今日は寒くなるというからしっかり厚着をしていったら、それほどでもなかったですね。
通りかかった日比谷公園の紅葉は最盛期をすぎたところ。赤、橙、黄、緑に染まった木々がとてもきれいでした。
これから来年の新緑に向けて力を蓄える時期ということでしょうか。昨日も書きましたが、精緻な経営戦略を練る季節とも言えるのではないでしょうか。
日比谷公園と言えば、厚生労働省。「第249回労働力需給制度部会」(部会長:鎌田耕一東洋大学法学部教授)に行ってきました。
■ 関係者以外立ち入り禁止?
実はこの「第249回労働力需給制度部会」の開催案内は、厚生労働省からのメルマガが届いた一昨日12月5日(月)の19時11分。
しかも奥深いところにコッソリと…いや、控え目に掲載…そして、申し込みの締め切りが同日中。つまり告知から0時00分の締め切りまで4時間49分。
ちなみに私は目ざとくこれを見つけて19時43分に申し込みを完了(笑)。
言うなれば、「関係者以外来ないでね」「来たい人は長時間労働してね」と思わせるメッセージ付きの開催案内のようでした。
「来てもいいよ」という連絡があったのが、昨日の13時51分。それで今朝10時00分からの会にそそくさと…。
■ 人材サービスに新たな法規制
会場についてみるとNHKのテレビ取材付きの物々しい雰囲気、そして4時間49分という短い申込時間の割には50人近い傍聴人の方々。
いつもより多いんですけど、皆さん関係者ということでしょうか??
資料に目を通してみると「職業紹介等に関する制度の改正について(報告書)(案)」となっています。昨年の「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」」(座長:阿部正浩中央大学経済学部教授)での議論を経て、今回で一応のまとめとなるので、確かに注目に値しますよね。
「職業紹介等」の改正となっていますが、「等」を分解すると以下になります。
- 職業紹介事業
- 募集情報等提供事業
- 委託募集
- 労働者供給事業
- 労働条件等の明示、指導監督等
つまり、これまで取り立てて法制度がなかった求人媒体や採用代行などにも規制がかかるということです。
実際には主に職業安定法を中心に関係法令の改正ということになるのだろうと思いますが、新たな動きとして注目が必要です。
■ 求人媒体への規制
以前にも書きましたが、「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」の関係団体からのヒアリングで、委員から発表者に対して、「規制がない環境だったからうまくいったのだと言ってしまうのは言い過ぎだ」と、検討会のヒヤリングの場では珍しく、発表者がたしなめられるような場面がありましたが、今回の報告書では「業務運営に関する事項」や「提供する募集情報の適正化に関する事項」が定められることになります。
特に「提供する募集情報の適正化に関する事項」は以下のようなものとなりますが、これは求人情報と実際に労働契約を締結する際に内容が異なることを問題視したものです。
これらは求人媒体事業者だけでなく、人材紹介や人材派遣における募集でも同様のことが適用されることも考えられます。
… 略 …
イ 提供する募集情報の適正化に関する事項 ① 提供する募集情報が、次に該当する旨を認識した場合は、労働者の募集を行う者に変更を依頼すること。また、労働者の募集を行う者が依頼に応じない場合は、当該募集情報を提供しないなど適切に対応すること。 ・ 公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的の募集情報 ・ 労働条件等が法令に違反している募集情報 ・ 実際の労働条件と相違する内容を含む募集情報 ② ①に掲げる募集情報に該当するおそれを認識した場合は、労働者の募集を行う者に対し、①に該当しないかどうか確認すること。 ③ 労働者の募集を行う者の了解を得ることなく募集情報を改変してはならないこと。 |
■ 人材紹介にも新たな制度が
「職業紹介等」というぐらいですから、今回の雇用仲介事業に関する議論の中では人材紹介が中心となります。具体的には以下のようなことが挙げられています。
- 欠格事由
- 職業紹介責任者
- 求人および求職の申込みの受理
- 職業紹介事業者に関する情報提供
- 職業紹介事業者間の業務提携等
- 就職した労働者の早期離職等への対応
- 求人者に対する指導
- その他
昨今、人材派遣を行っている事業者は人材紹介も行っていることが多いと思いますが、職業紹介責任者講習の内容が追加されたり、これまで全件受理義務があった求人について、受理しないことができる場合が追加されたり、人材紹介事業者間の業務提携について規定されたり、労働者が早期に離職した場合の対応方法が規定されたり、かなり影響が大きい改正につながりそうです。
また、従来、人材派遣と人材紹介の個人情報の扱いを分けることが規定されていましたが、管理そのものは分けなくてもよいことになりそうです。
システム的な造りで言えば、ほとんどフラグを立てるだけですからデータベースが一つでもよいということは有難いですね。
■ 屋上屋を架す規定も?
労働者保護の観点から、ほとんどの内容はそれなりに妥当性を感じるものでしたが、報告書案で最も議論を呼んだのが、「労働条件の明示」に関するものです。
当初、記載していなかった募集内容と実際に契約する労働条件が異なる場合、何が異なるのか書面等で明示することを義務づけるとのことでした。
この案に対し、使用者側からは、就業前に労働条件を明示することが労働基準法で定められているため、改めて差異点を書面で明示する必要はないとの主張がありました。
私もその通りと思って聴いていましたが、結局、部会長がこれを押し切り報告案どおりにするというカタチになりました。
ただでさえ、手続きが複雑化している中で、さらに屋上屋(おくじょうおく/屋根の上にさらにもう一つ屋根を架けるような無用なことをする意味)を架すことは止めた方がよいと思います。
結局、今日の会議はほぼ1時間で終了。次の予定まで時間が空いてしまったので日比谷公園で紅葉狩りをすることに(笑)。
■ 早ければ2017年10月1日施行か
今回の「職業紹介等に関する制度の改正について(報告書)(案)」は、一昨年の3月末から16回に渡って開催された「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」の報告書(本年6月6日)を基に、さらに「労働力需給制度部会」で本年9月15日、10月25日、11月9日と3回議論され、本日12月7日にまとめられたものです。
私はこれらの議論について逐次傍聴をしてきましたが、この報告書案は概ね妥当だろうというのが感想です。
一方、人材サービス事業者にとってはまたもや経営上の負担が増えることもあると予想されます。ますます経営力が試されるということでしょう。
今後、本日の議論に部会長と事務局が微調整を加えたうえで、職業安定分科会に報告、労働政策審議会として建議したうえで法案としてまとめ、国会へ提出という流れになるものと思われます。
現在開催されている臨時国会には当然間に合わないので、来年の通常国会で法案提出ということになるということでしょうか。
3月までは予算審議とするならば、来年4月か5月以降に国会審議が始まるということになります。
そのまま法案が成立したとすると早ければ10月1日施行ということになるのでしょうか。
今後の進捗を見ておく必要がありそうです。
詳細は以下をご確認ください。人材紹介、求人媒体、採用代行に関係する方は必読です。
- 「職業紹介等に関する制度の改正について(報告書)(案)」(12月7日)
- 「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」の報告書(6月6日)
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