こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

我が家の冷蔵庫が息絶えました。夏の間頑張り続けて、ついに果てたという感じでしょうか。

少し前から熱をもっていて怪しいとは思っていたのですが、さすがに19年使ったので天寿を全うしたという感じです。暑さが納まるまで頑張ってエライ!

災害が起きたら3日間は自前で凌げと言われますが、折しも9月1日の防災の日が過ぎ、我が家は災害が起きても最低でも一週間は大丈夫だろうと思っていた矢先、災害で停電したら3日ももたないかもしれないということを思い知りました。

現代社会において電気に頼った生活は脆弱ですね。

ホワイトカラー・エグゼンプションの動向

閑話休題。あまりにも冷蔵庫のことがショッキングだったので前置きが長くなりました。

今日は、9月7日(木)の日本経済新聞朝刊「脱時間給、連合案全て採用 厚労省案 休日確保を義務、19年4月に適用」についてです。

内容としては、これまで連合が紆余曲折していた「残業代ゼロ」=「脱時間給」=「高度プロフェッショナル制度」=「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、政府が連合案をすべてのむというもの。

具体的には、ホワイトカラー・エグゼンプションを導入する代わりに、年104日以上の休日確保の義務付けに加え、労働時間の上限設定、勤務間インターバルの導入、2週間連続休暇の導入、臨時の健康診断のいずれかを選択というものになるそうです。

これについては、すでに9月5日(火)の加藤厚生労働大臣の会見概要でも連合からの要望を盛り込むとの発言もあるため、概ねこのようなものになるのではないでしょうか。

内容的には無理のない範囲で、一般的な企業であれば十分クリアできるものだと思います。

さて、これが労働者派遣法にどう影響するのでしょうか。

働き方改革関連法案

ホワイトカラー・エグゼンプションについては、7月13日に連合が条件付きで導入を容認した以降、以下のようにほとんど10日に一回の割合で採り上げてきました。

7月26日にはその容認が撤回され、混沌としていましたが、ようやく労働政策審議会レベルでは9月8日(金)に決着が図られるようです。

9月8日午前に開催される労政審労働条件分科会では、法案要綱についての諮問が行われるようですが、ホワイトカラー・エグゼンプションはここで、長時間労働の是正、同一労働同一賃金とともに働き方改革関連法案として一本化されたものとして審議がされることになりそうです。

以前から指摘してきたように、働き方改革実行計画で法改正の必要なものは一つにまとめられ、継続審議となっているホワイトカラー・エグゼンプションも含めてすべて働き方改革関連法案として、一昨年2015年に安全保障関連法案で11法案がまとめて審議されたのと同じような状況なりそうです。

  • 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
  • 賃金引上げと労働生産性向上
  • 罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正
  • 柔軟な働き方がしやすい環境整備
  • 女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備
  • 病気の治療と仕事の両立
  • 子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労
  • 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援
  • 誰にでもチャンスのある教育環境の整備
  • 高齢者の就業促進
  • 外国人材の受入れ

怖いのは国会審議

労働政策審議会レベルでは決着、と書きましたが、政局をみるとやや不安定な状況といえるのではないでしょうか。

都議会議員選で安倍内閣への支持が急落した以降、8月の内閣改造で支持率が回復しつつあるとはいえ、まだ不支持率が上回っている状態です。

一方では、野党第一党も党首が交代したとはいえ、さらに支持率が下がっているような状態で、いずれも強気になりきれない。

政権もこれ以上内閣支持率は落としたくないということから、要望をすべてのむ方向に動いたのではないでしょうか。

いずれにしても、働き方改革関連法案がすべてまとめて秋の臨時国会で審議されるとなると、時間的な制約もあることから、ある意味「雑」、あるいは「ドサクサ紛れ」な議論も考えられます。

ちょうど労働者派遣法の平成27年改正法と同じようなことも有り得るのかというところが、注意しなければならないところです。

労働者派遣法にはプラス

客観的にみると結局のところは国会の議席数がそのまま反映されるカタチになるということでしょうか。

全体的に見るとホワイトカラー・エグゼンプションについて連合からの要望をすべてのむことで、一つにまとまった働き方改革関連法案は通りやすくなったということだろうと思います。

長時間労働の是正にしても同一労働同一賃金にしても野党も反対しづらい内容なのでホワイトカラー・エグゼンプションのハードルがさがれば法案は通りやすいということになるのだと思います。

同一労働同一賃金についてはパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の3法一括改正となり結果的にいずれも改正ということになるのでしょう。

ただ、当初言われていたようなヨーロッパ的な同一労働同一賃金とはほど遠く、むしろ日本的雇用慣行を助長するような内容になっていることは残念です。

もともと同一労働同一賃金は方向性としてはよいものの、急転換はすべきではないというのが私の持論なので、結果オーライなのかもしれませんが…。

加藤大臣会見概要

(H29.9.5(火)10:45~10:56 省内会見室)

(記者)

昨日、労政審の分科会が開かれまして、分科会長から一本化を容認して、今週の8日の金曜に法案要綱として示して欲しいということがありました。

労働側の委員や公益委員からも労働者の健康確保措置をもう少し修正案に入れるべきなど意見があり、それに先だって7月には連合から総理に対しての修正の要請もあったわけでありますが、法案要綱に修正の要望をどのような形で盛り込んでいくのかお聞かせ下さい。

(大臣)

昨日と前回の8月30日の二日間、労働条件分科会で御議論をいただいたわけでありますが、労働側からは高度プロフェッショナル制度と企画業務型裁量労働制について、基本的に反対するという立場に加えて、それぞれの持っている具体的な問題点について昨日は特に指摘があったと承知しております。

それに対して、使用者側からの御意見があって、最終的に分科会長から問題点については公益委員、使用者側委員からも一定の理解が示されたところであります。

問題点というものはどのように改善すべきかということですけれども、議論の経過や労働側からも懸念を踏まえ、次回の9月8日に法案要綱を諮問するようにと取りまとめが行われたわけでありまして、また、連合からも総理に要請をしているという経緯もあります。

そのなかにありました裁量労働制に追加する対象業務の範囲の明確化、高度プロフェッショナル制度の健康確保措置の強化については、今度提示する要綱の中に盛り込む方向で対応していきたいと思っております。

(記者)

具体的にどのレベルまで盛り込むお考えでしょうか。

具体的には連合が要請している裁量労働の対象明確化と休日に関して104日の義務付けと四つの中から一つ選ぶようにということがあります、基本的にはこれに沿った形ということでよろしいでしょうか。

(大臣)

議論を踏まえてということであります。

また、それに踏まえた議論が展開されていたと聞いております。

そうした議論とそして連合から総理への要請の内容を踏まえて、法案要綱にはそういったことを盛り込んでお出しをしていきたいと思います。

脱時間給、連合案全て採用 厚労省案 休日確保を義務、19年4月に適用

日本経済新聞 2017年9月7日(木)朝刊

厚生労働省が働き方改革関連法案の全体像を固めた。

時間でなく成果で評価する脱時間給制度では、長時間労働の是正に向け、休日確保の義務付けなど連合が求めた修正案を全て受け入れる。

残業時間の上限規制や正規と非正規の不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」の導入などとあわせ、秋の臨時国会に関連法案を一本化して提出、原則2019年4月の施行を目指す。

厚労省は8日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で法案の要綱案を示す。

脱時間給を巡っては、連合の神津里季生会長が7月、安倍晋三首相に脱時間給などの政府案の修正を要請。要請後に再び反対姿勢に転じたが、厚労省は連合案の採用を決めた。

脱時間給は高収入の一部専門職を対象に労働時間の規制から外す仕組み。

新たな法律では「年104日以上の休日確保」を義務付ける。

(1)労働時間の上限設定(2)(退社から出社までの間に一定の休息をとる)勤務間インターバル(3)2週間連続休暇などから、労使が選択できるようにする。

いずれも連合案に沿った対応。実現すればアナリストなど年収の高い専門職は好きな時間に働ける。

働き過ぎを防ぐ手立ては必要だが、自由な働き方で今までにない成果が期待される。

残業については年間や月間の労働時間に上限を設け、繁忙期も月100時間未満とする。

同一賃金は基本給や手当の水準をそろえるなどとした骨格を固め、国の運用ルールなどの詳細は法案成立後に検討する。

中小企業の割増賃金引き上げは22年度に実施する方向だ。

厚労省は連合案の採用で実現に前進させたい考え。だが、脱時間給などに対する野党の反発は強く、国会審議は難航必至だ。中小企業には改革への対応が間に合わないとの懸念もある。

厚労省は同一賃金の開始に経過措置を設ける案も練る。

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