こんにちは。人材サービス総合研究所の水川浩之です。

先週末、4月21日(金)のことですが、日本生産技能労務協会の会員限定、働き方改革実行計画の解説「働き方改革の方向性と課題 ~同一労働同一賃金を中心に~」に参加させていただきました。

講師は、東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授。

働き方改革実現会議のメンバーでもあり、厚生労働省の同一労働同一賃金の実現に向けた検討会のメンバー。

同一労働同一賃金の推進に伴う法改正については、これ以上の当事者はいないという講師です。

同一労働同一賃金ガイドライン案と働き方改革実行計画

当日用いられた資料は、同一労働同一賃金ガイドライン案と働き方改革実行計画の2つ。

これらの内容については、公表された時点で以下のブログでご紹介しているので、ここでは詳細は省きます。

水町先生のお話は、これらの解説と裏話と今後の見通し。見通しというよりもすでに筋書きは出来上がっているという感じでしょうか。とてもよいセミナーでした。

技能協の会員限定の有料セミナーということもあるので、ネタバレは慎みますが、どのように法改正されるかはほとんどわかりました。

少しだけその内容についてお伝えします。

法改正の時期は2019年4月

まず、派遣法改正の有無ですが、間違いなくあります。

前述の昨年12月20日のブログ「『同一労働同一賃金』始めなければ始まらない」では、3法一括改正はないのではないかと書いてしまいましたが、どうやら無理やり「労働契約法」「パートタイム労働法」「労働者派遣法」の3法一括改正が既定路線となっているようです。

すでに安倍総理が3法一括改正と口にしていることから、総理の発言の重みは想像以上ということなのでしょう。

今後の予定としては、まず、今月内にも「労働政策審議会労働条件分科会・職業安定分科会・雇用均等分科会同一労働同一賃金部会」という長~い名称の部会が設置され、3法一括改正につなげるようです。

この議論はそれ程長くはなく、3~4か月程度でまとめられ、9月以降の秋の臨時国会で年内に成立、その後1年半ほどの猶予期間を経て、2019年4月施行の予定という日程になるようです。

改正法施行と同時にガイドラインも

何がどう変わるかというと、3法一括改正という既定路線に相応しいものになりそうです。

3月22日のブログ「派遣法に与える『同一労働同一賃金』のおかしな議論」で「そもそもパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の切り分けの整理すらできていないのが実情」と指摘しましたが、どうやら、この切り分けの整理も含めての3法一括改正のようです。

現状では、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法が漏れダブりありの非論理的な構成になっていることもあり、その整理がされそうです。

一歩踏み込んだ均等・均衡待遇

実はその中身についても、すでに4月10日のブログ「同一労働同一賃金を巡る労働者派遣法改正のゆくえ」で触れています。

直接雇用となる有期とパートタイム、間接雇用となる労働者派遣では扱いが異なるので、その違いはあるにせよ、根幹に「正規・非正規の格差是正」があるので、直接・間接の違いを踏まえたうえで、非正規の足並みを揃える整理が必要なのだと思います。

具体的には、労働契約法20条、パートタイム労働法8条、9条あたりの整理がされそうです。

労働者派遣法では、「派遣元が講ずべき措置」「派遣先が講ずべき措置」に手が入るのではないでしょうか。

運用上の問題はガイドラインの中身

法改正そのものは、現行法の整理が中心となり、きれいな形になっていくような予感があります。

一方、実際の運用はどうでしょうか。

現在「案」がついている「同一労働同一賃金ガイドライン案」も、法改正と同時に「案」をとって示されることになると思いますが、実運用上はその内容の程度が重要です。

すでに実行計画で「派遣労働者に関する法整備」が示されていますが、ここで示されている派遣元均衡の3要素について、ガイドラインで実運用と乖離したものになると派遣労働者にとってマイナスになりかねません。

無味乾燥な統計資料をもとに均衡を図るのではなく、地域や職種、業種の実態を反映した賃金水準との均衡を求めることが必要になるのではないでしょうか。

相場というものがあるので、これについては業界としても注意深く見ていく必要があると思います。

放置される平成24年改正法、平成27年改正法?

今回の法改正が、新たに設置される「同一労働同一賃金部会」で議論されるものだけだとすると、平成24年改正法と平成27年改正法の附帯決議についての見直しは置き去りにされる可能性が高いと思われます。

いずれも、すでに派遣労働者にとって多くの問題があることが指摘されていますが、今回の一括改正に盛り込まれないと、またしばらく改正の機会を失うことになってしまいかねません。

平成24年、27年のいずれもエビデンスよりも感情的な議論で改正されたいきさつがあることは拭えません。

派遣労働者のために事業者として声をあげていくことは必要ではないでしょうか。

すでに同一労働同一賃金については、いろいろと書いてきましたね。以下もご参照ください。

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