こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

早いものでGWが終わってからもう一週間も経ちましたね。ちょうど先週の月曜日5月9日にNHKのニュースで「企業と人材のマッチングにAI活用の動き広がる」と報じられていましたがご覧になりましたか?

人材サービス業界にAIは有効か

これまで、AIの普及によってどのような仕事がなくなるか、あるいは新たに創出されるかという観点で見ることが多かったのですが、このニュースは人材サービス企業のビジネスプロセスの観点です。

従来、人材サービスのコアはマッチングである、人と企業のマッチングは人にしかできないと、まことしやかなことが言われて来ましたが、このニュースはそれを覆すようなものです。

もちろん、ここで紹介されている2社はすでにAIを採り入れることを表明していたので、私も知っていましたが、いよいよニュースで採り上げられるほど現実味を帯びてきたのかと思います。

職歴や資格だけでは判断できない

ここでは、「技術者の職歴や自己PRの文章などもデータとして分析し、技術者と派遣先の相性を数値として示す」、「職歴や資格など100項目を超える評価基準に基づき、企業に候補者を提案する」としています。

職歴や資格については、地域や希望も含めて、これまでの検索技術でも行われてきたことだと思うので、これらをAIと言ってしまってよいのかどうかわかりませんが、これまで以上に検索技術が高度化したものを言っているような気がします。

ここまではデータテーブルとデータテーブルを見比べて近似値を算出するという計算式で成り立つ世界ですから、一度に大きなデータテーブルを見回すことができるようになったIT技術の容量とスピードの進歩ということですね。

一方、自己PRの文章については、自然文を理解するという点でたしかにAIを使っていると言えるのだろうと思います。自己PRに限らず、自然文から読み取れることは多いと思うので、この精度が上がることは非常に有効なのではないでしょうか。

どうしても残る「人の目」

一方、「すべての業務をAIに任せることはしない」と述べていることから、最後は「人の目」でということなのでしょう。

つまり、依然として「人でなければできない仕事」という要素が残っていることになりますが、それは何なのでしょうか。

これを解くことで、より精度の高いAIマッチングが期待できるようになるのではないかと思います。

人の場合、多くは経験や資格だけでなく、「仕事の仕方が…」「考え方が…」「性格的に…」「雰囲気が…」「こんな素養がありそう」「派遣先の担当者と合いそう」などということを考えながらマッチングをしているのではないでしょうか。

必ずしも「人の目」が正しいわけではない

ベテランであれば、それなりの答えに辿り着くのだろうと思いますが、そうではない場合は、かなり曖昧な判断となるはずです。仕事は経験、知識、技術といった能力だけでするものではないので、この見極めは非常に重要です。

皆さんの中には経験、知識、技術で合っているハズの人を紹介して、大きなクレームにつながった経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

また、必ずしも「人の目」が正しいわけではないことも多くあるように思います。ここら辺の精度が上がれば、「人でなければできない仕事」ではなくなっていくように思います。

さらに人に求められることとしては、「こういう仕事を経験するとキャリアアップできる」ということの判断でしょうか。

AIで人材サービスのあり方も変わっていきそうですね。

企業と人材のマッチングにAI活用の動き広がる

NHK 5月9日 4時28分

人手不足を背景に需要が高まっている人材派遣会社などの間では、企業と人材とのマッチングにAI=人工知能を活用し、人材の紹介の効率化を図る動きが活発になっています。

このうち、メーカーに技術者を派遣している東京・港区の人材派遣会社は、技術者の持つ技術の種類がおよそ4万に上ることから、登録している4,700人の技術者と派遣先をマッチングさせる作業に手間と時間がかかっていました。

そこで効率化を図るため、去年からAI=人工知能を導入し、技術者の職歴や自己PRの文章などもデータとして分析し、技術者と派遣先の相性を数値として示すということです。

会社によりますと、従来は派遣先が決まるまで登録している技術者に平均で6社を紹介していましたが、AIの導入後は派遣先が決まった技術者の8割が、1社目で決まるようになったということです。

人材派遣会社「フォーラムエンジニアリング」の竹内政博取締役は「これまでは人間の主観が入ることで、最もふさわしいマッチングができなかった。AIによって細かく分析できるようになり、採用の意思決定が格段に早くなった」と話しています。

一方、転職の仲介を行っている東京・千代田区の大手人材サービス会社は、企業と求職者をマッチングさせる際に去年からAIを導入しています。

この会社にはおよそ4万人の転職希望者が登録されていて、AIが職歴や資格など100項目を超える評価基準に基づき、企業に候補者を提案する仕組みです。会社によりますと、登録しているおよそ7,500社全体で採用が決まった人数を去年1年間で見ると、AI導入前のおととしと比べ20%増えたということです。

その一方で、採用にあたってはすべての業務をAIに任せることはしないということで、リクルートキャリアの藤原暢夫さんは「データを基に最適化した組み合わせを提示できることが強みだ」と話しています。

相性を数値で示す

人材派遣会社「フォーラムエンジニアリング」ではまず、技術者と派遣先の企業を過去7年でマッチングさせたおよそ1万5,000件のデータをAIに分析させました。

そのうえでAIは、会社に登録している4,700人の技術者の職歴、「エンジンの開発」や「ロボットの設計」といった身につけている技術、自己PRの文章などと、派遣先の企業が要求している技術や、人柄といった条件と突き合わせます。

そして、職を求めている技術者一人一人について、派遣先の企業の条件にどの程度合っているかという、いわば相性を数値として示します。数値が高いほど企業との相性がよいということで、派遣会社はこれを基に企業と具体的な交渉を行う仕組みです。

“転職に応募する可能性”も考慮

大手人材サービス会社「リクルートキャリア」では、AIがおよそ4万人の転職希望者の中から、企業に対して採用の候補者を提案します。

この時、企業が過去に採用した人材のデータ、書類選考を通過させた人材のデータの中から、職歴、身につけている資格、コンピューターのプログラミングの技術など、1100項目を基準に選定作業を進めます。

さらにAIは、転職希望者による企業のホームページの閲覧履歴などを基に、実際に応募する可能性も考慮するということです。

これをAIが総合的に判断して、マッチングの度合いをパーセンテージで数値化します。

人材サービス会社は、数値が高い転職希望者から順に登録している企業に対して人材を紹介する仕組みです。

これを受けて、企業は「面接に来てほしい」、「応募してほしい」、「ほかの求職者の情報を見たい」の3段階で判定をします。

採用は面接を経て決めるということです。

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