こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

昨日はイギリスのメイ首相が総選挙でEU離脱を問うという大きなニュースが飛び込みましたね。

むしろ、離脱をやめるのではなく、確固としたものにするということなので、恐らくイギリスのEU離脱は決定的なものになるのでしょう。

1993年にEUができてから四半世紀で大きな転換点を迎えていることになります。

当時、私はEU統合に備えてヨーロッパ市場のマーケティングに携わっていたこともあり、感慨深いものがあります。

日本のGDPがまさかの8位に転落

さて、今日は先週読んだ記事でとてもショックなものがあったので、経済の話をしてみたいと思います。

企業経営にとって歴史観をもって先行きを読むことは大切ですから、たまにはマクロな話もいいですよね。

イギリスのシンクタンク、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)が発表した2050年のGDPランキングの予想によると、日本は第8位に転落だそうです。

実際には今年2月に発表されていたようですが、あまり話題になっていなかったように思いますがなぜでしょう。

現状第3位でも中国と大きな差

この記事に行きついたのは、まず世界経済フォーラムの記事「The world’s 10 biggest economies in 2017」をみつけたところからでした。

この記事の紹介には「世界の富の4分の1を一国が占めている(One country owns a quarter of the world’s wealth.)」とありました。やはりアメリカはすごいですね。

そして、いまや中国のGDPは日本の倍以上。かつて世界第2位の経済大国と言われた日本は6年前の2011年に3位転落というのは周知のとおりですが、すでにこれほど差があるとは…。

次いで4位ドイツ、イギリス、フランス、インド、イタリア、ブラジル、10位カナダと続いています。

いつのまにか7位にインド、9位にブラジルもベスト10にランキングされていたのですね。

ちなみに必ずアメリアと常に対比されるロシアのGDPは世界の1.8%で、アメリカのわずか7%強。世界は経済力だけで回っているわけではないということですね。軍事力ということでしょうか。

いつのまにか変わるランキング

問題のショッキングなPwCの2050年のランキング「The World in 2050」をみるとどうでしょう。これから36年先です。

データのとり方にもよるようですが、PwCによれば以下の順位になるそうです。

  • 1位 中国
  • 2位 インド
  • 3位 アメリカ
  • 4位 インドネシア
  • 5位 ブラジル
  • 6位 ロシア
  • 7位 メキシコ
  • 8位 日本
  • 9位 ドイツ
  • 10位 イギリス

アメリカが3位に転落、フランスはベスト10落ち、イタリアにいたっては20位にも入らないそうです。

そう遠くない時点の2020年以降には、日本はインドやインドネシアに抜かれるようです。その後、時間をかけて2050年までにはブラジル、ロシア、メキシコにも抜かれるそうです

中国、インド、インドネシア、ブラジル、ロシア、メキシコといったいずれも発展途上と考えられてきた国が伸びてくるということですが、共通していることは国土が広い、人口が多いということでしょうか。

日本の少子高齢化は経済のうえでは大きなマイナスということですね。

遠い先ではない36年後

2050年というと私はすでに生きていないとは思うのですが、この10年ぐらいで社会に出て定年年齢が70歳になることが見えている皆さんにとっては他人事ではないはずです。

実際に先をみるとまだまだと思っていても、振り返ってみるとあっという間の年月と言えることも多いように思います。

企業の寿命が人の職業人生よりも短くなっているといわれる時代ですが、そうであったとしても企業は従業員の幸せのために持続的成長を果たすことが社会的責任ではないでしょうか。

ここで挙げられている2050年の姿はある日突然やってくるわけではありません。日本は2050年を待つこともなく2030年以降には大きく失速するとされています。

36年間に徐々にその過程を経るのです。その変化をどう捉えるかということは企業経営にとって非常に重要だと思います。

経済以外の指標が求められる時代

かつてスペイン・ハプスブルク帝国、大英帝国と呼ばれた太陽の沈まない国も今では世界のトップランナーから外れています。

ドイツやフランス、あるいはスイス、オランダ、ベルギー、北欧のスエ―デン、デンマークなどを見ると必ずしもGDPのような経済指標が豊かさを表すものではないように思います。

私は、EUが統合される頃、これらの国によく足を運びましたが、当時でもGDPで日本を下回るこれらの国が貧しいとは決して思えませんでした。

国がGDP、GDPと言っているのは、企業が売上、売上と言っているのと同じで、数字上の豊かさだけです。

本来の豊かさというのは経済だけで計れるものではないということを改めて考える必要があるように思います。

企業のあり方も変わる

企業の目的は利益を上げること、そのように考えられている方も多いのかもしれませんが、本来、利益は目的に向かって事業を遂行するための前提条件でしかありません。

豊かさが経済的なものだけではなく、精神的なものに依存するとすると、今後日本もかつてヨーロッパの国々が通過したであろう道筋をたどることになるような気がします。成熟した社会に向かっていくということでしょう。

かつてエコノミックアニマルと言われた日本の飛躍的な経済成長は、30年も前に終わっているはずですが、それ以降も社会的な価値観が変わっていないということは、むしろ不自然です。

いままさにその歪みが噴出し、大きな転換期にさしかかっているように感じます。

人材サービスの存在価値の再考

最後に人材サービスはどう変わるか考えてみたいと思います。

漠然としていますが、結局、求められる価値はマッチングに戻るのではないでしょうか。

以前、ある方から人材サービス業界で売上規模の大きいある事業者こそがよい事業者なのだという話を聞かされました。

その時に思ったことは、それはあくまでも経済的な話であって、サービスとして考えた場合には必ずしもイコールではないということです。

すでに拙著「雇用が変わる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント」でも同様のことを書いていますが、職を求める人にとっても、人材を求める企業にとっても、最適と思える企業、最適と思える人と巡り合うことが最高のサービスなのです。

規模の大小ではないことは言うまでもありません。

ものごとの本質を追求する事業者が勝ち抜く時代になっていくのではないでしょうか。

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雇用が変わる

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