こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。
今日は、働き方改革実現会議からテレワークや副業・兼業について採り上げます。
なんとなくシリーズ化していますが、同一労働同一賃金、賃上げと続いたら、つぎは長時間労働ですが、長時間労働については多くの報道がされているので今回は飛ばします(笑)。
■ 根底の思想が「労働時間」
改めて実行計画のテレワークや副業・兼業=「柔軟な働き方がしやすい環境整備」について、よく読んでみました。
半分以上は客観的な立場で、これと言った改革案は示されていないように感じます。
また、根底に仕事を「労働時間」で捉えていることには、問題があるように思います。
文中では、終始一貫して「労働時間の管理…」という表現が続きます。
つまり、「時間ではなく成果で」と言っている割には、考え方の根底に「労働時間の管理」というものがあるのです。
長く我が国の基幹産業が製造業だったこともあり、いつまでたっても一時間に何個作ればいくらという発想しかないということでしょうか。
これではいつまでたっても、テレワークや副業・兼業の推進は不可能です。
■ 評価に対する考え方
織田信長は桶狭間の戦いで今川義元を討ち取った人ではなく、今川義元が桶狭間で休んでいるという情報をもたらした人を評価したという話があります。
それ以前に、地形的に最も有利な桶狭間で今川義元を休ませ、酒宴をさせることを画策したという説もあります。
うつけの振りをしながら領地内を熟知していた信長は最初から桶狭間で戦うことを決めていたという話さえあります。
誰が一番の功労者だったのかは明らかではないでしょうか。
話がはずれますが、NHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」、信長が登場しない桶狭間の戦いをみたのは初めてでしたね(笑)。
■ 売上目標さえ達成すれば評価される営業
私自身、社会に出たときには営業職で、当時は売上目標さえ達成していれば評価されるという中で育ったためか、どうしたら楽をして売り上げを上げるかばかり考えていました。
当然、自分の力だけで売り上げを上げ続けることには限度があります。
そうなると、いかに売れるしくみを創るかということに思考が向きます。
つまり、マーケティングですね。マーケティングについては相当真剣に考えました。
よく、営業マンは朝一番に外に出て…というようなことが言われますが、私は目的もなく営業に行っても無駄だと公言する生意気な新入社員でした。
営業所にいる時間も長く、帰る時間も比較的早い方でした。家でマーケティングの勉強をした方がよいと思っていました。
当時、上司からはあまりよい目で見られていませんでしたが、実際に営業成績だけは常によかったことを思い出します。
■ まじめなだけでは成果は出ない
他の仕事でも成果に対する考え方は同じです。
例えば、あるルーティン業務をコツコツとまじめにやる人がいます。
まじめに働くこと自体はよいことですが、そのルーティン業務を根こそぎなくすことを考え、それを実現した人がいたとしたら、どちらが成果を挙げたと言えるでしょう。
もしかすると、後者の人は日ごろそのルーティン業務を嫌々、怠けながらやっていたかもしれません。
しかし、頭の中ではどうしたらその嫌な業務をなくすことができるかと考え、業務の改善策を考えていたとしたらどうでしょう。
風紀の問題もあるのかもしれませんが、極論すると、家で寝ころびながらでも、街を散歩しながらでも、毎日飲み歩いても、解決策のアイデアを創出した人、実現した人の方が成果として評価されて然るべきではないでしょうか。
■ 裁量労働への評価
まずは、何をもって成果とするのかの特定ができていないことが多いのではないかと思います。
そして、その評価も曖昧なのだと思います。まさにマネジメントの問題です。
これがハッキリしていないから「労働時間」という発想になるのです。まじめ?に会社の机に向かっているひとがエライということではないはずです。
なんちゃって管理職が話題になりましたが、本来、企業は成果の特定と評価システムが求められます。
そして、政策的には裁量労働制の適用範囲の拡大、ホワイトカラーエグゼンプションの導入などを進める必要があるように思います。
■ 人材派遣の規制の整備も検討の余地
一般に人材派遣は指揮命令の関係でテレワークは難しいとされています。労働局によっては、明確に禁じているケースがあるとも聞いたこともあります。
事務系の仕事でも、安全衛生上、自宅での勤務は問題があるという話もありました。そんな家には住めませんよね(笑)。
これだけネットワークが発達し、デバイスの性能が向上した現在、業務の内容によっては人材派遣でテレワークというものを拡大したらどうでしょう。
これは、特に主婦などにとっては雇用の機会を広げることになります。政省令レベルで緩和できるものだと思うので検討をお願いしたいものです。
■ 日雇派遣の原則禁止も再検討を
もう一つは、副業、兼業したい人はどうやってその機会をみつけるのでしょう。
それこそ労働時間の問題はありますが、条件さえ合えばその機会を提供できるのは人材サービスです。
現在、日雇派遣は原則禁止されていますが、副業、兼業の機会の提供も阻害しています。
第三者が客観的に労働時間を管理するという意味でも、むしろ人材サービスが介在することは望ましいことではないでしょうか。
そもそも日雇派遣の原則禁止は、職業選択の自由にも反することなので、早急に見直しをして欲しいものです。
以下、実行計画から、テレワーク、副業・兼業についての抜粋です。
5.柔軟な働き方がしやすい環境整備
テレワークは、時間や空間の制約にとらわれることなく働くことができるため、子育て、介護と仕事の両立の手段となり、多様な人材の能力発揮が可能となる。 副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効である。 我が国の場合、テレワークの利用者、副業・兼業を認めている企業は、いまだ極めて少なく、その普及を図っていくことは重要である。 他方、これらの普及が長時間労働を招いては本末転倒である。労働時間管理をどうしていくかも整理する必要がある。 ガイドラインの制定など実効性のある政策手段を講じて、普及を加速させていく。 (1)雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援 事業者と雇用契約を結んだ労働者が自宅等で働くテレワークを「雇用型テレワーク」という。 近年、モバイル機器が普及し、自宅で働く形態だけでなく、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務といった新たな形態のテレワークが増加している。 このような実態に合わせ、これまでは自宅での勤務に限定されていた雇用型テレワークのガイドラインを改定し、併せて、長時間労働を招かないよう、労働時間管理の仕方も整理する。 具体的には、在宅勤務形態だけでなく、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務を、雇用型テレワーク普及に向けた活用方法として追加する。 テレワークの導入に当たっては、労働時間の管理を適切に行うことが必要であるが、育児や介護などで仕事を中抜けする場合の労働時間の取扱や、半日だけテレワークする際の移動時間の取扱方法が明らかにされていない。 このため、企業がテレワークの導入に躊躇することがないよう、フレックスタイム制や通常の労働時間制度における中抜け時間や移動時間の取扱や、事業場外みなし労働時間制度を活用できる条件などを具体的に整理するなど、その活用方法について、働く実態に合わせて明確化する。 また、長時間労働を防止するため、深夜労働の制限や深夜・休日のメール送付の抑制等の対策例を推奨する。あわせて、Wi-fiやクラウド環境、スマートフォンやタブレットの普及など近年のICT利用環境の進展や、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務の実態を踏まえ、テレワーク導入時に必要なセキュリティ面の対応に関するガイドラインについても改定する。 さらに、国家戦略特区により、テレワーク導入企業に対するワンストップの相談支援を実施する。 育児中の者、障害者を対象にしたモデル事業等を実施するとともに、よりテレワークを活用しやすくなるよう、労働時間管理及び健康管理の在り方を含めた推進方策について広く検討する。加えて、国民運動としてテレワークを推進する方策を関係府省が連携して検討し、実施する。 (2)非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援 事業者と雇用契約を結ばずに仕事を請け負い、自宅等で働くテレワークを「非雇用型テレワーク」という。 インターネットを通じた仕事の仲介事業であるクラウドソーシングが急速に拡大し、雇用契約によらない働き方による仕事の機会が増加している。 こうした非雇用型テレワークの働き手は、仕事内容の一方的な変更やそれに伴う過重労働、不当に低い報酬やその支払い遅延、提案形式で仮納品した著作物の無断転用など、発注者や仲介事業者との間で様々なトラブルに直面している。 非雇用型テレワークを始めとする雇用類似の働き方が拡大している現状に鑑み、その実態を把握し、政府は有識者会議を設置し法的保護の必要性を中長期的課題として検討する。 また、仲介事業者を想定せず、働き手と発注者の相対契約を前提としている現行の非雇用型テレワークの発注者向けガイドラインを改定し、仲介事業者が一旦受注して働き手に再発注する際にも当該ガイドラインを守るべきことを示すとともに、契約文書のない軽易な取引や著作物の仮納品が急増しているなどクラウドソーシングの普及に伴うトラブルの実態を踏まえ、仲介手数料や著作権の取扱の明示など、仲介事業者に求められるルールを明確化し、その周知徹底及び遵守を図る。 加えて、働き手へのセーフティネットの整備や教育訓練等の支援策について、官民連携した方策を検討し実施する。 (3)副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定 副業・兼業を希望する方は、近年増加している一方で、これを認める企業は少ない。 労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業・兼業を認める方向で、副業・兼業の普及促進を図る。 副業・兼業のメリットを示すと同時に、これまでの裁判例や学説の議論を参考に、就業規則等において本業への労務提供や事業運営、会社の信用・評価に支障が生じる場合等以外は合理的な理由なく副業・兼業を制限できないことをルールとして明確化するとともに、長時間労働を招かないよう、労働者が自ら確認するためのツールの雛形や、企業が副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインを策定し、副業・兼業を認める方向でモデル就業規則を改定する。 また、副業・兼業を通じた創業・新事業の創出や中小企業の人手不足対応について、多様な先進事例の周知啓発を行う。さらに、複数の事業所で働く方の保護等の観点や副業・兼業を普及促進させる観点から、雇用保険及び社会保険の公平な制度の在り方、労働時間管理及び健康管理の在り方、労災保険給付の在り方について、検討を進める。 |
今週末で桜もおしまいですね。明日は私は春の海を見に行きます。皆さんよい週末をお過ごしください。
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