こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。
5月2日のブログ「百害あって一利なし、『マージン率の開示規制廃止』を」は、GW中にもかかわらず多くの方にご覧いただけました。ありがとうございます。
■ マージン率開示の廃止を規制改革会議が意見
マージン率の開示の規制廃止についてGW中にさらに調べてみたのですが、遡ること2013年10月4日に規制改革会議がマージン率等の情報提供の廃止について意見を出していたことがわかりました。
わかりました…というよりも当時、この意見を好ましいものとして受け止めていましたが、そのことをすっかり忘れていたと言った方がよいかもしれません。
当時、日本経済新聞から以下のように報道されています。
規制改革会議「派遣会社の利ざや開示撤廃を」
日本経済新聞 2013/10/3付 政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)は労働者派遣制度で、派遣会社がマージンを開示する義務をなくすよう厚生労働省に提案する。 当時の民主党政権が昨年10月に労働者の待遇改善のため導入したが、派遣会社にとって重要な経営情報を公開するのは好ましくないと判断した。 4日の会合で決定し、厚労省が2014年の通常国会に提出する労働者派遣法改正案に盛り込むよう求める。 現行法は派遣先が派遣会社に支払う料金のうち、派遣労働者の賃金との差額が占める割合を示す「マージン率」の開示を派遣会社に求めている。 派遣会社がどれだけ「利ざや」を稼いでいるかを公にし、過度な利益の追求を防ぐ狙いがあった。 提言では、廃止を求める理由を (1)日本の他の産業で同様の指標を公開している例はない (2)マージンには社会保険料や教育研修費も含まれるため、比率の高さが派遣労働者の低待遇を示すとは言えない ――としている。 このほか、原則禁止となっている日雇い派遣(契約期間30日以内)の解禁も要請。 グループ内の派遣会社から系列企業への派遣を8割以下に抑える規制の抜本的な見直しを要請するほか、一度職を離れた直接雇用者を1年以内に派遣社員として受け入れることを禁止する規定も例外を作って部分的に認めるべきだとの見解を示す。 |
■ 平成24年改正法の5規定はすべて廃止を
如何せん4年も前のことですから、その後の平成27年法の議論、規制改革会議から規制改革推進会議への衣替え、そして今回の同一労働同一賃金をめぐる議論ですっかり風化してしまっています。
しかし、その内容を見ると極めて的を射たものです。言わば、マージン率の開示が規制改革会議から「おかしな」法律であるというお墨付きを得たようなものです。
実際に2013年10月4日に規制改革会議が提出した「労働者派遣制度に関する規制改革会議の意見」を調べてみると、平成24年改正法の規定についての意見として「日雇派遣の原則禁止」「労働契約の申込みみなし制度」「グループ企業派遣の8割規制」「1年以内に離職した労働者への規制」と並んで「マージン率等の情報提供」についても以下のように記載されています。
労働者派遣制度に関する規制改革会議の意見(平成25年10月4日)
~省略~ 4 平成 24年改正法の規定について (4) マージン率等の情報提供 マージン率の明示義務については、マージン率の中に社会保険料や派遣労働者のキャリアアップのための派遣元負担費用なども含まれることから、比率の高さが必ずしも派遣労働者の低待遇を示すとは言えない。 また、日本の他の産業で同様の公開を求めている事例もなく不公平であるという指摘がある。 これらを踏まえ、マージン率の明示義務については、派遣先労働者と派遣労働者の均衡処遇を推進しつつ、廃止すべきである。 ~省略~ |
■ 同一労働同一賃金と同時に廃止すべき
日本経済新聞が内容を正確に報道していることがわかりますが、この意見の結びとして「派遣先労働者と派遣労働者の均衡処遇を推進しつつ、廃止すべき」と記載されています。
つまり、均衡処遇の推進とセットということなのだろうと思います。
そこで考えられるのが今回の同一労働同一賃金の議論です。
すでにお伝えしているように同一労働同一賃金では、労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の3法一括改正が予定されています。
その主旨は、格差是正と均等・均衡待遇です。
当時、規制改革会議のメンバーだった学識者の方からは、「今回は残念ながら廃止までつなげられなかったが、規制改革推進会議で実現してほしいと思っている」というお話を伺いました。
ぜひ、この機会にマージン率の開示について規制廃止につなげてほしいものですね。
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