こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

テロ等準備罪処罰法や森友学園、加計学園の問題を巡り国会が二転三転し、バタバタと国会が閉会した感がありますが、安倍首相は昨日7月19日の記者会見で、働き方改革など重要政策を推進するために党役員人事、内閣改造の着手をすることに言及しています。

働き方改革の実行計画については、シリーズで採り上げてきました。

すでに建議がされている長時間労働の是正「時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正」を除くと、このブログでとりあえずシリーズの最後になります。

これまで実行計画をただ単に解読するのではなく、人材サービスにどう影響するのかという観点も含めて考えてきました。

特に同一労働同一賃金については派遣法改正も視野に入っているので、別途、労働政策審議会の内容もお伝えしてきました。

どんな業種でもそうですが、市場の先読みをし、中長期的な戦略を講ずることは非常に大切です。計画のないところに成功はありません。

特に人材サービスは、法律によって経営が大きく左右されるので、先行きを見据えることはとても大切だと考えて採り上げたつもりです。

二つの外国人材

働き方改革の実行計画で最後に採り上げるのは「外国人材の受入れ」です。

外国人材というと、高度IT人材のようなことを指すことと外国人技能実習制度のような単純労働の労働力として捉えることの主に二つがあると思います。

あるいは、外国人留学生のパート・アルバイトでしょうか。

いずれも人材不足が顕著になっている労働市場に外国人労働者を受け入れることを意味しますが、外国人材を入れること自体の是非についての根本的なところでの整理がされていないように思います。

正直なところ、私自身は外国人材を我が国に受け入れることが良いことなのかどうかさえも、はっきりとした見解は持てていません。

人材が不足していれば国外から人材を募るということは現実的なことだとは思いますが、国策として次世代のためにどのように、あるいはどの程度まで迎え入れるのかの議論が足りていないように感じます。

相手国への配慮

外国人材の場合、必ず問題になるのが永住権の問題ではないでしょうか。

私は、ドイツに暮らしていたころ、トルコ人の移民についてたびたび耳にしました。

ドイツでも人材が不足している分野について国外から人材を受け入れるということをしていました。

現在、シリア難民の問題がヨーロッパに大きな影を落としていますが、テロのような過激な問題ではないにしても、外国人材によって自国民の仕事が失われるという問題も考えなければなりません。

少子高齢化で人材不足が加速しているという事実もありますが、一度受け入れた人材に、景気が悪くなったから、あるいは人材が足りたから出て行ってくれとは人道的に言えません。

受け入れた当初はよいとしても、それが何十年も経って、二世、三世が日本で生まれ、日本語しか話せない外国人、自国の文化・習慣を知らない外国人になることは明らかです。

我が国の都合だけでその増減を決めることができなくなることは目に見えています。

労働環境については、日本はほとんど鎖国状態にあるとは思いますが、解放するにしても相手国のことも含めてしっかりと方向性を議論する必要があるように思います。

外国人技能実習制度

高度外国人材の受け入れの一方、今回の働き方改革の実行計画では採り上げられていない外国人技能実習制度の問題もあります。

外国人技能実習制度は「技能実習生へ技能等の移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成を目的としたもの」とされています。

国際協力・国際貢献の一翼を担っているとは言われているものの、実態がかなり心許ないというのが実情ではないでしょうか。

実習生の帰国後の職業生活の向上や相手国の産業・企業の発展に貢献することが大義名分となっていますが、実際にはほとんどよい話を聞きません。

欧米人に弱くアジア人に横柄な日本

あまり良くない言葉も含まれますが、多くは、タコ部屋、過重労働、搾取、安全基準欠落による事故、賃金不払いなどが横行し、果ては逃亡、失踪に至るという痛ましい話ばかりです。

ある調査によれば、外国人技能実習生制度の70%以上が違法労働とされています。

これでは、本国に帰国してからの活躍や貢献といった本来の目的どころか、我が国への恨みだけを持ち帰るようなことになり、親日国を増やすという政策さえ危ぶまれます。

労働力以前の問題です。どうも日本人は欧米人に弱くアジア人に横柄な態度であることが多いように思いますが、これは私たちの態度そのものを改めることが必要ではないでしょうか。

外国人技能実習生制度については今回の働き方改革では採り上げられていませんでしたが、早急に見直しを図ることが求められるのではないでしょうか。

未開拓な外国人の雇用

働き方改革の実行計画には「企業における職務等の明確化と公正な評価・処遇の推進など、高度外国人材を更に積極的に受け入れるための就労環境の整備を図っていくことが重要」と書かれています。

しかし、同一労働同一賃金のこれまでの議論を見る限り、「職務等の明確化」というよりも企業内での格差是正に終始し、職務による均等・均衡を図ることについてはむしろ消極的です。

むしろ日本的雇用慣行を助長する政策でしかありません。

やはり、少しずつでも時間をかけながら職務型の同一労働同一賃金も実現していくような政策が必要ではないでしょうか。

外国人材の雇用に知恵を

私のもとには高度IT人材や外国人技能実習生の受け入れの話も頂いてはいますが、実際にはなかなか壁が高いというのが実情です。

まだまだ未開拓の領域だと思いますが、ここに本来求められるカタチで労働力を受入れることが実現できれば、人材サービスとしても一つの突破口が開けるように思います。

もしも、高度IT人材や外国人実習生の受け入れをご検討の方がいらっしゃいましたら、ご紹介もできると思いますので一度ご相談ください。

秋の臨時国会が焦点

今回、「時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正」については、あまり採り上げませんでしたが、今回で働き方改革実行計画の内容については一通り押さえました。

長時間労働の是正は、同一労働同一賃金と並んで働き方改革のメインになるものなので、恐らく、秋の臨時国会に向けて採り上げることになると思います。

ホワイトカラーエグゼンプションについても「働き方改革関連法案」として一体的に審議される可能性が高く、与野党の激しい論戦が見込まれるため、採り上げることになると思います。

また、同一労働同一賃金に向けた労働者派遣法、労働契約法、パートタイム労働法の3法一括改正が秋の臨時国会で提出されることが予定されていますが、これらは、内閣改造後の人事によっても行方が大きく変わる可能性があります。

望ましい法制度に着地させるためにも、政務三役は過去の大臣、副大臣、政務官の経験者や労働法制に詳しい閣僚を充てるなど万全を期して臨んでほしいものです。

12.外国人材の受入れ

グローバル競争においては、高度IT人材のように、高度な技術、知識等を持った外国人材のより積極的な受入れを図り、イノベーションの創出等を通じて我が国経済全体の生産性を向上させることが重要である。

日本で就労する外国人材は、評価システムが不透明であることや、求められる日本語の水準が高いこと等を不満に感じており、我が国経済社会の活性化に資する専門的・技術的分野の外国人材を更に積極的に受け入れていくためには、外国人材にとっても魅力ある就労環境等を整備していく必要がある。

このため、企業における職務等の明確化と公正な評価・処遇の推進など、高度外国人材を更に積極的に受け入れるための就労環境の整備を図っていくことが重要である。

また、企業がイノベーションに結びつく高度外国人材を海外からも積極的に確保できるよう、政府としてマッチング支援等を進める。

さらに、高度外国人材が英語等でも活躍できる就労環境の整備とともに、外国人の生活面での環境の整備も進める。加えて、優秀な人材の獲得競争が世界でますます激化していく中で、高度な外国人材を我が国に惹き付け、長期にわたり活躍してもらうため、高度外国人材の永住許可申請に要する在留期間を現行の5年から世界最速級の1年とする日本版高度外国人材グリーンカードを創設する。

また、高度人材ポイント制度をより活用しやすくするため、トップ大学卒業生への加算措置を可及的速やかに施行する。

他方、専門的・技術的分野とは評価されない分野の外国人材の受入れについては、ニーズの把握や経済的効果の検証だけでなく、日本人の雇用への影響、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コスト、治安など幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ検討すべき問題である。

経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、外国人材受け入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める。

このため、移民政策と誤解されないような仕組みや国民的なコンセンサス形成の在り方などを含めた必要な事項の調査・検討を政府横断的に進めていく。

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