こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

それにしても暑いですね。先般の九州北部、昨日の秋田、新潟の大雨など、ゲリラ豪雨は大きな被害を生んでいますが、こう暑いとザッと一雨、ほどよくお湿りが欲しいような気もします。

労働政策審議会の構成が変わる

さて、今日は厚生労働省の組織変更についてです。

つい先週、7月21日の夕刻の厚生労働省の「新着情報配信サービス」を何の気なしに眺めていると、まず、「労働政策審議会 分科会及び部会の構成」という記事が目に留まりました。

これによると、これまで6回開催された労政審の同一労働同一賃金部会の位置づけが変わるとのこと。

これまで、開催の度に座長が舌を噛みそうになりながら、「労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会を始めます」と言ってきたのですが、新たな位置づけとして、「労働政策審議会職業安定分科会、雇用環境・均等分科会同一労働同一賃金部会」に変わるそうです。

同一労働同一賃金部会の位置づけ

これについては、これまで何の報道も記憶になく、失礼ながら、例によって?厚生労働省がこっそり告知しているのだろうかと思いました。

よくよく見てみると、「職業安定分科会」の名称が残り、「労働条件分科会」と「雇用均等分科会」がなくなり、この2つの代わりに「雇用環境・均等分科会」という聞き慣れない名称が入っています。

これまで有期労働、パートタイム労働、派遣労働が3つの分科会によって串刺しにされていた「同一労働賃金部会」が、2つの分科会によって網羅されるというのは、組織論的に不自然です。

組織図にある2つの分科会から張られたt「同一労働賃金部会」のリンク先は、いずれも「労働政策審議会 (労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会)」となっており、現時点ではまだ表記が間に合っておらず、頭かくして…という感じではありますが…。

「派遣・有期労働対策部」がない!

いずれにしても、有期労働、パートタイム労働、派遣労働のいずれかがなくなったのかと思ったのですが、さらに「新着情報配信サービス」を見てみると「平成29年7月21日付幹部名簿」というものもありました。

ナント!、人材サービス事業者の皆さんには馴染みの深い需給調整課の上位組織だった「派遣・有期労働対策部」がなくなっています。

その部長だった鈴木英二郎氏の名前もありません。鈴木英二郎氏は労働者派遣法の平成24年法改正時に需給調整課長でした。

たまたまこの発表があった2日前の7月19日に業界の有名人?と話をしたときに鈴木英二郎氏の名前が出たことを思い出し、とても驚きました。なにかの知らせだったということでしょうか。。

厚生労働本省の組織再編

「派遣・有期労働対策部」は、労働基準局や職業安定局のような局に準ずる位置づけだったのですが、当時鳴り物入りでできた「派遣・有期労働対策部」がなくなるのにプレスリリースもないのかと、思わず探してしまいました。

すると、7月4日付で「平成29年度厚生労働本省の組織再編について」ときちんとリリースが出ているではないですか。業界内でまったくと言っていいほど話題になっていませんでしたね。

珍しく?何がどう変わったかまで、きちんと掲載されています。

立法、行政についての取材力では群れを抜いている「アドバンスニュース」を覗いても、現在、雇用・労働系で最も情報提供力がある「人材サービスの公益的発展を考える会」のページを遡っても、まったく触れられていません。紙ベースの「月刊人材ビジネス」はなおさらです。

これだけ組織も人事も大幅に変わっているのに誰も触れないのは珍しいですね。

非正規労働対策の統合が狙い

主な組織改編は以下とのことです。

  1. 医務技監の新設 
  2. 雇用環境・均等局の新設
  3. 子ども家庭局の新設
  4. 人材開発統括官の新設

医療系を除くと、雇用・労働系では「雇用環境・均等局」「子ども家庭局」「人材開発統括官」の3つが新設されたことになります。

その目的として以下のように記載されています。

雇用環境・均等局、子ども家庭局、人材開発統括官の新設

直面する「働き方改革」、「少子化対策・子育て支援」 、「生産性向上」の課題 に的確に対応し、労働基準局、職業安定局、雇用均等・児童家庭局に分かれて いる非正規労働対策を統合し、関係部局の再編を行う。

従来、大きな括りでは雇用形態による担当部局の切り分けがありましたが、今回の組織改正ではいわゆる非正規雇用についてすべて統合されるとのこと。

特別視されてきた派遣労働が、契約社員やパートタイマーと同じ土俵で語られることになることが予想されるので、方向性としては望ましいと思います。

例えば、派遣労働だけが、有給無償で8時間のキャリア形成支援が必要だとか、日雇労働がダメだとか、意味不明なマージン率を開示しろといった特異性が可視化されることになるはずです。

あらゆる項目について横並びで比較すれば、それぞれの過不足が見えるようになります。

具体的には以下のようなことが目的とのことです。

1 雇用環境・均等局の新設

働き方改革に特化した局を新設し、①同一労働同一賃金の実現など非正規労働者の処遇改善、②女性活躍推進や均等処遇の推進、③長時間労働の削減等ワーク・ライフ・バランスの実現、④短時間・在宅労働の雇用環境改善などに沿って組織を再編し、働き方改革を強力に推進する体制の強化を図る。

2 子ども家庭局の新設

子ども・子育て支援に特化した局を新設し、保育・子育て人材や児童相談所等の子育て支援基盤の一体的整備や切れ目のない子育て仕事両立支援の推進、虐待防止対策と連携した社会的養育の推進体制の強化を図る。

3 人材開発統括官の新設

生産性の向上を推進する統括官を新設し、①働き手一人ひとりの能力開発を通じた若者の就労支援(若年者雇用対策の企画立案の一元化)、②人材育成の二つの柱に沿って組織を再編し、人材開発の支援体制の強化を図る。

期中の組織改正

振り返ってみると、昨年12月28日付のブログ「厚労省『雇用環境・均等局』『人材開発統括官』設置、『同一労働同一賃金』への一歩」で、塩崎厚生労働大臣が、記者会見で、「働き方改革」の一環として「雇用環境・均等局」「子ども家庭局」を設置するとコメントしていたことを思い出しました。

大臣の発言にしては、その後何の音沙汰もなくおかしいとは思っていたのですが、まさか7月4日付という期中で組織改正するとは思いませんでした。

一般的には昨年12月にアナウンスをすれば、年度替わりの4月から改正しますよね。

恐らく、働き方改革の中核となる長時間労働の是正と同一労働同一賃金の建議がされ、秋の臨時国会で法案提出されるまでの間の一区切りのこのタイミングで組織改正に至ったのではないでしょうか。

法案云々もさることながら、組織運営に関するマネジメントの観点からも興味深いものがあります。

やはり「組織」は「戦略」に従う

昨年12月28日のブログでも「組織は戦略に従う」と書きましたが、経営戦略と同じように国家戦略においてもやはり「組織」は「戦略」に従うことが必要ということでしょう。

「組織は戦略に従う」は、アメリカの経営学者アルフレッド・チャンドラーの言葉ですが、一般に組織は、理念→ビジョン→戦略に基づいて構成されます。

安倍内閣によって「一億総活躍社会実現」というビジョンと、「働き方改革」という戦略を掲げられたことに対して、厚生労働省として今回の組織改正を行うという流れは、極めて自然な成り行きで、むしろ行政としてきちんと政府の示す方向に向いているということになります。

しかし、先般の都議会議員選依頼、安倍政権は逆風にさらされ、今後の成り行きが不透明になっています。

政権がどうなろうとも、いわゆる非正規雇用についてすべて統合するという今回の組織改正の考え方は継承してほしいものです。

 

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雇用が変わる

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