こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

急に朝晩、寒さが厳しくなってきましたね。風邪などひいていないですか?

今日の日本経済新聞の朝刊、久しぶりに人材派遣について比較的大きな記事がでていましたね。

■ 特定派遣事業の終焉

内容は、特定派遣事業について厚生労働省が事業の廃止などの監督を強化しているというもの。

実際には、2年前、平成27年改正労働者派遣法で、「労働者派遣事業の許可制への一本化」で、施行日の平成27年9月30日)以降、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別が廃止され、すべての労働者派遣事業は、新たな許可基準に基づく許可制になったことの後追い記事ですが、その後、中小事業者への猶予期間が3年間与えられていたのが、いよいよ来年まであと1年となったというものです。

その意味では、2年前からわかっていたでしょ?…という内容ですが、現実味が増してきたということでしょうか。

■ 労働者派遣市場は変わるか

もともと8万事業所もあると言われていましたが、多くの場合、休眠事業者であることもわかっていたことだと思います。

ほとんど事業を行っていないのに届出だけをしていた、そのまま届出をしたことすら忘れ去られていたという事業者も多いのだと思います。

リーマンショックで社員を派遣するために苦し紛れに届出をしただけの事業者もあると思います。その後、景気も回復して人材不足になりその社員も元に戻したとなると、もう特定の届出も必要ないということもあるかもしれません。

いずれにしても、来年の9月末で3年の猶予期間も終わるため、従来、届出で特定派遣事業を営んでいた事業者の数は一気に減ることになるのでしょうけど、もともと休眠事業者が多いと考えると、市場自体は大きく変わることはないように思います。

■「真の経営力」の必要性

「真の経営力」…これは、かなり前から言っていることですが、この特定派遣事業の廃止だけでなく、平成24年改正法、平成27年改正法ともに、人材派遣事業者にとっては非常に規制色の強い内容になっています。

先日もある事業者さんから相談を受け、そのビジネスプロセスについてああでもない、こうでもないといろいろとお話しましたが、法的な知識が欠落しているのはまずアウトです。

主観的に判断をくだすとあらぬ方呼応に向いてしまいます。法律そのものの是非はたしかにあるのですが、まずは法律を満たすことが必要です。

そして、法律をきちんと満たそうとするとどうしてもコストが膨らむことになりますが、それを売上増で一時的に凌いだとしても、長くは続きません。

利益を出す”しくみ創り”が必要です。

■ “しくみ”は”創造”するもの

私が「仕組み作り」とせず、「しくみ創り」と表現するのには、それなりに訳があります。

もちろん「仕組み作り」が間違っているわけではないのですが、人材サービスは「サービス業」です。多くの場合、メカニカルな機械の仕組みよりも目に見えないソフトウェアの”しくみ”が必要なのです。

もう一つは、ビジネスプロセスの視点、あるいは人材育成の視点でも”しくみ”が必要です。

いずれにしても、これらの”しくみ”は創造しなければなりません。

この「しくみ創り」は、イノベーションそのものです。

一番感じるのは、いろいろな事業者さんとお話をしていて、自社のことで十分と思っている方がほとんどだということです。

客観的に見るとその差は非常に大きいこともよくあります。現状に満足することなくイノベーションを重ねなければ明日はないという認識が必要ではないでしょうか。

派遣業、許可の壁高く 法改正、業界の健全化めざす

「届け出」は来秋ゼロに 厚労省、2000社に廃業命令

日本経済新聞 11月20日

派遣元が常用雇用する人材を他社に派遣する「特定労働者派遣事業所」は2018年9月限りで派遣ができなくなる。15年の労働者派遣法改正で派遣業が許可制に一本化されたためで、届け出制だった特定派遣の事業所はピークの約7万からゼロになる。厚生労働省は休眠中の事業所に廃止を命じるなど監督を強化、新たな許可への壁も高い。派遣会社の集約で待遇改善が進めば働く人にメリットがあるが、他の働き方に移る人も出てきそうだ。

(シニア・エディター 礒哲司)

「許可基準通りに20平方メートルの事務所を借りるなど申請は大ごとだった。労働局のチェックも職員2人がかりで、ずいぶん厳密と感じた」。シムテック(東京・中央)の小林一男社長は振り返る。

シムテックは過去16年間、特定派遣としてIT(情報技術)技術者を客先に派遣してきた。特定派遣廃止を受け、3年の経過期間中に許可を取ろうと6月に準備を始め、10月中旬に許可を得た。

実際の同社の業務は請負契約が31人と主流で、派遣は3社向けに3人。それでも派遣業の許可を取ったのは「最近の大手取引先はコンプライアンスを重視し、契約が請負でも派遣業の許可を持つことを求めてくる」(小林社長)ためという。

ただ中小規模が大多数の特定派遣で、シムテックのように許可を得ようとする企業は少数だ。業界は今、廃業ラッシュ。15年9月に7万弱あった特定派遣事業所は17年8月に約5万5000と、約1万5000減った。

多数は条件未達

一方、同期間に新たに許可を取った元特定派遣事業所は約3700と廃業の4分の1。業界動向に詳しいエン・ジャパンの沼山祥史派遣会社支援事業部長は「日本の派遣事業所数は米国の数倍ある。猶予切れに向け減少していくだろう。特に経営者が高齢なら多くが廃業しそうだ」とみる。

派遣業の許可を得ることなく廃業が増える背景には、法改正を原因とする2つの理由がある。

1つ目は、派遣法7条と省令が定める許可条件を満たせない事業者が多いことだ。条件とは(1)おおむね20平方メートル以上の事務所がある(2)資産から負債を引いた基準資産が2000万円×事業所数以上ある(3)1500万円×事業所数以上の現金預金がある――などだ。

常用雇用の派遣労働者が10人以下なら基準を下げる措置はある。だが申請実態を知る社会保険労務士法人すばる(東京・中央)の佐藤敦規社労士は「ソフト技術者派遣が多い東京の零細特定派遣にはそれでもハードルが高い。相談は月に4~5社あるが許可申請に進むのは2社程度」と話す。

2つ目は、厚労省の監督強化だ。「派遣社員の雇用管理をきちんとしているか、性善説ではなく中身で判断する。営業実態がなければ退出してもらう」(審議官級幹部)が基本スタンスだ。

厚労省には、派遣業種の自由化が進んだ03年ごろから特定派遣を中心に事業所が年1万数千と爆発的な勢いで増え、監督が追いつかなくなった苦い経験への反省がある。違法派遣や二重派遣、派遣社員からの不透明な手数料徴収が横行。派遣先のほとんどが親会社という事業所も問題化した。休眠会社も廃止届を出さず、数だけが膨らんだ。

そこで厚労省はまず12年の法改正で、特定派遣の廃止命令について定めた21条(当時)の対象要件を拡張。それまで暴力団員の経営であるなど欠格事由がないと出せなかった廃止命令を、(1)関係会社への派遣割合が8割を超す(2)同割合が8割を超えないと証明する報告書を出さない――場合も命じられるようにした。

当時、改正を担当した幹部は、廃止命令要件の拡大に「親会社への8割超え派遣を抑制する他に、休眠会社を排除する二重の目的があった」と話す。(2)の報告書を出さない事業所を休眠中と推定し、提出指導に応じなければ、廃止命令を出すスキームだ。

15年の派遣法改正で、この規定は改正付則6条に移行。厚労省は10月にもこのスキームで45事業所に廃止を命じた。累計命令数はすでに2000強。牛島聡需給調整事業課長は「ルールにのっとり淡々と処分しており、社数減らしが目的ではない。対象のほぼ全てが休眠事業所で、経営者は、不利益処分を命ずる場合に行政手続法で開催が決められた『聴聞』にも出て来ない」と説明する。

72%に是正必要

厚労省には許可制への一本化を機に、業界全体の健全化を狙う意識が強い。東京労働局の16年度の指導監督では派遣事業所の72%に是正指導が必要で、業界全体が健全とはまだ言い難いからだ。許可を申請した事業者が「審査が厳しい」と感じるのは、現場の都道府県労働局に意識が共有されていることの表れだ。

15年の法改正では既存の事務所要件や財産要件にキャリア形成支援など新たな基準も加わり、許可のハードルが上がった。人手不足で人材募集が難しいことも相まって派遣料金の上昇も続いている。18年9月29日の経過期間切れに向け、業界は激変の時を迎える。

お陰さまで好評発売中です!ご注文は、Amazon からお願いします。

全国の紀伊國屋書店、丸善ジュンク堂、ブックファースト、有隣堂、三省堂書店などでもご購入いただけます。

雇用が変わる

関連記事: