こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

高校野球全国大会も閉幕し、これで夏も終わりという時期になって、文字通り蒸し返したような暑さですね。

そうは言っても、空を見上げれば徐々に秋の空に移り変わっているようです。

暑い夏ももう少し、頑張って乗り切りましょう。

これが「HRテック」?

さて、今朝の日本経済新聞の記事「人材サービス各社採用・労務の事務作業軽減『HRテック』で支援」という記事。

人材サービスに携わる皆さんであれば気になりますよね?

ここでは、3つのシステムについて紹介されています。

1つは、企業の採用担当者が面接設定のために面接の予定を調整し、会議室も予約することを支援するもの。

2つ目は、転職サイトで入力された求職者の情報を、自動的に採用管理システムに反映させるしくみ。

そして3つ目が、人事管理システムで採用、勤怠、労務に加えて社員の経歴情報、給与計算、マイナンバーなども管理できるようにするというもの。

少なくともこの記事をよく読む限りでは、何も目新しいものを感じません。仮にAIを利用しているとしても、恐らくごく限定的な範囲ではないでしょうか。

なんでもかんでも「HRテック」

ここで紹介されたものは、いずれもビジネスプロセスを考えれば、システムの発展型としては当たり前のことでしかありません。

例えば、1つ目で言えば、これまでのグループウェアに第三者、つまりここでは求職者の都合も併せて日程調整をすることができるようにするというもので、何か特別すごいことをやっているようには思えないのです。

2つ目もある意味、これまでCSVで掃き出していたものをシステム的につないだだけ、3つ目にいたっては人事システムそのものです。

これらを以て、HRテックと言われてしまうとどうしても違和感がありますが、メディアとしては何か目新しさを出したいということでしょうか。

受け手としてはもう少し冷静に見つめる必要があるように思います。

 「HRテック」とは?

そこで、改めて「HRテック」とは何かを調べてみました。

広義には人事管理のためのシステムということになるので、ここで挙げた記事の内容でも間違いではないのかもしれません。

ただ、どうしてもこれだけでは物足りなさを感じます。従来のシステム開発の延長線でしかありません。

独自に調べた結果をまとめてみると、狭義のHRテックとは、このようなことを言うのだろうと思います。

人の暗黙知によって定性的な意思決定や判断がされていた人事管理業務を、AIやビッグデータなどの最先端ITを利用することで、ビジネスプロセスに必要なデータをリアルタイムに入手し活用できるもの。

ちなみに、オラクル社によれば人事の仕事を変えるHRテックとして求人、応募者面接、人材・組織開発、離職対策、社員の健康管理が挙げられています。

そうであれば、日経の記事で注視すべき点は、その中身よりも人材サービス企業が一般企業の人事業務向けのシステムを提供するということになるのでしょうか。

人材サービス事業者におけるHRテック

求人、応募者面接、人材・組織開発、離職対策、社員の健康管理のいずれについても、長い間に人材サービス業には多くのノウハウが蓄積されてきたので、これらのノウハウを売るということ自体は自然な流れなのだろうと思います。

一方、人材サービス事業者内でのHRテックの利用はどうでしょうか。

前述の定義をもう一度見直してみます。

「人の暗黙知によって定性的な意思決定や判断がされていた人事業務」とは、まさしくマッチングそのものではないでしょうか。

私がブログでAIを採り上げるたびに、人気がないとボヤいている陰には、マッチングこそが人材サービスの生命線と金科玉条のごとく言われていたことを否定されるから、という理由があるとも聞いたことがあります。

そうは言っても、技術の進歩は止めようがありません。

これからは、HRテックによってマッチングの答えをどう創出するのか、これを突き止めた事業者が勝者となるのではないでしょうか。

人材サービス各社 採用・労務の事務作業軽減 「HRテック」で支援

働き方改革で需要増 

日本経済新聞 2017/8/24

人材サービス各社がIT(情報技術)を使う「HRテック」と呼ぶ新技術を使い、人事・労務の効率化支援サービスを始める。

パーソルホールディングス(HD)は採用活動に要する時間を短くする。

働き方改革で業務の効率化に動く企業も増えており、人材サービスとITを融合したHRテックが日本で大きな市場になる可能性がある。

パーソルHDは新卒・中途の採用支援システムで、サイボウズの情報共有支援ソフト「ガルーン」などと連携する。

企業の採用担当者は面接設定のたびに候補者と面接官の予定を調整し、会議室も予約するといった事務作業が多い。

試算では月10人の内定候補者と面接を設定する作業だけで16時間かかるという。

新システムを使うと、これを半分以下にできる。

初期費用込みで年120万円から提供し、2020年までに500社の導入をめざす。

ビズリーチ(東京・渋谷)は採用担当者の事務作業を軽減する。

これまで求職者が転職サイトで入力した情報は、担当者が採用管理システムに入力し直す必要があった。

採用活動に進捗があったことを担当者がシステムに入力すれば、自動で同社の転職サイト側にも情報が反映される仕組みをつくり採用の効率化につなげる。

ネオキャリア(東京・新宿)は18年初めにクラウド上で人事情報を管理する企業向けシステムを刷新する。

現在は採用、勤怠、労務を管理できるが、社員の経歴情報などを含む人事管理、給与計算、マイナンバーなども管理できるようになる。

社会保険の申請作業に必要な時間を従来の10分の1にできるという。

人手不足で企業の採用関連コストが急増しているのに加え、働き方改革の進展に伴い「人事部の業務が多様化し繁忙度を増している」(リクルートワークス研究所)との指摘もある。

日本で労働人口が減るなか、HRテックを人材の適正配置や生産性向上につなげるために採用する企業が増えそうだ。

 

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