こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。
今日は2回目のプレミアムフライデー。人材派遣に携わる皆さんの多くの方にとっては月末月初は忙しいのでそれどころではないですよね。
さて、年度末となる本日3月31日に厚生労働省委託事業の「優良派遣事業者認定制度」で、平成28年度の認定事業者が公表されました。
今回で3回目となり、認定を受けた36事業者を含め合計で169事業者が認定を受けたことになります。(詳細は「優良派遣事業者」認定のお知らせを参照。)
まずは、認定を受けられた事業者の皆さんおめでとうございます。
今年度は82のチェック項目がありましたが、すべてのエビデンスを用意するのはとても大変ですね。お疲れさまでした。
■ 認定を受ける資格ある?
来年度は第1回目に認定を受けた事業者の更新もありますが、認定を受ける事業者が増えるにしたがってこの認定制度に対する疑問の声も耳にするようになりました。
「あの会社は本当に認定を受ける資格あるの?」という話をよく聞きます。
多くは、その事業者を通じて働いている派遣社員の方、あるいはその事業者で働いている方から発せられるもののようです。
そして、一定の市場の中ではそのようなネガティブな話は事業者間で瞬く間に広がります。
「あの会社は評判が悪いのによく認定受けたな」という印象を持たれることもあるのかもしれません。
火のないところに煙は立たないと言いますが、恐らくその印象は当たらずとも遠からずということなのでしょう。
■ 認定制度の位置づけ
昨年9月20日の拙ブログ「ここが違う! 今年の『優良派遣事業者認定制度』」でも書いたように、この認定制度については私も懐疑的な部分もあると申し上げた一方、それ相応の意義もあるのではないかと思っています。
しかし、「あの会社は本当に認定を受ける資格あるの?」という話がささやかれるとなると、残念なことに制度そのものの位置づけが危ういものになってしまいます。
なぜ、そのような事業者が認定を受けることになってしまうのかということは考えておく必要があるのではないでしょうか。
そして、そのような事業者が認定を受けられないようなしくみも併せて考える必要があります。
■ 審査方法の限界
事前にチェック項目が示されることは公平性の点からよいのだとは思いますが、審査過程でエビデンスの有無で可否を問う審査方法になっていることに限界があるのではないでしょうか。
3回も回を重ねると、業界内には「認定を受けるためのノウハウ」というものが流通しているらしく、こうすれば合格するという大学受験の「傾向と対策」のようなものが確立されているという話も耳にします。
つまり、実際のオペレーション上では実行されていなくても、「傾向と対策」にしたがってエビデンスを揃え、そつなく回答すれば審査上は可とされるということです。
そして、仮に審査員がオペレーションに疑問を感じたとしてもエビデンスを示されれば否と言えないしくみに問題があるようです。
もちろん捏造は許されるものではありませんが、現在の審査方法では限りがあります。
■ 一歩踏み込んだ審査方法に
税務調査などでもそうかと思いますが、少なくとも審査員がオペレーションに疑問を感じた場合には立入調査をするようなことも考える必要があるのではないでしょうか。
例えば、審査対応の担当者だけでなく、その項目に関することに携わる担当者に抜き打ちで実地のヒヤリングをするようなことも効果があるように思います。
すべての項目を現場で確認することは時間的にも非効率ですが、敢えて言うなら審査員がオペレーション上疑問を感じた項目については、踏み込んだ調査がされるとよいと思います。
■ 内部統制と同様のしくみの導入を
もう一つは、客観性がないということも問題です。
本来は、当該事業者からサービスを受ける立場の声が反映されて然るべきかと思いますが、それはそれで非効率ということでしょう。
そうであれば、認定された以降も、内部統制と同様に客観的な声を集めるしくみを創ることが必要なのではないでしょうか。
もちろん、誹謗中傷などによる通報もないとは言えませんが、これも火の無いところに煙は立ちません。
少なくともJHRでそれらの通報を集積し、必要に応じて追加審査、さらに状況に応じて更新時の審査の強弱を講じるというようなことも必要です。
■ 本来の目的のために
優良派遣事業者認定制度は、優良な人材派遣事業者を育成し、業界全体の質的向上及び労働者と受入企業の適切なマッチングを促進することが目的とされています。
前述のようにその場しのぎの対応だけで認定を受けている事業者があるとしたら、本来の目的とは乖離したものとなり、せっかくの制度も台無しになってしまいます。
審査は落とすためのものではないのだとは思いますが、一方では相応しくない事業者については、やはり認定してはいけないのだろうと思います。
そろそろ、次のフェーズに移る時期ではないでしょうか。
もう4月というのになかなか暖かくなりませんね。今週末もお花見にはいま一つのようですが、よい週末をお過ごしください。
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