項が発生するのです。
その観点から言うと、国会議員から各省庁への資料依頼は、3就労日以内のものは受け付けないというぐらいのルールを作ったらいかがでしょう。
そもそも、法律が複雑すぎるのです。ピータードラッカーは、「複雑なものはうまくいかない」と言っています。
事実、労働者派遣法がうまくいっているとは思えません。もっとシンプルに誰にもわかりやすく、誰もが守りやすくすることが、むしろ、労働者にとっても、企業にとっても、もちろん厚生労働省の職員の方にとってもよいことではないでしょうか。
これらのこと一般企業でも多かれ少なかれあるのだと思いますが、思いつくままに厚生労働省にお節介を焼いてみました(笑)
早いもので夏休みシーズンも折り返しですね。
お盆で帰省される方も多いのではないかと思います。よい休日をお過ごしください。
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