こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。
とうとう関東東海以西は梅雨に入ってしまいました。いきなりどんよりした天気で肌寒いですね。
昨日は、働き方改革のメインとなる「時間外労働の上限規制等について」建議がされたことをお伝えしました。
4月26日のブログ「『病気の治療と仕事の両立』にも人材サービス」に書いた「今後の産業医・産業保健機能の強化について」も同じく昨日建議がされています。
同一労働同一賃金に伴う3法一括改正も、恐らく早晩、建議としてカタチが見えることになると思います。働き方改革の実行計画に伴う建議ラッシュになりそうですね。
秋の臨時国会で働き方改革関連法案が打ち上げ花火のように成立させ「安倍さんよくやってる」というところを強調することも狙いでしょうか。
■ 実行計画11項目
当初9項目を設定されていた働き方改革が、実行計画では以下の11項目に分けられて示されていますが長時間労働と同一労働同一賃金の項目以外はどうしても霞んだ状態になっています。
- 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
- 賃金引上げと労働生産性向上
- 罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
- 柔軟な働き方がしやすい環境整備
- 女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
- 病気の治療と仕事の両立
- 子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
- 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援
- 誰にでもチャンスのある教育環境の整備
- 高齢者の就業促進
- 外国人材の受入れ
そんな中で、今日は「雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援」を採り上げます。
■ 転職・再就職支援
実行計画の「雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援」を読んでみると文字通り「転職・再就職支援」をすることが施策として盛り込まれています。
つまり、人材紹介サービスの出番ということです。
「雇用吸収力や付加価値の高い産業への転職・再就職を支援することは、国全体の労働参加率や生産性の向上につながる」と、ハッキリと「官民一体となって転職・再就職者の採用機会を広げる」としています。
雇用吸収力や付加価値の高い産業を探すことが人材サービスの役割として求められているということです。
雇用吸収力と言うと以前から人材不足で悩んでいるような運送、建設、警備、飲食、介護、小売りなどのような職業ということになるのだと思います。また、付加価値の高いということで言えば、これから発展が望めるIoT、AI、ロボットに関係する産業、医療・製薬のような産業ということでしょうか。
恐らく、付加価値の高い産業は裾野が広いので、探せばもっと広く雇用の創出はできるはずです。
人材サービス事業者としてはこれを探して適材適所を考える、あるいは必要に応じて人材育成をしていくことが社会的に必要とされるのではないでしょうか。
■ 労働移動支援助成金(中途採用拡大コース)
本年4月からは中途採用の拡大に取り組み、生産性を向上させた事業主を対象に「労働移動支援助成金(中途採用拡大コース)」という制度も創設されています。
助成を受けるための条件もありますが、クライアント企業への提案としてこのような助成金を組み込んだカタチで提案するということも考えられるのではないでしょうか。
■対象となる事業主
中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、中途採用率の向上または45歳以上の方を初めて中途採用する取組を実施(※1)し、生産性を向上させた事業主(※2) (※1)申請には事前の中途採用計画の提出等が必要です。 (※2)生産性の詳細についてはこちらをご覧ください。 https://mhlw.lisaplusk.jp/jump.cgi?p=2&n=13 ■支給額 中途採用率向上の場合:1事業所あたり50万円 45歳以上の方を初めて中途採用する場合:1事業所あたり60万円 【支給要件など、詳細はこちら】 労働移動支援助成金(中途採用拡大コース) |
■ 「日本版O-Net」の創設
働き方改革実行計画には「日本版O-Net」というものを創設すると書かれています。
日本版というからには、本家があるということなのでさっそく調べてみました。どうやらアメリカが本家のようです。
トップページに以下のようにコピーがあります。
O*NET OnLine
Welcome to your tool for career exploration and job analysis! O*NET OnLine has detailed descriptions of the world of work for use by job seekers, workforce development and HR professionals, students, researchers, and more! キャリア探索と就職分析のためのあなたのツールへようこそ! O * NET OnLineには、求職者、人材育成および人事専門家、学生、研究者などが使用する仕事の世界の詳細な説明が掲載されています。 (翻訳=Google翻訳のママ) |
見てみると非常に詳細にジョブディスクリプション(職務明細)がわかるようなしくみになっています。
たしかにこのようなサイトは日本では見たことがないような気がします。
これを創ろうというのが働き方改革実行計画なのですが、実際に創るとなる大変そうです。
そもそも日本は職務型雇用ではなく職能型雇用がメインですから、ジョブディスクリプションと言っても極めて曖昧です。
O-Net本家のようにスパッと切り分けられないことが多いのではないでしょうか。
今後、職務型の雇用も増えていくはずなので、ファーストステップとしてはよいと思います。
まずは職務型雇用が先行している人材派遣向けをテストケースとして創ってみたらよいと思うのですがいかがでしょう。ジョブディスクリプションの考え方に最も親和性があるのは派遣労働だと思います。
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それにしてもGoogle翻訳の精度が上がりましたね。「job analysis」を「就職分析」、「the world of work」を「仕事の世界」と訳すのはどうかとも思いますが、とりあえずのレベルであれば、十分意味は伝わります。
翻訳の仕事(Task)も減るのでしょうね。むしろ日本語力が試されるような翻訳の仕事が増えていくような気がしますがいかがでしょう。
以下、実行計画から「9.雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援」の全文です。
9.雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援
単線型の日本のキャリアパスを変え、再チャレンジが可能な社会としていくためには、転職・再就職など新卒以外の多様な採用機会の拡大が課題である。 転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立できれば、労働者にとっては自分に合った働き方を選択してキャリアを自ら設計できるようになり、企業にとっては急速に変化するビジネス環境の中で必要な人材を速やかに確保できるようになる。 雇用吸収力や付加価値の高い産業への転職・再就職を支援することは、国全体の労働参加率や生産性の向上につながる。そのため、官民一体となって、転職・再就職者の採用機会を広げる方策に取り組んでいく。 (1)転職者の受入れ企業支援や転職者採用の拡大のための指針策定 中高年の転職・再就職については、一度でも採用経験がある企業は、積極的になる傾向がある。 受入れ企業に対する支援や就職支援体制の強化など、総合的に環境整備を図る。 成長企業が転職者を受け入れて行う能力開発や賃金アップに対する助成を拡大する。 また、年功ではなく能力で評価をする人事システムを導入する企業への助成を創設する。 さらに、産業雇用安定センターについて、中小企業団体等と連携し、マッチング機能を強化する。 年齢にかかわりない多様な選考・採用機会の拡大に向けて、転職者の受け入れ促進のための指針を策定し、経済界に要請する。 また、転職・再就職向けのインターンシップのガイドブックを作成し、企業と大学の実践的な連携プログラムを支援する。 (2)転職・再就職の拡大に向けた職業能力・職場情報の見える化 AI等の成長分野も含めた様々な仕事の内容、求められる知識・能力・技術、平均年収といった職業情報のあり方について、関係省庁や民間が連携して調査・検討を行い、資格情報等も含めて総合的に提供するサイト(日本版O-NET)を創設する。 あわせて、これまでそれぞれ縦割りとなっていた女性 活躍推進法に基づく女性が働きやすい企業の職場情報と、若者雇用促進法に基づく若者が働きやすい企業の職場情報を、ワンストップで閲覧できるサイトを創設する。 また、技能検定を雇用吸収力の高い産業分野における職種に拡大するととともに、若者の受検料を減免する。 |
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