人材派遣業界唯一の月刊誌、株式会社オピニオンの月刊「人材ビジネス」の12月号に拙著「雇用が変わる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント」を採り上げていただきました。

購読されている皆さんには、すでにお手元にも届いていると思いますが、Book Review(P.42)で「話題の一冊」として以下のように評していただきました。過分なご評価をいただき恐縮です。

月刊「人材ビジネス」Book Review月刊「人材ビジネス」

Book Review「話題の一冊」

多角的な視点から斬り込む人材派遣の現状と未来への提言

雇用がわる 人材派遣とアウトソーシング ─ 外部人材の戦略的マネジメント』 水川浩之

アデコ株式会社にて役職を歴任、現在は人材サービス企業に向けたコンサルティングを手がけている著者が人材派遣とアウトソーシングの「過去・現在・未来」についてひも解いた一冊。

人材サービスの最前線で辣腕を振るった人物による実践的な視点が特徴だが、同時に人材サービス事業者側の視点のみで書かれたものではない。

人材サービスを使う側の視点やグローバルな見地からもデータを収集し鋭い切り口で考察が加えられている。

これは、著者がアデコに入社する以前は、グローバルな事業を展開する電気機器メーカー、電気通信事業者に勤務し、人材サービスを活用するという経験をしたからだろう。

ユーザー視点からみた人材派遣やアウトソーシングを活用するメリット・デメリットや世界各国の人材派遣事業の実態や法規制のあり方に触れた項などは、人材サービスを活用するユーザー企業の経営者を含む人事責任者にとっても興味深い内容であると同時に、人材サービス事業者にとっては自らのビジネスを客観的に見るのに大いに役立つ。

もちろん、労働者派遣法の改正経緯についても、その時々の社会・政治情勢にも触れながら、その本質と問題点などを鋭く指摘している。

また、労働市場の変化をマーケティング戦略立案の手法である「政治的・経済的・社会的・技術的視点での分析=PEST分析」で読み解き、その上で未来に向けての雇用政策・雇用戦略を提言している章も読み応えがある。

特に、「人材サービスにおいて商品となるのは〝人〞でなく〝サービス〞」「サービスの質において公平かつ公正に競争できる環境構築のためシンプルな規制にすべきだが、〝人〞の尊厳をないがしろにするような事業者は排除すべき」という主張は人材サービス事業に関わる者すべてが胸に刻んでおくべきだろう。

「多角的な視点から」

まず、「多角的な視点から斬り込む…」と見出しをつけていただきました。

よく言えば「多角的」、悪く言えば「散らかっている」という感じでしょうか。よく書いて頂いて恐縮です。

実はこれ、私の仕事のしかたなのだと思いますが、ものごと一方向だけから見ていてはわかりませんよね。

タテヨコ斜め、上から、下から、前から、後ろからって、いろいろな見方をしなければ本当の姿って見えてこないと思うのです。

その意味では、人材サービスの成り立ちや法制度の変遷、派遣社員・派遣先企業・派遣元事業者から見た市場動向、事業を取り巻く環境、海外の動向、海外の法規制、海外の市場と一通り把握してからということで第1章が成り立っています。

ある有識者の方からも、成り立ちから理解することが大切だとお褒めいただきましたが、「徳性に問題のない者に許可する」がこのビジネスの根幹です。

人材サービス業界そのものに「徳性」が求められている、つまり高潔な倫理観が必要ということは噛みしめる必要があるのではないかと思います。

親しくしてもらっている別の有識者は、真っ先にこの「徳性」について反応してくれました。これこそ論理の頂点なのです。ものごとの本質を知ることは非常に大切です。

「グローバルな見地からもデータを収集」

巻頭の「はじめに」の最初で、少子高齢化、グローバル化、高度情報化ということから話を始めたのですが、グローバル化の中で人材サービス自体もグローバルの中にあるという認識が必要だと思い海外の情報も盛り込みました。

実は、出版社が世界でも有数の法律書専門の出版社のこともあり、また、私が外資の人材サービス業出身であることから、海外のことも盛り込んでほしいというリクエストがあったというのもいきさつでした。

実際に厚生労働省の労働政策審議会でも海外の動向について対比されることもあり、世界の中の日本がどうあるべきか、あるいは、どうなっていくのかということを意識せざるをえません。

振り返ってみると海外について調べることに一番時間がかかったかも知れません。

例えば、「同一労働同一賃金」の行く末を見通すためにも意味のあるEUのリスボン条約の157条から「EU派遣労働指令」に至るプロセスは、そのまま現在の「働き方改革実現会議」にも当てはまるような展開になっています。

私の探し方が悪いのかもしれませんが、リスボン条約157条の正式な和訳が見つからずに、結局、自分で翻訳することになってしまったし(笑)。

また、CIETT(現WEC/World Employment Confederation)の2015年の資料は日本では流通しておらず、一方では疑問のあるデータを見つけてCIETTの広報に問い合わせて確認を取ったりと、それなりに苦労した部分です。

「人材サービスを使う側の視点」

まさに、第2章と第3章はそうですね。この本自体が人材サービスを利用する企業向けに書いたものなので、事業者から見ると最低限クライアント企業に知っておいてほしいことを書いたつもりです。

実際に私自身がクライアント企業の立場にあったころの経験を基にしながら、さらに事業者側の視点を織り交ぜ、当然ですが法的にも最新の平成27年法まで網羅しています。

人材サービスを提供している事業者の立場からすると、クライアント企業の理解の乏しさに困ることはないですか?

人材サービスは、人材派遣では、派遣社員、派遣元事業者、派遣先企業、あるいはアウトソーシングでは委託先従業員、委託先事業者、委託元企業がなければ成り立たないのですから、その三者が同じ認識をもつ必要があるはずです。

その意味からも、クライアント企業にもきちんと理解をしておいてもらうことは非常に重要なことだと思います。

クライアント企業向けの本はほとんど見たことがないので、プロモーションなどにもお役立ていただければと思います。

逆に言うと事業者の方は、第2章は知っていて当然の内容だと思います。知らないことがあるとすると、それはそれで…(^^;;

ちなみにBPOのマネジメントについて書かれた本もほとんどありません。業界内の何人もの方から第3章は、「見たことない」「参考になる」とお褒めいただきました。

実際に私自身が実務上で経験したことばかりなのでご参照いただければ幸いです。

「政治的・経済的・社会的・技術的視点での分析」

第4章は私自身の主張を、と出版社から言われていたのですが、実は第1章から3章までとこの第4章を書くまでの間には3か月ぐらいのインターバルがありました。

いわゆるスランプですね。ある人から「最後が一番重要でしょ」と言われてパタッと筆が止まったというか(笑)。

主張といってもそれを導くための根拠が必要なわけですから、その根拠として政治的・経済的・社会的・技術的視点によるPEST分析をすることを思いついたのです。

日ごろ厚生労働省などに出入りをしていると、ほとんどが法制度の側面だけで雇用が語られることが多いのですが、常々ビジネス的な感覚から言うとそれ以上に経済や社会、技術による雇用への影響の方がはるかに大きいと感じていたからです。

働き方という観点ではパソコンやネット、携帯電話やスマホといったものの方が影響が大きいと思いませんか?

特に私は情報通信の世界から人材サービスの世界に移ったこともあり、情報通信技術が雇用に与えた影響はとても大きなものがあったと思っていますし、これからもそうだろうと思います。

ある学識者の方からもこのPEST分析を参考にさせてもらうと言ったもらいましたが、この書評でも「未来に向けての雇用政策・雇用戦略を提言している章も読み応えがある」と評価をしていただけてありがたいです。

祝!! 月刊「人材ビジネス」創刊30周年

月刊人材ビジネス先般、拙ブログ「『頑張ろう!人材ビジネス』~月刊人材ビジネス創刊30周年パーティー~」にも書いたように創刊30周年だそうです。改めてお祝いを申し上げます。

月刊「人材ビジネス」が人材サービス業界に果たしてきた影響は非常に大きなものがあると敬服します。

拙著も三浦社長が旨とされている「正々堂々と」に習い、良いことは良い、悪いことは悪いと書いたつもりです。

そのような月刊「人材ビジネス」でこのように過分に評していただけたこと大変光栄に思います。心から感謝申し上げます。

 

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雇用が変わる

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