こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。
昨日、今週末はお花見シーズン突入と書いてしまいましたが、すっかり寒さが戻り、桜のつぼみも固くなってしまったようです。明後日は雨でさらに寒いそうなので、お花見はもう少し先になりそうですね。
さて、今日はメディアの姿勢についてです。
ここのところ少し影を潜めていたように思いますが、相変わらずメディアの報道の言葉の使い方にはうんざりしますね。
いまだに「派遣」という言葉を使えば、読者が増える、視聴者が増えると思っているのでしょうか。
まずは、3月14日の産経。財布を落として交番の電話機を壊すことと「派遣」という就業形態は、どのような因果関係があるのでしょう。
財布を落として交番に行ったとして、そこにお巡りさんがいなければ、普通に考えると「チェッ、いないのかよ」ぐらいで終わるはずですけどね。
よほど大金を落としたのでしょうか。。
「財布落としてイライラ」交番の電話機壊す、40歳の派遣社員の男を逮捕 兵庫県警
交番の電話機を壊したとして、兵庫県警飾磨署は12日、器物損壊容疑で同県姫路市広畑区才の派遣社員の男(40)を現行犯逮捕した。 容疑を認め、「新しい財布を落としてイライラしていた」と供述している。 逮捕容疑は同日午後7時40分ごろ、同市飾磨区山崎の同署英賀保駅前交番で、机をひっくり返し、電話機1台を壊したとしている。 同署によると、男は財布の遺失物届を出すため交番を訪れたが、勤務中の男性巡査部長が出動していたため無人だったという。 (産経WEST 2017.3.14 07:39更新 |
つぎは、3月23日のフジテレビ。これも「パンツよこせ」と「派遣」には何の因果関係もないはずです。単なる性癖ですね。アホらしくなります。
いわゆる正社員の場合はどのように報道するのでしょう。恐らく「会社員」というのでしょうね。
この報道、「会社員」で十分ではないですか?
女性押し倒し下着奪おうとした疑い、35歳男逮捕
東京・江戸川区で、女性を押し倒し下着を奪おうとしたとして派遣社員の男が警視庁に逮捕されました。 逮捕されたのは江戸川区の派遣社員、新井理央容疑者(35)です。 新井容疑者は去年9月、江戸川区の公園で帰宅途中のアルバイトの女性(32)に背後から近づいて押し倒し、「パンツよこせ」と言って女性がはいていた下着を奪おうとした疑いが持たれています。 警視庁によりますと、犯行現場や、近くの駅の防犯カメラの映像を解析したところ、新井容疑者の関与が浮上したということです。 取り調べに対し新井容疑者は、「ムラムラして女性の体を触りたかった」「パンツを奪おうとしたか覚えていない」と供述しているということです。 (NNN/Fuji TV 3月23日11:10) |
つぎも3月23日。こちらは毎日新聞です。毎日新聞が「派遣」を嫌いなのは知っていますが、仮にも見識のあるはずの三大紙ですよ。
裁判でも、交通事故の示談交渉の不調や、長野電鉄の運転士への不満が原因とされているのですから明らかに派遣労働とは因果関係はありません。
これも「会社員」で十分です。社会的な影響を考えて欲しいものですね。
長野電鉄置き石 地裁が有罪判決 23歳元派遣社員に/長野
須坂市で昨年11月、長野電鉄の線路に石を置いたとして列車往来危険の罪に問われた長野市東和田、元派遣社員、波河健太被告(23)に対し、長野地裁(伊東顕裁判長)は22日、懲役3年、執行猶予4年(求刑・懲役3年6月)の判決を言い渡した。 伊東裁判長は、波河被告が昨年9月に起こした交通事故の示談交渉が進まないことへのいらだちや、長野電鉄の運転士の対応への不満などを紛らそうとしたと指摘し、「電車の乗客や乗員、周辺住民への影響を顧みない身勝手な行動だ」と述べた。 判決では、昨年11月4~7日、5回にわたり須坂市内の長野電鉄の線路に石などを置き、電車の往来に危険を生じさせた。【ガン・クリスティーナ】 (毎日新聞2017年3月23日地方版) |
つぎも3月23日、「派遣」が大嫌いな朝日新聞です。日本を代表する新聞社なのですから、もっと見識の高い記事を書いてほしいものです。
恐らく、朝日新聞の低迷の原因はタブロイド化、あるいは三流週刊誌化にあるのではないでしょうか。
この記事にあるスジの方のことはよくわかりませんが、そもそも土木・建設は派遣できない業務です。
しかも「無縁」の男性をどうやって役員に据えるのでしょう。縁があるから据えたのではないのでしょうか。
この事業者が派遣免許をもっているかどうかも疑わしいものがあります。単に禁止されている「労働者供給事業」ではないでしょうか。
ひねりすぎです。読者にあらぬ誤解を与えることは、善良なメディアのすることではありません。
私が怒っているのは、そちらのスジの方にではなく、紛らわしい報道に対してですので誤解のないよう。。
(震災特需の深層)暴力団、名前隠し参入次々 労働者派遣から風俗まで
関東のある都市に昨年12月、労働者派遣や土木・建設を目的とする会社ができた。 資本金500万円の株式会社だ。 「私がつくった会社です」。西日本にある指定暴力団傘下の組長が、取材に答えた。 「やくざの色は完全に消し去らなければならない」。 登記簿の役員欄には組長本人やその親族、配下の組員の名はない。社長には暴力団とは無縁の男性を据えた。 組長はほかにも複数、実質支配する会社を持つ。これらの会社から、除染や家屋解体などの復興事業を請け負う業者に作業員を派遣している。「派遣先から10万円前後受け取るほか、作業員に支払われる日当の一部をピンハネして、月に数百万円を得ている」 警察庁は震災発生の20日後、復興・復旧事業からの暴力団排除を全国の警察本部に指示した。 建設業界団体や東京電力のほか、関係省庁や自治体にも求めた。 事業を暴力団の資金源とさせないためだ。 ただ現実には、裏で会社を取り仕切る暴力団が少なくない。 新会社をおこすこともあれば、経営状態のよくない会社に資金を出して操るケースもある。ある暴力団は傘下組織に「疑われない会社の作り方」を指南しているという。 警察の担当者は「登記簿で役員に暴力団関係者がいないかを調べるのが精いっぱいだ」と明かす。背後に暴力団がいるかは役員の交友関係などを捜査しなければわからない。 ひとつの事業に十数社の下請け業者が連なることもある。 個々のすべての業者と暴力団との関係を調べるのは「事実上難しい」。 こうした隙を突き、組織ぐるみで資金獲得を目指す暴力団も相次ぐ。 ある組長は「参入で出遅れるな、と上部組織から指示されている」と話す。 1995年の阪神淡路大震災をきっかけに、傘下組織に「定期報告」が義務づけられた。 各組織の縄張りにあるダンプや重機のレンタル業者の調査と報告だ。 復興工事に欠かせないダンプや重機を、いち早く、数多く押さえるための備えという。 「需要は膨大。こちらの言い値で貸し出せる」と元幹部は言った。 復興事業そのものへの参入にとどまらず、各地から集まる作業員たちにも狙いをつける。 「福島に遊びに来ました。大人の関係で」 「二本松で会える方探してます」 女性が男性を誘う出会い系サイトに、こんな文面が並ぶ。 関東の組長が運営する「援助デリヘル」だ。福島第一原発などで働く作業員に性的サービスを提供すればもうかる、と始めた。 風俗業の経験がある女性たちを車に乗せ、被災地に数日間滞在する。 接触してきた客の求めに応じてラブホテルや、時には客の車に女性を派遣する。 料金は1回3万円前後だ。その6割を女性に渡し、残り4割を取る。 組長は「ほかの暴力団との競争が激しいが、月に300万円は入る」と話した。 復興事業に携わる作業員らでにぎわう繁華街も標的だ。 ある暴力団元幹部は「多くの組織が店の取り合いをしている地域もある」と明かす。 飲食店や風俗店に「トラブルから守る」と持ちかけ、月数万円の「みかじめ料」を求める。 「覚醒剤の使用や売買を構内で見聞きした」 爆発事故の直後に福島第一原発に入り、いまも作業しているという東日本の組長が取材に語った。 福島県警と東京電力は、ともに「そうした事実は把握していない」と答えた。 だが、こんな事実がある。2015年8月、原発での作業を終えた30代の男性作業員が帰りのバスの中で体調不良を訴え、運ばれた病院でその日、死亡が確認された。 警察当局によると、男性は暴力団関係者だった。 当局が尿などを調べたら、覚醒剤の使用を疑わせる反応が出た。死因はわかっていない。(組織暴力専門記者・緒方健二) =おわり ◆キーワード <復興事業関連の暴力団犯罪> 警察は2011~16年に101件を摘発。被災地の支援活動を装って寄付金を集めたり、被災者向けの融資金をだまし取ったりする詐欺が最多の54件。派遣が禁止されている業務に作業員を送り込むなどの違法派遣が25件だった。このうち福島県警は12年5月、福島第一原発へ作業員を違法に派遣した容疑で指定暴力団住吉会系幹部(当時)を逮捕。この捜査で、幹部が09年から全国の原発や火力発電所に作業員を派遣し、11年までの3年間に約4千万円を得ていたことも突き止めた。 (朝日新聞 2017年3月23日05時00分) |
さて、最後も3月23日。3月23日って何かの記念日でしたっけ?
こちらの記事は、かのお国の実情を正しく知ってほしいと仰っているDailyNH。
北朝鮮の労働者がロシアへ派遣って、これは「強制労働」ではないのですか?
これを「労働者派遣」といってしまっては、もう訳が分からなくなります。
正しく知ってほしいということであれば、記事も正しく書いて頂きたいものです。およそ独裁国家の陰に隠れた国民はさぞつらい目にあっているのであろうことは容易に察します。
ぜひ、正しく報道をしてください。
北朝鮮の労働者数百人、中国経由でロシアへ…派遣拡大の動き
北朝鮮の労働者数百人が、中国の丹東経由でロシアに向かったもようだ。 また、別の数百人もロシア行きに向け、待機している状況だという。 ロシアに派遣される北朝鮮の労働者が、中国経由のルートを使うのは非常に異例だ。 北朝鮮とロシアは国境を接しているためだ。 韓国のNGO・自由北韓国際ネットワークのキム・ドンナム代表によると、丹東の2ヶ所の旅館に今月9日、数百人の北朝鮮労働者がやって来た。旅館は5階建てだが、彼らだけで満室となった。1週間ほどして、彼らはロシアに向けて旅立っていった。16日には平壌と平安南道(ピョンアンナムド)出身の男性200人がやってきて、現在21日の時点で宿泊している。 丹東を経由するルートは、かつて北朝鮮がロシアの内陸に労働者を送り出す際に使われていた。空路より陸路の方が運賃が安いからだ。丹東からは、ロシア国境の満州里までの1600キロを27時間で結ぶ2686/7次列車が運行されている。運賃は、硬座(2等座席)で177元(約2900円)である。 (DailyNK 2017年03月23日) |
メディアの方にお願いしたいことは、正しいことを正しく報道していただきたいということです。
ちなみにかなりの人がメディアで派遣就労しているのですが、その方たちは悪い人たちなのでしょうか。
フェイクニュースにはうんざりです。この国をよくしたいという正義感がまだ残っているのであれば、ぜひお願いしたいものです。
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