こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

ここのところ、ほとんどが非公開だったこともあり、久しぶりに厚生労働省の需給制度部会に行ってきました。

振り返ってみると昨年末以来ですね。まだ、4月にもかかわらず会議室の温度はうなぎのぼり。審議会の様子をご存知の方は想像つくと思いますが、これから夏に向け先が思いやられます。

さて、今日の議題は、以下の4つ。

  1. 雇用保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案要綱等について
  2. 職業紹介事業の許可基準について
  3. 労働者派遣事業の許可基準について
  4. その他

この中から、主に人材派遣に関係することからお知らせします。

有給無償の教育訓練に関する交通費

まず、労働者派遣事業の許可基準の改正です。

改正点の1つ目は有給無償の教育訓練に関する交通費の件。

すでに平成27年改正法でどさくさ紛れに附帯決議された有給無償の教育訓練について、交通費の扱いが明文化されたものです。

○ 「教育訓練の有給かつ無償」について、下線部分を新たに追加する。

教育訓練の有給かつ無償

実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。

なお、派遣労働者が段階的かつ体系的な教育訓練を受講するためにかかる交通費については、派遣先との間の交通費より高くなる場合は派遣元事業主において負担すべきものであること。

「なお」書き以降が追記されるものですが、そもそも有給無償で教育訓練を実施することを義務づけるということ自体に多くの疑問がある中でご丁寧に交通費についても規定するものですね。

いまだに何をしたら教育訓練として有効なのかということは明らかではないと思いますが、厚生労働省としては国会で決まったことをやらないわけにもいかず、立場上規定しないわけにいかないということでしょうか。

これまで何度も書いていますが、私は決して教育訓練をしなくてもよいと言っているわけではありません。

むしろ行った方がよいと思いますが、それはあくまでも事業者の判断のもとに行うべきことであり、法律で規定するものではないという意味です。

こんな箸の上げ下ろしまで規定する左寄りの政策がけしからんと思うのです。

言いだしっぺの野党第一党はいまや崩壊寸前、風前の灯。悪法は早く改めるべきではないでしょうか。

少子高齢化や高度情報化により教育訓練が重要であることはすでに明白です。

本来は、教育訓練が重要だと考える事業者が自身の判断で必要なことをニーズに合わせて実施すべきで、それを競争力の源泉としてサービスの向上を図る方がはるかによい結果が生まれるように思います。

派遣と紹介の情報管理

もう一つは、人材派遣と人材紹介の情報管理についてです。

従来、派遣と紹介のデータベースは分けることが必要とされていましたが、これが改めて個別の管理を必要としない旨、明文化されます。

ただし、紹介で登録をした労働者のデータを派遣に使ってはいけない、あるいは派遣で登録をした労働者のデータを紹介に使ってはいけないということは従来どおりです。

○ 職業紹介事業と労働者派遣事業を兼業する場合の個人情報等の管理について、現行制度 (職業紹介に関する情報(求職者に係る個人情報、求人者に係る情報)の労働者派遣での使用禁止又は労働者派遣に関する情報(派遣労働者に係る個人情報、派遣先に係る情報)の職業紹介での使用禁止)は維持しつつ、別個の管理は要しないこととする。

データの管理については、私自身の記憶にないほど以前からわざわざ分けることはナンセンスだと思っていたので、今回やっと、明確に分ける必要がないと明文化されてよかったと思います。

派遣も紹介も同じような内容の個人情報、企業情報であるにもかかわらず、物理的に分かれていることが必要であるという解釈だったわけですが、システム的にはどちらで登録をしたかはフラグをつければよいだけです。

いずれ同一労働同一賃金の推進により、雇用形態によらず均等・均衡待遇が得られるようにするためにも、このような垣根はなくしていった方がよいですね。

なお、この規定については、職業紹介事業の許可基準でも同様のことが示されています。

職業紹介事業の許可基準の要件

今回、このデータの管理以外にも職業紹介事業の許可基準の改正点として、面積要件が改正され以下のようになります。

○ 職業紹介事業の許可基準のうち事業に関する要件について、現行の要件(おおむね20㎡以上)に代えて、求職者及び求人者のプライバシーを保護するための次に掲げるいずれかの措置を講ずることとする。なお、当分の間、現行の要件をたす場合は、この限りではないこととする。

(ア) 職業紹介の適正な実施に必要な構造・設備(個室の設置、パーテション等での区分)を有すること。

(イ) 他の求職者又は求人者と同室にならずに対面の職業紹介を行うことができるよう な措置(予制制、貸部屋の確保等)を講ずること。

広さよりも実質的な要件という観点で、今回の改正は納得感がありますね。

ただし、これは紹介だけの話で、派遣については触れられていません。

ちなみに派遣の許可要件は以下のとおりです。これは改正されないのでしょうか。細かいことですが、派遣と紹介、いずれもサービスを提供する事業者が増えているいま、可能な限り文言を統一していった方がよいと思います。

(ハ)事業所に関する判断

事業所について、事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上あるほか、その位置、設備等

からみて、労働者派遣事業を行うのに適切であること。

・ 当該要件を満たすためには、次のいずれにも該当すること。

a 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)で規制する風俗営業や性風俗特殊営業等が密集するなど事業の運営に好ましくない位置にないこと。

b 労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上あること。

ここにあげた派遣と紹介の許可要件については、適用期日が本年2017年5月30日の予定とされています。

前述の有給無償の教育訓練に伴う交通費については、改めて確認をする必要があります。

悪法も法ですから、法律で規定される以上は遵守することが必要です。

求人広告媒体にも規制

実は今日のメインテーマは、派遣や紹介の許可要件ではなく、「雇用保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案要綱等について」の諮問でした。

これまで「募集情報等提供事業」や「委託募集」、「労働者供給事業」には明確な規制がありませんでしたが、今後はこれらの事業者に対しても規制が設けられることになります。

以前、「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」の関係団体からのヒアリングの場で、委員から発表者に対して、「規制がない環境だったからうまくいったのだと言ってしまうのは言い過ぎだ」と、検討会としては珍しく、発表者がたしなめられるような場面を目撃したことをお伝えしました。

私も人材サービスを標榜しておきながら、恥ずかしい発言だと思っていました。

求人情報サイト、求人情報雑誌、新聞・雑誌の求人広告などの「募集情報等提供事業」について、求人広告に記載されていることと実態のかい離が問題視されていたこともあり、関係する法律について整備されることが主旨です。

以下の省令、告示について諮問がされましたが、いずれも妥当として答申されることになりました。ここでは詳細については割愛しますが、施行については来年、2018年1月1日からになります。

  • 雇用保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案要綱
  • 雇用保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係告示の整備等に関する告示案要綱
  • 職業安定法施行規則第二十四条の六第二項の規定に基づき厚生労働大臣が定める講習を定める告示案要綱

P.S. 本日の資料はこちらから。

P.S. 先日のブログ「マーケティングに使えない労働者派遣事業報告書の集計」でもお知らせした労働者派遣事業報告書の集計結果についても説明がありました。

案の定、マーケティングには使えません。

また、派遣法を改正して派遣は増えるのか減るのかという妙な議論もありましたが、集計方法が変わったので増えたのか減ったのかもわからなくなりました。

資料をご確認ください。

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