1月17日から20日まで 世界経済フォーラム(World Economic Forum)の年次総会が開催されています。

今年のテーマは、「Responsive and Responsible Leadership」。「敏感に反応し責任をもつリーダーシップ」とでも訳すのでしょうか。

中国のトップとしてはじめて習近平国家主席が参加し、トランプ氏が唱える保護主義について懸念を表明したということもすでに報道されています。

まるでアメリカと中国の立場が入れ替わったような状態ですね。もっとも中国はこれまで保護主義的で不公正であったこともあり説得力はないとも思いますが…。

ちょうど、今日はトランプ新大統領の就任の日。この世界経済フォーラムの日程はそれに合わせたのでしょうか。

今年も続く「The Future of Jobs」

昨年は、「第4次産業革命」がテーマとして掲げられ、「The Future of Jobs(仕事の未来)」の報告されたことは記憶に新しいものがあります。

「The Future of Jobs」では、2020年までに世界 15の国と地域で約510万人が職を失うと発表しています。 710万人が職を失う一方、200万人分の新たな雇用が創出されると近い将来が見通されました。

欧米の動きもさることながら、今年も第4次産業革命に話題が集中しているようです。

雇用については、新たな説も出てきているようです。

思うほど雇用が失われることはないとか、失われない職業に就くための技能に確信がないとか。

要するに「まだわからない」というのが実際のところなのではないでしょうか。

ただ一つ、確実なことは「変わる」ということです。

「どう変わるかはまだわからないけど、間違いなく変わる」。この認識だけは持つことが必要なのです。

雇用のあり方の変化はリアルタイム

すでに拙ブログでも何度か書いているのですが、人材サービス事業者が第4次産業革命で考えなければならないことには2つの側面があります。

1つは当然ながら、雇用のあり方の変化です。つまり、失われる雇用と新たに生まれる雇用。

グローバル化、高度情報化が進んだ現在、グローバルに進んでいることはもはや他山の石ではありません。

事実、今日、スイスで行われている世界経済フォーラムについて、私がブログを書いているのです。

これまでの第1次、2次、3次産業革命のようなタイムラグはもうありません。

この第4次産業革命の影響は、企業規模の大小、業種や職種などのセグメント、地域や商圏などを問わず、間違いなくリアルタイムに受けることになるでしょう。

海外のことだからとか、大企業のことだからと言っていられるような状況ではないと認識する必要があります。

自社の生産性の向上

もう1つ、考えなければいけないことは、自社の生産性の向上です。

人材サービス事業者として考えなくてはならないことは、単純に求められる人をマッチングすればよいというものではなくなっていくということです。

現在でもマッチングはおろか、表現は悪いですが、単なる「頭数合わせ」で人を紹介していることも多いのかも知れませんがもう通用しません。

少なくとも、適性として合っている人をマッチング、仮に適性がなければ適性がもてるように育成というところまで踏み込むことが必要になります。

そうであれば、当然、自社のリソース配分は変わってきます。

キャリアカウンセリングやキャリア形成支援にシフトをするためには、従来の仕事のやり方を変える必要が出てきます。いわゆる働き方改革ではなくプロセス改革です。

法改正によって経営的に負担が大きくなっている中で、従来の仕事をそのままに新たなことをやる余裕はないはずです。

そうであれば、従来の業務について、いかに生産性を高め、求められている価値のある業務にシフトするかが問われるということです。

自社の業務の中にもAIやロボットを導入して生産性を高めるということも必要になるのではないでしょうか。

世界、時代、雇用、そして経営

年初の拙ブログ「人材サービスのビジネスチャンスの夜明け」で「世界が変わる」「時代が変わる」「雇用が変わる」、そして「経営を変える」をテーマに書きました。

すでに、イギリスのEU離脱は確定し、トランプ政権も今日発足します。

第4次産業革命は、「進歩の速さに、産業界も追いつくことが難しい」というほどのスピードで進んでいます。

実効性はともかく「同一労働同一賃金」も昨年末のガイドライン案によって相応の変化が起こります。

不確実なことばかりですが、これらのことを少しでも先取りしていかなければ明日はありません。

難しいかじ取りであることは間違いありませんが、経営を変えなければならないことだけは確かと言えるでしょう。

私はスイスには何かと縁があり、30年ぐらい前から15回近く行っているのですが、行くたびに何かが新しくなったという印象を受けたことはありません。

他のヨーロッパと同じようにどちらかというと保守的なところですね。

ダボスやサンモリッツはスイスの東部、チューリヒやジュネーブからは少し交通の便が悪いことから残念ながら行ったことがありませんが、それほど大きな町ではないはずです。

そのようなところが世界を変える発信源になるのですから、時代は変わりましたね。

明日は雪が降るかもしれません。どうぞお気をつけて。

AI導入「第4次産業革命」議論 期待と雇用不安 交錯 ダボス会議

日本経済新聞 2017年1月19日

【ダボス(スイス東部)=小滝麻理子】17日開幕の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で、人工知能(AI)やロボット技術などを軸とする「第4次産業革命」をどう進めるかが議論になっている。

生産性向上の恩恵だけでなく、雇用への影響にも焦点があたり始めている。

経営者からは若年層の教育や透明性の確保が重要との指摘が相次いだ。

第4次産業革命は昨年に続き、ダボス会議での主要なテーマとなっている。

中国・アリババ集団の張勇最高経営責任者(CEO)は17日の討論会で、データ活用の例として大型商業施設と組んで駐車場で車を見つけやすくする仕組みを紹介。

スイス金融大手UBSのセルジオ・エルモッティCEOは「金融のように規制された産業ではAIが複雑な処理に対応できるようになるのがプラスだ」と語った。

米ウォルマート・ストアーズのダグ・マクミロンCEOは2月にプライベートブランド(PB)で3.88ドル(約440円)の低価格Tシャツを売り出すと表明。

「どこの木綿を使ったか、生産にどんな水を使ったかを追跡できる」と説明した。

消費者が商品の透明性を求める傾向が強くなる中、サプライチェーンの強化が役立っているという。

一方、技術革新が雇用に与える影響には警戒が高まっている。

ダボス会議は今後、新技術により数百万人が職を失うと予想。世界的なポピュリズム(大衆迎合主義)の高まりの背景には、技術革新から取り残された人々の強い不安があるとの問題意識が共有された。

インドのIT(情報技術)大手インフォシスのビシャル・シッカCEOは「インドのような若年層が多い国でも、技術革新により雇用を脅かされているとの不安は強まっている」と述べた。

過去数カ月のAI技術の進歩の速さに、産業界も追いつくことが難しいとの声も上がった。

多くの経営者は情報開示や教育がカギを握るとみている。米ゼネラル・モーターズ(GM)のメアリー・バーラCEOはAIを活用した自動運転技術は既存の雇用の減少には必ずしも直結しないと指摘。

「肝心なのは新技術のロードマップをしっかりと示し、良い点も悪い点も隠さず従業員や利害関係者と共有することだ」と語った。

シッカ氏は「AI全盛の時代における人間の競争力は創造性だ」と指摘。

若年層が起業家の思考を習得できる職業訓練など、幅広い層の創造性を促す取り組みが必要と訴えた。

自動化で消える職業は全体の5%

ダボスで発表された3つの新リポート

The Wall Street Journal By LAUREN WEBER
2017 年1 月19日 09:50 JST 更新

スイスの山岳リゾート地ダボスで今週開かれている世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)では、自動化や仕事の未来に焦点を当てた新たなリポートがいくつか発表された。

その中から特筆すべきリポートを紹介する。

いずれロボットが人間の仕事を奪うとの話をよく耳にするが、米マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの新たなリポートによると、完全に自動化されるリスクにさらされているのは全職業のわずか5%にとどまる。 

仕事は消滅するのではなく劇的に変化するのであり、労働者は変化への順応を余儀なくされるという。同リポートは800種の職業と2000種の業務を分析。

既存テクノロジーの利用で2055年までに、現在の労働者が担っている業務の半分が自動化される可能性があると予測する。

こうした変化は大量の失業につながるわけではなく、自動化により向こう50年間で世界の生産性が年間0.8~1.4%向上するとリポートは結論づけている。

ではこうした生産性の向上から恩恵を受けるのは誰か。

米コンサルティング大手アクセンチュアの研究によると、社会的・感情的知能といった人間の能力に依存する業務を遂行するために、労働者が技能を磨けるかどうかどうかは企業のリーダー次第だ。

戦略的な再訓練のペースを2倍速めることで、自動化の影響を受けやすい仕事の割合を減らせるだろうとアクセンチュアは論じている。

一方、労働者自身は自動化を敵視しているわけではない。

1万人余りを対象に実施されたアクセンチュアの調査によると、向こう5年の間にテクノロジーが自分たちの仕事をどう変化させるかについて、楽観視している人の割合は87%に達した。

そうした変化に対する準備ができていると回答した労働者の割合も同程度あった。

回答した労働者の約半数が高い技能が必要な職種に就いており、残り半数は中程度もしくは低い技能の職種に二分された。

高技能労働者の育成、1位はスイス

とはいえ、近い将来も残っていく職業に就くためにどういった技能が必要かについて10人に4人が確信はないと回答。

また、常に技能を最新のものにしておくために必要な訓練を雇用主は提供していないとの回答は過半数に達した。

将来を見据えた労働力の育成は国によって差がある。世界的な人材サービス企業アデコグループ、シンガポールのヒューマン・キャピタル・リーダーシップ研究所、仏インシアード経営大学院の教授らが共同でまとめたリポートでは、高い技能を持った労働者の育成とつなぎ留めに長じた国のランキングでスイスが1位となった。

2位以下はシンガポール、英国、米国、スウェーデンと続く。

労働市場が国全体というより特定地域に偏在することも多いため、同リポートは都市のランキングも作成。

それによると、デンマークのコペンハーゲンがトップで、続いてチューリヒ、ヘルシンキ、サンフランシスコ、スウェーデンのヨーテボリとなっている。

人材という観点から将来性が高いとされた都市の中には、あまり知られていない小都市も少なからず含まれる。

例えば、9位につけたオランダのアントホーフェン、11位の英カーディフなどだ。

こうした都市では豊かな生活水準が才能ある人材を引きつけているほか、少数ながらも大企業が存在しているおかげで国際的な経験とキャリアを積める機会もあるのだ。

AIの経済効果を考える:雇用は減るのか増えるのか

The Wall Street Journal By SAM SCHECHNER

2017年1月19日 11:51 JST

【ダボス(スイス)】人工知能(AI)の大きな進歩は中間層の仕事にどう影響するのか。

企業や当局の間では、急速に変化するハイテク技術と雇用の関係を巡って緊張感が高まっている。

当地で開催されている世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)には、政界や財界のリーダーたちと並んで、IBM、マイクロソフト、フェイスブック、グーグルの親会社アルファベットなどAIの可能性を追求している企業の幹部が集まっている。

彼らの討議の大きなテーマになっているのが、自動化の拡大が仕事に及ぼす経済効果だ。

企業幹部やエコノミストの多くは、学習あるいは自律的な行動ができるAIが発達すれば、最終的には雇用の純増につながると考えている。

つまり、かつての工業化の波と同様に、旧来の雇用がなくなる以上に多くの新たな雇用が生み出され、全体的には繁栄をもたらすという見方だ。

しかし、一部には、次の技術革新で得られる利益が不公平にしか分配されない恐れがあり、新たな労働モデルへの移行が多くの労働者にとって厳しいものになりかねないと懸念する向きもある。

「ディスラプション(破壊)の始まりをわれわれは本当には経験していないと思う」。

こう語るのは、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ最高経営責任者(CEO)。同社はクラウドを基盤にした顧客情報管理(CRM)システムで大きな市場シェアを持つ。ベニオフCEOは「技術の波は生産性の大幅な上昇を生み出すだろう。しかし同時に、はるかに大きな不平等に直面するリスクがある」と指摘した。

グローバルな競争激化と自動化の進展は、多くの西側諸国で雇用および賃金の伸びが停滞している要因の一つになっているとエコノミストらは言う。WEFの委託で行われた調査によれば、先進26カ国の年間所得(中央値)は2008-13年に2.6%減少した。

複数の著名IT企業幹部は、AIなどの技術発展に伴う破壊は、労働者が新たな環境に順応するのに十分なほど漸進的なものになると考えている。例えばIBMのバージニア・ロメッティCEOは17日、「人間か機械かということではない」とし、「それはシンビオティック(共生的)な関係だ。われわれの目的は、人間が行うことに(新技術が)奉仕し、補強することだ」と語った。

しかし、懸念を呼ぶ前例はある。英オックスフォード大学の経済学者、カール・ベネディクト・フレイ氏によれば、産業革命から生じた生産性上昇は当初、賃金の上昇につながらなかった。

そして、賃金上昇が実現したのは、新世代の労働者たちが新たなスキルを身につけた後の約80年後だったという。

また米マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学者、デービッド・オーター氏によると、製造業などの分野で多くの定期的な仕事が自動化によって失われた一方で、より低度なスキルの手仕事には成長が見られた。

また、より柔軟な人知が要求される高度な仕事でも同様に成長が実現した結果、米国の労働力が二極化されたという。

一部の研究者は、将来的には、配車アプリ大手ウーバー・テクノロジーズなどが手掛ける自動運転車がドライバーの仕事をなくす可能性があるとみている。

また、ソフトウエアが執筆や分析など一部のホワイトカラーの仕事を自動化し始める可能性も言及されている。

コンサルティング大手マッキンゼーの新たな調査によると、世界では11億人以上(米国と欧州は1億人分以上)のフルタイムの雇用が自動化可能な仕事に関連がある。

マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは18日、「課題はこうした中間スキルの仕事だ」とし、社会の混乱や重い規制を回避するため、企業は新たな社会モデルを検討すべきだと指摘。

「われわれはなんとか、資本リターンと労働リターンが均衡する新たな世界に到らなくてはならない。うまく事を進めなければ、悪循環に陥るだろう」と警告した。

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